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  • 2014/06/27 掲載

エネルギー業界に参入した"クレイジー"な3人が語る、高い参入障壁をぶち破る思考法

テラモータズ 徳重氏×Opower アレックス氏×エナリス 池田氏

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最も参入障壁の高い分野の1つとして挙げられるエネルギー業界。最近になって日本国内では新しい規制緩和の動きも始まっているが、それでもまだ壁は厚いと言わざるを得ない。しかし、あえてこの高いエネルギー業界の参入障壁に立ち向かい、成功を手にした(よい意味での)“クレイジー”な日米の企業家たち、テラモータズの徳重 徹氏、Opowerのアレックス・ラスキー氏、エナリスの池田 元英氏が、成功のポイントについて語った。
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写真左から、モデレーターを務めたアリ・イザディ氏(Bloomberg New Energy Finance 日本支社カントリーマネージャー)、池田 元英氏(エナリス 代表取締役社長)、アレックス・ラスキー氏(Opower 社長兼創業者)、徳重 徹氏(テラモーターズ 代表取締役社長)

年間で4.8TWh、1300億円!
Opowerが日本経済にもたらすエネルギーの節約効果

 地球規模で省エネルギーが叫ばれる中、データ解析と行動科学に基づき、エネルギーとコストの節約を実現するプラットフォームを提供しているのが米国ベンチャーのOpowerだ。現在、同社は米国を中心に9か国93社の公共事業と提携し、計3200万人もの顧客を抱えているが、この夏ついに日本にも進出することになった。このことは、日本にどのようなインパクトをもたらすだろうか? 同社のアレックス・ラスキー氏は、Opower設立の経緯を次のように語る。

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Opower 社長 兼 創業者 アレックス・ラスキー氏
「エネルギー不足は、経済の大きな足かせになる。しかし、普段から無駄に使っているエネルギーに、ほとんどの人が目を向けない現実がある。7年前にOpowerを設立したとき、ハードウェアだけでなく、ソフトウェアでも消費者の行動を変えられると思った。ビッグデータ、コンピュータサイエンス、行動科学を駆使して、エネルギーのデータをパワフルで面白い情報に加工して、この分野で意義のあるイノベーションを起こしたいと思った」(アレックス氏)

 エネルギーを節約するには3つの大きな施策が必要だ。1つ目はピーク電力の削減、2つ目は電力全体の省エネ。3つ目はエネルギー事業者と消費者の関係改善だ。では一体どうやって消費者に省エネ意識を持ってもらうのか? それは行動科学の問題だとアレックス氏は言う。

「過去の調査では、隣人がエアコンや扇風機を止めたら、自分たちも協力すると答えた人がとても多かった。つまり消費者は他人の行動に大きな影響を受けるということ。そこでソフトウェアにより、これを実現しようとした。我々のサービスは、似たような環境の家庭でどのくらい省エネを達成したのか、その情報を知らせ、アドバイスを行っていくものだ」(アレックス氏)

 具体的には、使用電力の状況を分析し、Eメールや携帯SMS、電話、Webサイトなどにより、近隣ユーザーとの電力比較や、消費電力の月別推移を通知したり、家庭環境を踏まえた形で節電の方法をアドバイスするというサービスだ。

 アレックス氏は、同社のプログラムにより、ボルチモア・ガスがエネルギー全体の消費削減に成功した事例を示した。さらにユーザーのためにパーソナライズされたタイムリーなコミュニケーションを電子メールやショートメッセージなどで提供し、ピーク時のエネルギーも5%削減できた。その結果として、平均で6ドルほどのコスト効果があったことも各ユーザーに伝えたという。

 さて、気になる日本への進出だが、Opowerは今年初頭に東京電力(TEPCO)と契約合意を発表した。この7月から2年間の予定で、約2000万世帯に同社のサービスを提供する方針だ。具体的には、TEPCOのホームページ「でんき家計簿」における電力使用状況の見える化と、スマートメーターで収集されるデータの解析に同社のサービスが使われる。

「日本の公益事業と手を組むことで、日本経済に対してプラスの効果をもたらせると思う。Opowerのサービスを導入すれば、年間で4.8TWh、1300億円の節約になる試算だ。情報を提供することによって、これだけのインパクトを与えられる。もし我々がボルチモアで実施したことを東京でも行ったら、1GW分の電力を削減できるだろう。これは首都圏1日分の消費に相当し、4000億円の資本の繰り延べになる。これからも日本のアントレプレナーシップを持った人々と共に仕事を進めたい思っている」(アレックス氏)

売電を行うPPS事業者の半分を支えるエナリス

 日本にもOpwerと同じようなサービスを提供しているベンチャーがある。エネルギー消費者に効率的な電力使用を促すエナリスという企業だ。同社は「エネルギーの効率的な利用を通じて、世界平和と人類向上に寄与する」という大きな目標を掲げている。エネルギーの問題は世界の紛争にもつながるからだ。

 代表取締役社長の池田 元英氏は、かつてパナソニックにおいて、エネルギー事業を立ち上げた人物である。同社の中心となる事業は電力の需給管理。国内では、工場やビル、スーパーや店舗などで50kw以上の電気を使う場合には、従来の電力会社以外の新電力会社(PPS)からも電気を買える。実は売電を行っている約30社のPPS事業者のうち半分を、エナリスが裏方から支えているという。

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エナリス 代表取締役 社長 池田元英氏
「具体的には電力需要を予測し、“30分3%同時同量”という送電線利用の原則(PPS業者は、売電する送電量と契約先の使用ギャップを30分単位で3%以内に収めなくてはならない。ルール違反の場合は不足分を通常の数倍高い料金で買い取ることになる)を24時間365日にわたって守れるように、電力の卸取引も行っている」(池田氏)

 メインとなるエネルギーマネジメント分野では、前述のようにPPSの業務代行だけでなく、電力の代理購入サービスも行っている。これにより、エンドユーザーは電力会社から、いつ、どの時間帯に電気を購入するのが経済的か、コスト面からの削減プランや、地球環境に優しいプラン、社会に貢献できるプランという3方向(同氏はフレミングの法則になぞらえている)から、最適な電力の購入先を選べるようになる。

 一方、パワーマーケティング分野では、再生可能エネルギーの発電所が絶対的に不足している現実がある。そこで新電源を開発しなければならない。「できるだけ安く大量に持続可能な形で発電できれば、新たなデバイスが生まれ、新しい文化やライフスタイルを構築していける。かつてエジソンが電球を発明して、電力供給をサービスとしてつくりだした。それでライフスタイルが変わり、建築様式までも変わった。こういったイノベーションが必要だ。いまは太陽光発電を中心に、バイオマス発電も開発しているが、将来的には洋上浮力発電にも挑戦したい」(池田氏)

【次ページ】 アジアを中心にグローバルマーケットを狙う電動バイクの雄、テラモーターズ
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