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震災後、新たな動きを見せるスマートシティ構想だが、都市や国単位の社会インフラをどのように整備・再構築していくか、その投資メリットは、などと課題が多いのも事実だ。しかし、スマートグリッドやITS、センサーネットワークなどが整備されれば、そこには新しいITシステムのエコシステムが生まれるという。スマートシティの今後10年間のロードマップを紹介する。
震災で活発化する日本のスマートシティ構想
電力の安定供給の面で難がある欧米に対し、日本では送電網の制御技術が確立されており、欧米とのスマートグリッドに対する温度差が指摘されていたが、東日本大震災以降、災害に強い自律・分散制御のために発電・送電の分離および社会基盤としてのスマートシティ構想があらためて注目されている。
野村総合研究所 イノベーション開発部 主任研究員 武居輝好氏は、「スマートシティにおけるITの役割 ~ITで実現する次世代社会インフラ~」と題し、スマートシティに関する今後を予想する講演を行った。
スマートシティとは、スマートグリッド(効率的効果的に運用できる電力網のこと、参考リンク:
スマートグリッドとは何か?知っておきたい次世代電力ネットワークの基本)の考え方を、エネルギー全般、上下水道、行政サービス、交通機関といった都市環境にまで広げたものだ(参考:
スマートシティとは何か?都市を効率化する3つのIT--米IDC リック・ニコルソン氏)。グローバルでみると、中国の天津では800億元(約1兆円)、サウジアラビアのJazen Economic Cityでは270億ドル(約2.2兆円)の投資が行われるなど、数多くの大規模なプロジェクトが既に展開されている。米IDC予測によれば2020年のスマートシティ市場は180兆円規模に拡大するといわれいる。
インフラ事業の先進国と新興国の戦略の違い
日本でも各省庁の実証実験プロジェクトのほか、日立製作所、NTTデータ、日本IBM、シスコシステムズなどの大手ITベンダーによるインフラ事業部門の設立が相次ぐなど、スマートシティの動きが本格化している。
これまでの社会基盤整備は、先進国であれば資源の有効活用、インフラコストの低減、老朽化した設備の整備、入れ換え、環境問題がメインテーマだった。一方、新興国では、急激な人口増加や人口集中によるインフラ整備がスマートシティが注目される主な理由となっていた。
「しかし今後はこれらの課題にくわえ、障害や災害に強いインフラを考える必要がある。複合的な課題に対して、テクノロジーによる効率化、障害の自動検知、予防制御、動的な最適化制御、エネルギー効率の改善、環境配慮といった要素が強く求められる」(桑津氏)
現在各国で行われているスマートシティプロジェクトは、個別課題解決型、複合課題解決型、要素技術検証型、プラットフォーム検証型の4つに分類できる。
個別課題解決型はスマートメータや渋滞課金システムなどである。複合課題解決型は文字通り複数の課題や都市全体の課題に取り組むというもの。要素技術検証型は、マイクログリッド技術やスマートハウスの太陽光発電やヒートポンプ、燃料電池などを実証実験が主目的となる。プラットフォーム検証型は、複数の要素技術を運用するための基盤開発を目的とするものだ。
スマートシティプロジェクトの展開パターンだが、先進国は、要素技術検証型から個別課題検証型に発展させ、最終的に複合課題解決型へつなげる動きが多い。新興国は、要素技術をあまり持たないなど、そもそものインフラ整備と重なる部分もあるので、プラットフォーム検証型プロジェクトから一気に複合課題解決型へと発展することが多いそうだ。
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