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  • 2012/10/30 掲載

日本銀行 浜野隆氏:国際金融監督の枠組み構築の現場から見たバーゼルⅢの現状と今後

バーゼルⅢの今後の注目点は?

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世界中の銀行の経営の根幹を揺るがしかねない「バーゼルⅢ」規制。9月27日に開催された金融リスクマネジメントフォーラム2012において、日本銀行 浜野隆氏はバーゼル規制の歴史的変遷を振り返り、バーゼルⅢの国内実施に向けた主要国の動向や一部見直しに向けた最新の状況について解説した。さらに、金融規制をめぐる国際的な議論の流れに関連づけ、バーゼル銀行監督委員会(バーゼル委)の今後の検討課題を整理した。同委員会やジョイント・フォーラムなどの国際的な枠組みに参画してきた浜野氏の話には、経緯を整理し将来を占うためのヒントが満載だった。要点を紹介する。

バーゼルⅢまでの流れ

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日本銀行
金融機構局
国際課長
浜野 隆 氏
バーゼルⅠ(1988年):
リスク・ベースの信用リスクを計測する枠組み。自己資本の総資産対比のオフバランスも含めた計測が特徴。最低自己資本比率の8%はここに始まる。1996年には市場リスク規制の導入がされた。標準的手法とVaR利用の内部モデル方式の選択により市場リスク相当額を計測して自己資本を賦課するもの。

バーゼルⅡ(2004年):
銀行が抱えるリスクの複雑化を背景として公表された。銀行の実務に沿う形でリスク感応度を高めたリスク・アセットの算出が基本的な発想。また、リスク計測に高度な手法を用いることで所要自己資本を少なくさせるインセンティブを付与した。さらに、オペレーショナル・リスクについても自己資本規制を追加。規制上、全世界ベースでの所要自己資本がほぼ同水準となるように、最低自己資本比率8%が維持された経緯がある。規制全体の枠組み「最低所要資本」「監督上の検証」「市場規律」という3本の柱は、このとき以降維持されている。

バーゼル2.5(2009年):
金融危機を受けた、市場リスクに関する応急的な見直し。「証券化商品の取り扱い強化」「ストレスVaR導入」「追加的リスクの捕捉」(後2者は内部モデル方式のみ)を内容とする。

バーゼルⅢ(2010年):
金融危機を受けた本格的な対応として公表された。詳細については後述する。

金融危機以降の国際的な議論(G20サミットでの決定事項)

ワシントンDC(2008年11月):
プロシクリカリティ緩和や証券化業務の資本賦課強化にコミットした他、SIFI(システム上重要な金融機関)への適切な規制監督が要請された。

ピッツバーグ(2009年9月):
2010年までの自己資本規制強化のルール策定にコミット(実施は2012年までを目標)し、レバレッジ比率の導入が謳われた。またFSB(金融安定理事会)に対してSIFI対応の枠組みを検討するよう指示がされている。

ソウル(2010年11月):
同年6月トロントサミットでの方針を受けバーゼルⅢの大枠が合意され、SIFI対応の方向性につき報告があり、現状に至る規制の基本的な出発点となった。同年末にバーゼルⅢ規則文書が公表され、G-SIFI(グローバルにシステム上重要な金融機関)評価方法の検討がバーゼル委で開始された。

カンヌ(2011年11月):
バーゼル2.5とバーゼルⅢの実施期限の遵守が宣言され、G-SIB(グローバルにシステム上重要な銀行)の具体名が公表された。また、G-SIB上乗せ規制の枠組みをD-SIB(国内のシステム上重要な銀行)へ拡張するよう指示もされた。

 そして今年、バーゼルⅢの実施状況の審査が始まり、D-SIB上乗せ規制にかかる市中協議も開始されている。

【次ページ】バーゼルⅡからⅢへの移行の主要なポイント
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