- 会員限定
- 2012/02/16 掲載
横山明彦東大教授インタビュー:安定電力供給と電気料金はトレードオフ。日本企業はどう受け止めるべきか
電気料金は今後どうなる?海外に活路はあるか?
-
|タグをもっとみる
より効率的で安定した電力供給を目指す“日本型先進スマートグリッド”
そもそもスマートグリッドは、発電事業者と需要家(=企業や家庭)との間で双方向に電気のやり取りができるように制御された電力ネットワークのことで、ネットワーク全体で電気の需給バランスを最適化し、さらに社会コストの低減を目指すものです。
一方、日本の電気事情を見てみると、情報通信ネットワークを活用した送電網の事故を監視/制御するシステムや、事故発生時の停電範囲を極小化する自動化技術は既に導入済みで、電力供給の仕組みそのものは世界的に見ても高いレベルにあるといえます。
また最近では、太陽光発電を主とした再生可能エネルギーの利用が進み、系統連系によって、一般家庭などから電力会社へ余剰電力が“逆流”する状況も増えてきています。
我々の提唱する日本型先進スマートグリッドとは、日本の高い電力供給技術を背景に、今後さらなる利用促進が予想される再生可能エネルギーを大量にスマートグリッド内に取り込み、CO2排出を削減できる環境にも優しい電力供給システムを、ITも活用しながら構築していこうというものです。
──それはつまり発電事業者だけの取り組みではなく、企業や個人も関係してくるということでしょうか。
おっしゃるとおりです。たとえば太陽光発電や風力発電の余剰電力を貯めておこうとした場合、電気事業者側で蓄電池を大量に導入すれば蓄電することは可能です。しかし蓄電池の値段はまだまだ高く、さらに数多く供給されるものでもありません。
そこで電気の貯蔵先として有効となるのが、家庭側の電気を熱エネルギーに変えて貯めることのできるヒートポンプ給湯機、あるいは今後普及が期待される電気自動車(EV)といった設備です。
太陽光発電システムなどに加えて、こうした需要家側の設備もスマートグリッドに接続し、さらに火力発電や水力発電など既存の電力供給網も含めて、統合的にコントロールすることが、全体的な社会コストの低減にもつながると考えています。
また各構成要素をコントロールするためには、その各々から制御のために必要な情報を取得する必要があります。そこでITの力を借りるのです。
日本型先進スマートグリッドとは、発電事業者だけでなく需要家も巻き込み、再生可能エネルギーも取り込みながら、ITを活用してより効率的で安定した電力供給を目指す次世代のスマートグリッドだといえます。
【次ページ】海外に活路を見出すことができるのか?
関連コンテンツ
PR
PR
PR