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- 2016/07/22 掲載
プロ棋士に勝ったDeepMindのAIは「眼科医」になろうとしている
囲碁ソフトのAIから失明を防ぐ眼科医へ
DeepMindが開発したAIソフト「AlphaGo(アルファ碁)」が囲碁の世界チャンピオンを圧倒した裏で、より社会的なインパクトの大きいプロジェクトが進んでいました。2016年4月、同社はロンドンで最も大きな病院グループの一つであるロイヤルフリー病院などと提携し、目の検査方法にAI技術を適用する研究を発表したのです。イギリスでは、36万人もの人々が盲目、または部分的に視力を失っています。失明の原因となる加齢黄斑変性などの影響により、2050年には失明する人の数は2倍になるとの調査もあります。日本でも、成人の失明原因の第1位になっている糖尿病網膜症は症状の進行スピードが速く、かつ、症状が悪化するまで本人も病気に気づかないという問題があります。
DeepMindのAIは、提携病院の眼科で計測された患者の眼球運動データ(アイスキャン)を分析します。分析結果は医者が患者の疾患を理解することを助け、病気の早期発見や処置の改善に役立てられます。アイスキャン分析の精度が向上すれば、98%の失明が防げる可能性もあるとの予測があり、大きな効果が期待されています。
DeepMindが取り組む眼科検診データ分析とは
AlphaGoの場合は、過去に行われた囲碁の棋譜を大量に読み込ませ、囲碁の勝ち方を学習していきました。学習の過程では、AI同士で「練習試合」を行い、より勝利に結びつきやすい打ち方を見出していったのが特徴です。眼科データの場合でも、同様の手法がとられます。これまでに計測された眼球運動データを大量に読み込み、精度の高い診断方法を準備し、さらに、新たなデータが送られてきた際に、正しい診断を行うことを狙います。具体的には、Streamsと呼ばれるモバイルアプリを開発し、患者の血液検査の結果などから急性腎障害(AKI)の診断を助ける仕組みを提供しています。AKIは、イギリスでは緊急搬送の2割を占め、毎年4万人の死者を出しているとの調査があります。早期診断と初期治療によって25%は防止できるとされるため、Streamsは大きな期待が寄せられました。
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