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- 2015/07/24 掲載
百貨店の世界ランキング:三越伊勢丹や大丸・松坂屋はシアーズやメイシーズを超えるか
小売業の王者として君臨してきた百貨店
それまでの小売店は、洋服店、肉屋、酒屋、玩具店といった具合に、業種別の専門店しかなかった。それらの売場を、あたかもマーケット(市場)のように、一つの大きな店舗の中に集めたのがボン・マルシェ(フランス語で「いい市場」という意味)だった。
しかも、百貨店は、それまでの商慣習も打ち破り、定価販売(いわゆる掛け値なしの正札販売)、大量仕入れによる薄利多売、返品自由という販売方式を導入した。それが当時、欧米の大都市で増えていた消費者に圧倒的に支持され、百貨店は急成長を遂げることになった。ときは産業革命の真っただ中。大量生産・大量販売を実現させた産業革命に呼応して、流通システムを革新したのが百貨店だったのである。
日本では1904年、欧米の百貨店の発展に注目した三越が、呉服店から百貨店への業態転換を果たした。それをきっかけに、松坂屋、大丸、髙島屋といったほかの主要な呉服店も、百貨店に衣替えしていった。
一方、大手私鉄各社も、乗客や周辺住民の利便性を高めるため、ターミナル型百貨店(阪急百貨店など)を続々とオープンした。百貨店は一躍、日本の小売業界を席巻。戦前、売上高50億円超となった小売業は24社あるが、そのうち百貨店はなんと23社であった(ほかの1社は書店の丸善)。小売市場における百貨店の支配力があまりにも強くなったため、37年には、中小小売業者を保護するための「百貨店法」(74年に「大規模小売店舗法」となる)が施行されたほどだ。
スーパーマーケットなど、ほかの業態の後塵を拝するようになった現在でも、百貨店が“小売業の王者”として最も格式が高いのは、小売業をリードしてきた、そのような歴史があるからである。
また、百貨店が、高級品やトレンド商材の販売に絞り込むようになったこととも関係がある。もともと百貨店は“価格破壊”の仕掛け人として登場したのだが、チェーンストア展開とセルフサービス方式で、さらなる低価格を実現したスーパーマーケットにその座を奪われ、日用品の小売市場からは撤退せざるを得なくなったのである(たとえば、総合小売店といいながら、家電製品は一部を除いて取扱っていない)。
同じ総合小売店でも、GMS(総合スーパー)が量を追求しているのに対して、百貨店は質を追求していると言える。百貨店とそれ以外の業態の線引きはたいへん難しいのだが(高級スーパーなどもあるため)、日本標準産業分類によれば、百貨店とは、(1)衣食住を取扱い、各部門の売上高が10%以上70%未満、(2)従業員数が50人以上、(3)セルフサービス方式ではない(つまり、対面販売が基本)と定義されている。ちなみに、日本では日本百貨店協会の加盟店が、正真正銘の百貨店とされている。
都市部への出店や付加価値商品の品揃えによって、ほかの業態と差別化しているのは、日本に限らず、世界の百貨店に見られる共通の傾向のようである。前述したとおり「何が百貨店か」という区分は非常に困難だが、今回は上場企業としての業態が「百貨店」と区分されているものに、百貨店事業を営む非上場企業を合わせて、その売上高をランキングとして構成した。
メイシーズの百貨店は800店舗以上
売上高による百貨店のグローバルランキングを見ると、上位には欧米の百貨店がズラリと並ぶ。欧米は、百貨店発祥の地であり、国民所得の高い(したがって、付加価値商品の購買力も高い)先進国なので、当然とも言えるだろう。ドイツのメトログループは、百貨店としてはやや異色。というのも、主力事業はキャッシュ・アンド・キャリー(現金卸)で、百貨店なども兼営しているという総合流通グループだからだ。1964年創業のドイツSBカウフが母体で、96年にカウフホフ・ホールディング、アスコ・ドイツ・カウフハウスと経営統合、ドイツ最大の流通企業となった(百貨店事業はカウフホフが担当)。今やそごう・西武を傘下に収める日本のセブン&アイ・ホールディングスと似ているが、今回は敢えてランキングに加えた。
2000年には、丸紅と合弁でメトロキャッシュアンドキャリージャパンを設立、キャッシュ・アンド・キャリー事業で日本進出も果たしている。しかし、その百貨店事業は今年の第3四半期にも、カナダの大手百貨店ハドソンズベイに売却すると発表されている。そのハドソンズベイは、ロード&テイラー、サックスなどを買収して、有数の百貨店チェーンになっている。
【次ページ】オムニチャネルという言葉はあの企業が生んだ
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