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現在、オムニチャネル環境下で、どのように立ち振る舞えば競争に勝てるのか、多くの企業は苦慮している状況にある。特にショールーミングに代表されるように、「消費者がリアル店舗に来店してもそのまま購入せず、実際の購入はECサイト上で価格比較を行った上で購入する」という消費者行動への対応は、リアル店舗を展開する小売業にとっては高い関心事だ。本稿では、そうしたオムニチャネル環境下への対応策を「価格戦略」と「非価格戦略」の両面からどのように対処すべきか紹介させていただく。
ショールーミングの登場で一変した「お買い得」の意味
この記事に興味を持たれた方々は、既にご存じかと思うが、実店舗で商品の実物を確認し、アマゾンなどのネット通販で購入する消費者行動は、「ショールーミング(店舗のショールーム化)」と呼ばれ、オムニチャネル時代の象徴の1つにもなっている。
このショールーミングの影響で、小売業界は大なり小なりショールーミング対策が求められている訳だが、その中でも重要な対策の一つは、「プライシングの正当性や透明性」に関するものである。
目の前に陳列されている商品の価格が本当に安いのかどうかは、一昔前はチラシを比較するか、あちこちを歩き回って確認するしか手立てがなかった。顧客の価格の検証作業には物理的な限界があったのである。
その物理的な限界があったからこそ、小売業者は「お買い得!」「最安値!」という売り文句を比較的自由に使うことができた。
しかし、その状況はショールーミングの登場で一変した。顧客の手元のスマホで容易に他店の価格が確認できてしまう環境が整備されたからである。
つまり、ショールーミング化によって小売業は、価格が安いかどうかだけでなく、設定した価格の正当性や透明性を検証された上で、その店(サイト)で購入するか(ポチる)どうか判断されるようになったのである。
本連載の
前回、消費者が「ポチる」(商品を購入する)仕組み、つまり、以下の4つのステップを適切にマネジメントすることを、「ポチリングマネジメント」と定義した。
(0)運営するサイトや店舗に消費者を連れて来て、
(1)消費者の気持ちを振り向かせ、
(2)買う気にさせ、
(3)実購買を実行させる。
今回は、オムニチャネル時代における「ポチリングマネジメント」を踏まえた「価格」戦略と「非価格」戦略について考察していく。
なぜ「価格」だけでなく、「非価格」戦略も重要なのか。日経MJの第1回ネットライフのショールーミングを行う層の行動パターンに関する調査では、調査品目によりバラつきはあるものの、リアル店舗で下調べを行い、購入はネットで行う層(以後、ショールミング派と呼ぶ)は、全体の20~30%に及ぶという。
この調査は昨年から調査が開始されたため、どのような時系列で20~30%となったかは確認できないが、ショールーミング派が、決して無視できないレベルで存在していることを示している。
さらに同調査では、ショールーミング派自身の90%が「コストパフォーマンス重視」と回答し、全体平均より7ポイント高い傾向が出た。一方で「価格以外の価値(買い物手間など)重視」とも回答し、こちらも全体平均よりも4ポイント高い傾向が見られた。
つまり、ショールーミング派は、価格にも、価格以外にも、「損をしたくない」姿勢が顕著なのである。つまり、ショールーミング層をターゲットに「ポチる」を促していくためには、「価格」、「価格以外」のそれぞれの対応策と講じていく必要があるのだ。
【次ページ】事例にみる価格・非価格戦略
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