- 会員限定
- 2014/08/20 掲載
ローソン・積水化学・ガリバーのAWS活用事例、ユーザー企業の役員が語る期待と懸念
ガリバーインターナショナル:LINEアプリの基盤として活用、コストを1/30に
これは、車を停めてからの時間、車を停めた場所、残りの燃料による走行距離などを簡単に調べることができるアプリだ。たとえば、駐車場でクルマを停めた場所がわからなくなった場合など、DRIVE+で簡単に調べることができる。DRIVE+を開発した狙いについて、ガリバーインターナショナルの許哲 氏は次のように語る。
「コネクティッド・カーのように、クルマと運転者とのコミュニケーションが話題になっているが、それを形にしたのがDRIVE+。IoTやビックデータといっても、一般のユーザーには何のことかわからない。我々は、LINEという身近なプラットフォームを活用することで、新車でなくても、IoTのメリットをユーザーが享受できる仕組みを構築した」(許氏)
DRIVE+で利用されたのが、Amazon Kinesis(キネシス)だ。Kinesisは、大規模なストリーミングデータを、リアルタイムで処理できるサービス。アマゾンの莫大なシステムリソースを活用して、数十万のソースから 1 時間あたり数百テラバイトものデータを収集・処理できるという。DRIVE+では、その他にもデータウェアハウスのAmazon Redshift、認証サービスのAmazon Cognitoなどのコンポーネントも活用している。
DRIVE+では、車両から出てくる走行距離、走行時間、ガソリン残量、スピードなどのビッグデータをKinesisでリアルタイム処理し、前述のコンポーネントを活用して分析して、アプリを通じてユーザーに情報をフィードバックする。
許氏は、こうしたAWSの機能を活用することで、通常、1年以上かかる開発期間を5ヶ月に短縮し、コストを1/30に削減したと説明する。
「1000台のクルマがこのサービスを利用すると、1年で蓄積されるデータ量は、1000億円規模の小売店のPOSデータに相当する。しかし、AWSであれば、どれだけデータ量が増えても、同じアーキテクチャで処理可能だ。今後も、先進的なサービスをAWSのインフラを使いながら開発していきたいと考えている」(許氏)
積水化学工業:AWSを第三のデータセンターへ
膨大なグループ企業で情報共有を図るため、積水化学グループでは、iSmile(アイスマイル)という電子メール、グループウェアを中心とする情報共有基盤を自社開発し、利用していた。
これは、各種オープンソースを組み合わせて開発したもので、インターネット経由で海外からも利用可能なシステムだ。しかし、このiSmileには、いくつかの課題があったと、積水化学工業の寺島一郎 氏は語る。
「メールストレージの保守期限が切れて、ハードウェアの更新が必要になっていた。また、約100台のグループウェアサーバ群を毎年数十台ずつ更新しなければならず、メールボックスの容量拡大への要望もあった。さらに、コンプライアンス経営の一環としてのメールアーカイブ、BCP対策、社業のグローバル化に伴う情報共有基盤のグローバルでの統一などの要求も強くなっていた」(寺島氏)
こうして、同社はiSmileの刷新を決断し、オンプレミス、SaaS、IaaSの3案について、「コスト」「BCP」「アーカイブ」「ユーザー操作」「メール容量」の5つの観点で比較検討を行った。その結果、総合評価の最も高かったIaaSが選択され、そのインフラとしてAWSが採用されたのである。
iSmileのAWSへの移行は約1年をかけて実施され、無事、プロジェクトは完了。現在、特に問題なくAWS上でiSmileが稼働しているという。
「やろうと思ったことが、設備投資なしですぐに試せるメリットは非常に大きい。今回も、AWS上でAmazon DynamoDBを使ってWebメールシステムを構築するのに、いろいろ実験したが、AWSとLinuxなどのオープンソースの相性は、非常によいと実感した。また、生産性の低いハードウェア更新プロジェクトから脱却し、優秀なエンジニアを、より本質的な仕事に集中させられるようになったメリットも大きかった。ただ、コストについては、過剰に期待はしない方がよいかもしれない。資産が経費化するため、予算管理に注意が必要なほか、為替によっても変動する。リザーブドインスタンスをうまく活用することも、コスト削減には効果的だと思う」(寺島氏)
積水化学グループは、東日本と西日本に二カ所のデータセンターを持っているが、今後は、AWSを第三のクラウドデータセンターと位置づけ、さまざまなプラットフォームの標準化を進めていく計画だ。
【次ページ】Pontaのデータ活用にAWSを用いるローソン、今後の展開は?
関連コンテンツ
PR
PR
PR