- 2012/04/04 掲載
営業支援システムに対する警鐘 ――真に拡販に寄与するシステムを構築するために
たとえば、営業事務合理化で顧客訪問に割ける時間が増えても、自社内に既存顧客に持っていく価値ある情報が充実していなければ、顧客は、頻繁に来る営業パーソンを嫌がるだろう。新規顧客に会う人脈や手立てがなければ、時間があっても、新しい顧客の開拓はできない。逆に、有効な新規顧客に会う方策があれば、営業パーソンは時間をやりくりして、自立的に新規顧客開拓に邁進するかもしれない。つまり、今と何を変えて、それでなぜ拡販が果たせるか、自分達に合った「拡販のロジック」を見出すことが、何よりも重要なのだ。
実は、自社に適用可能な拡販のロジックは、社内でいくつも探すことができる。それは、ハイパフォーマーの頭の中と、成功事例の中に存在している。しかし、ほとんどの企業は、問題点や失注原因は分析しても、ハイパフォーマーのノウハウや成功事例を分析しない。
営業支援システムを導入した企業で、「ハイパフォーマーはこのようなシステムがなくても高い業績を上げている」とか、「システムと関係なく、あのマネージャーが赴任した支社は営業成績が良くなる」といった声を聞くことがある。これは、無意識に、本当の拡販のロジックが明らかにされないまま、ありきたりのロジックだけでシステムを作ったことが認識されるからだ。
ハイパフォーマーのノウハウや成功事例から得られる、拡販のロジックとはどういうものか。具体的な例を見てみよう。たとえば業界や事業形態を越えて、ハイパフォーマーは類似する拡販ノウハウを持っている。「最初に自分に声をかけてくれる顧客を計画的に増やす」などがそれだ。
ある生命保険会社のトップ営業パーソンは、月に1回会える顧客を計画的に増やしていた。会って、また会いたくなる話をして、商談などしないで帰る。そして、会ってから1ヶ月後の顧客を、地域ごとに名寄せして、日々の行動計画を作り、また会いたくなる話をしに行く。生命保険商品には、売れるタイミングがある。子供が就職したとき。結婚したとき…。だから、そのようなタイミングを、他社よりも早く知り、または、顧客からそのタイミングで相談してくれる関係を、1人でも多く作っていくのだ。そのためには、また会いたくなる話のネタがいる。この営業パーソンは、顧客の困っていることと、その困りごとへのヒントとなる話を、会話の中から拾い、ノートにつけていた。たとえば、高い絵画を買ってしまった歯科医と、その作家の絵を扱っている画廊の話などだ。このノートを充実させて、その中にあるネタをお土産に会いに行き、相手にまた何度も会いたいと思わせるのだ。
「最初に自分に声をかけてくれる顧客を計画的に増やす」ことを励行しているのは、B2C領域だけではない。たとえば部品や素材メーカーでも、人の何倍も売るハイパフォーマーの中には、同様なことを行っている者がいる。セットメーカーが新たな部材を考える時、最初に相談してもらえれば、早急に社内で対応準備を行い、早く提案し、よいポジションが取れるのだ。もちろんこの場合に持っていくお土産は、画廊の話ではダメだ。顧客調達担当、技術担当に対して価値がある情報を準備しなければならない。このような拡販のロジックは、ハイパフォーマー以外に、過去の成功事例からも、数多く見出すことができる。拡販のロジックが明確化できれば、これを組織的に普及させるための業務プロセスや人材育成方法、そして支援システムが明確化できる。
【次ページ】成果を上げるロジック、実践のためのフォーマット
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