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  • 2013/06/28 掲載

ガートナー 川辺謙介氏:モバイル・ソーシャルがもたらした“顧客情報革命”に立ち向かう

メルマガ効果の最大化、Q&Aサイトの活用方法は?

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ソーシャルメディアの普及などにより、顧客はネットワーク上の口コミを通して、今まで以上に企業のことを知ることができるようになってきた。またこれまで企業から顧客への一方通行だった情報の流れや働きかけも、顧客から企業へというアプローチがより簡単にできるようになっている。こうした状況は、企業と顧客の立場の逆転をもたらす“顧客情報革命”だといえる。これから企業は、今まさに起きているこの革命にどう立ち向かっていけばいいのだろうか。ガートナー リサーチ部門 主席アナリストの川辺謙介氏が語った。

コミュニケーションを迅速かつ多重的に回す

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ガートナー リサーチ部門
主席アナリスト
川辺 謙介 氏
 革命には“英雄”が必要だ。英雄が現れることで、これまでの状況が一変していく。たとえば現在、Twitterで直接消費者とつながった企業トップが、ダイレクトに届くさまざまな要望や意見に耳を傾け、即断即決で自社の活動に反映していくという動きが起こっている。ただし革命は英雄一人だけでは起こらない。それを支持する多数の人々に支えられている必要がある。ガートナー の川辺謙介氏は、ガートナー ビジネス・インテリジェンス&情報活用サミット2013で次のように指摘した。

「従来の競争関係や力関係が逆転している。顧客情報の観点からは、企業と顧客の立場が逆転するということだ。企業が顧客を知ろうとするのと同時に、顧客も企業を知ろうとする。また顧客から企業への働きかけもソーシャルメディアなどを通じて行いやすくなり、顧客が企業を制御するという時代になりつつある。そしてこの状態が、時間の経過と共に定着していく。」

 こうした顧客情報革命は、ビッグデータの活用によって実現されるものだ。ガートナーでは、ビッグデータを“コスト効果の高い革新的なテクノロジにより利用可能となったデータ”と定義している。その特徴は、大容量でリアルタイム性があり、さらに多様性と複雑性を持つということである。実際の分析においては、企業内のデータに加えて、ソーシャルメディアから得られるデータや市場調査のデータなどを併せて活用する。

「ここで言いたいのは、顧客とのコミュニケーションチャネルが多様化してきているということだ。チャネルごとに顧客の反応を獲得でき、情報が貯まってくるということ。」

 そして重要なポイントは、得られた情報を分析し、高度なインサイト(=洞察)を加えて、次の意思決定に結び付けることだ。ポイントは2つある。第一に、多様なチャネルにまたがる顧客に迅速にレスポンスを返していくことだ。意思決定が遅れ、顧客へのレスポンスが遅れると、ソーシャルメディアなどにスピードに対する不満の声が上がってくる。これは新商品が期待とは違ったとか、他社製品のほうがいいといった次の商品開発に繋がるような価値のあるものではなく、いわば不要な情報だ。

 第二に、多重的なコミュニケーションとは、チャネルの多様化だけでなく、商材の多様化をも含む。細かくセグメント化してコミュニケーションを回していくことで、よりよい反応を得ることができる。

 また、今後対象となる顧客は、これまでとは異なる価値観を持った世代が登場してくる。15~64歳までの生産年齢人口で見てみると、1980年以降に生まれた人の割合は、2011年には28.0%だったが、2020年には45.1%を占める。

 ちなみに1980年はTVゲームやファミコンが登場した頃で、この年以降に生まれた人は、生まれながらにしてデジタルなユーザインタフェースに慣れ親しんでいる。コミュニケーションスタイルも文字で一方向に伝達するというよりは、ビジュアルで双方向というのが当たり前だ。

「今後はスマートフォンもさらに普及していく。つまり、双方向のコミュニケーションが、スマートフォンを利用して、いつでも、どこでも当然のように行われる時代が来るということだ。企業側はそうした顧客に対して、従来とは異なるエクスペリエンスを提供する必要がある。」

画像
年齢構成の変化とモバイル端末稼動台数の変化
(出典:ガートナー)


ITを活用して顧客情報革命に対処する

 顧客情報革命を推し進めるためにはITの支援が必要となる。原動力となるのは、ソーシャル、モバイル、インフォメーション、クラウドという4つの力の結節だ。

「ただしこのうちのどれか1つに注目するということではなく、2つ以上を組み合わせることで初めて、インパクトが出てくる。たとえばソーシャルとモバイルの組み合わせは、リアルタイム性を劇的に変えてきている。」

 次に具体的なソリューションとしてまず川辺氏が紹介したのが、マルチチャネル・キャンペーン管理だ。

 自社の顧客に対して販促用のメールマガジンを配信しようとする時、全顧客に対してアプローチすれば、それなりに売上は期待できるかもしれない。しかし必ずしも個々の顧客にとって適切なメッセージになっているかどうかは疑問だ。結果、もう二度とメルマガを見てくれない顧客が出てくるかもしれない。

 そこでまずは収益性の高い顧客だけをターゲットにして、メルマガを配信する。自社製品に対する関心度合いは高く、ある程度の売上も見込めるだろう。ただし業務負荷は顧客全体に対して行う手間と大きくは変わらない。

 同様に色々なセグメント分けを行い、複数のキャンペーンを実施することで、各々の収益性は小さいかもしれないが、これを積み上げていくことで、顧客全体に対して施策を行った時の成果に追い付くことを目指す。ここでのポイントは、各キャンペーンの業務負荷を自動化によって極力圧縮することだ。

「短期的なコミュニケーションでいいという場合には、顧客全体に対してアプローチした方が成果は速く上がるだろう。しかし顧客と長くコミュニケーションを図っていきたいという時に、一回拒否されると再開することは非常に難しくなる。顧客基盤の約3分の2と、もうコミュニケーションできなくなったという企業の例もある。顧客との関係強化を考えた時、キャンペーン管理ツールの重要性はますます大きくなってきている。」

 またカスタマエクスペリエンスを向上させる場面でも、ITの果たす役割は大きい。

 たとえば富士通では、会員数250万人以上の質疑応答サイト「OKWave」が持つQ&Aデータベースから自社製品に関するやり取りを抽出し、自社のPC活用情報サイトに掲載している。会員制サイト上でのQ&Aなので、一般的なソーシャルメディアでのやり取りよりも信頼性は高い。

「質の高いソーシャルメディア上の声を顧客サポートに活用している例だ。場合によっては、他社製品の優位性を教えるアドバイスや自社製品に対するネガティブなアドバイスがあるかもしれない。しかし客観的で質の高いQ&Aを提供することでき、さらには自社のコールセンタが営業していない深夜でも、このサイトを通じてユーザが問題解決できるケースが増える。カスタマエクスペリエンスは確実に向上するだろう。」

【次ページ】3つのタイプのリーダーシップ
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