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  • 2013/04/30 掲載

百貨店、食品スーパー、専門店の3つの業態別にみるオムニチャネル・リテイリング

【連載】オムニチャネル時代を生き抜く

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前回は、オムニチャネル時代における価格戦略とその限界、非価格戦略の重要性について説明した。今回は、オムニチャネル・リテイリングを実現するために求められる3つの変化について紹介するとともに、百貨店、食品スーパー、専門店の3つの業態別にオムニチャネル・リテイリングの実現に向けた取り組み手法を考察していく。

オムニチャネル・リテイリングを実現するための3つの変化

 オムニチャネル・リテイリングとは、オンライン、リアルを問わず、一人一人の顧客(個客)に対して、あらゆるチャネル(販売経路)とコミュニケーション・ツールを用いて、価値提供と商品販売を行うことを意味する言葉だ。

 実際に小売業者がオムニチャネル・リテイリングを実現するためには、以下の3つの変化に対応していく必要がある。

  1. リアルタイム対応
  2. ミクロマーケティング
  3. 組織のクロスファンクショナル化

1.リアルタイム対応

 これは特に店舗を中心にする小売業者について言えることだが、これまでの業務プロセスに「リアルタイム対応」を取りこむ必要がある。

 具体的に言うと、これまで小売業者の多くは大量の売上、在庫、値下げ、販促データなどをバッチ処理で夜間に処理し、1日遅れで集計した上で、それに基づいて業務を回してきた。

 しかし、オムニチャネル・リテイリング下では、たとえば顧客のつぶやきに対する対応、ショールーミング防止のためのオンラインリテーラーとの価格競争、ネットスーパーから買われた商品を店舗在庫から出荷するなど、オンライン小売業者のようなリアルタイム性を、システムだけでなく、その業務プロセスでも持つ必要がある。場合によっては、長年しみついてきた社内文化も変えていくことになる。

2.ミクロマーケティング

 これまでの小売業界のマーケティングは年代や性別、住所などの大まかなカテゴリーに対して、“カン”と“度胸”と“経験”を基に反復する過去実績に基づく静的な手法で対応をしてきた。

 しかし、リアルタイムで顧客のさまざまな行動を把握するオムニチャネル・リテイリングでは、より細かい「ミクロ」で、かつ動的な手法を用いる必要がある。顔認識、フロアーでの動線追跡や棚にあるクーポンに対する反応など、ミクロで膨大なデータからのインサイト(洞察)を抽出する。

3.組織のクロスファンクショナル化

 最後に、顧客への全方位対応を目指すために、商品別、チャネル別といった組織を超えて、オムニチャネル・リテイリングを実現する「クロスファンクショナル」な組織体制とルール作りが求められる。

 たとえば、ネットショップで購入した商品を店頭から発送するとき、店舗の売上とするべきか、ネットショップの売上とするべきか判断がわかれるだろう。というのも、販売員は常に店頭在庫だけを販売するわけではなく、店頭欠品があった場合にネットショップからの購入をお勧めするケースがあるため、単純にネットショップの売上としてしまうわけにはいかないからだ。

 このようにオムニチャネル・リテイリングを実現するには、小売業者は組織という非常に高い壁を乗り越える必要がある。

【次ページ】3つの業態別にみるオムニチャネル・リテイリング
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