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  • 2010/12/22 掲載

【守屋 淳の古典戦略ビジネス応用】最終回:人生でもビジネスでも目標は変わり得る ~目標・目的の柔軟性を『戦略論』に学ぶ

時代の落とし穴にはまらないノウハウ

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昨今、急速に再評価が進んでいる軍事評論家リデル=ハートが記した『戦略論』。悲惨な戦争体験を根底とする彼の軍事的発想は、相変わらず厳しい状況の続く現代のビジネス環境に活かせるものが多い。「間接アプローチ」や「目標・目的の柔軟な調整と変更」、「戦略のうえの戦略」など、その示唆に富んだ内容を解説していこう。
執筆:守屋 淳

再評価が進むリデル=ハートの『戦略論』

 この連載も早いもので最終回となりましたが、今回取り上げるのは最近人気の高いリデル=ハート(1895~1970)、そして大きなテーマは「目標や目的って何だろう」という内容です。

 もともと彼の書いた『戦略論』は、20世紀を代表する軍事書の一つとして知られていました。ただし、1971年に出された日本語訳が、評判になるほど酷い悪文で読みづらかったこともあり、いま一つ人気が盛り上がらなかった面があります。

 ところが昨今、再評価が進んで彼の主著の新訳が続々と刊行され、2010年にはついに『戦略論』の新訳(市川良一訳 原書房 以下引用はこの訳による)も刊行の運びとなりました。日本での再評価のインフラがようやく整ってきたのです。

 彼の軍事的な発想の原点は、悲惨な戦争体験が根底にありました。リデル=ハートは第一次世界大戦にイギリスの陸軍将校として参加、有名なソンムの戦いに参加して負傷した経験があるのです。このとき彼の目に映ったのは、敵の戦闘力を破壊しようとして、ひたすら物量を注ぎ込む戦い方の無意味さでした。

 一体誰が、こんな戦い方を是としたのか。軍事評論家となったリデル=ハートが掘り当てたのは、「敵戦力の最も充実した所を叩け」と唱えるクラウゼヴィッツの『戦争論』と、その思想をさらに先鋭化していったクラウゼヴィツの後継者たちの姿だったのです。

 では、このような『戦争論』的な思想を乗り越えるにはどうすればよいのか。その思想的な基盤として、彼は『孫子』を発見していくのです。さらに彼は前回取り上げたT・E・ロレンスと親交を結び、ゲリラ戦の戦い方にも通暁していきます。そして、こうした彼の思索から導き出されたのが「間接アプローチ」という考え方でした。

   次ページ >>  「間接アプローチ」とはどのような概念か?

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