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- 2009/05/21 掲載
RoHSとは?REACHとは?ヨーロッパ生まれの環境対策基準【2分間Q&A(55)】
企業が取り組むべき環境対策の基本
ヨーロッパ生まれの環境規制「RoHS指令」
市場に出回っている家電や工業用機器、玩具、コンピュータハードウェアなどの電気、電子製品には、さまざまな有害物質を含む部品が数多く使われているのが実情だ。これらの有害物質は利用する上では問題とはならないが、製品が廃棄された時、自然環境に悪影響を与えてしまう可能性が極めて高い。たとえば、代表的な有害物質として鉛や水銀、カドミウムなどが挙げられる。鉛はコンピュータの基盤上で部品を固定するためのはんだや各部品の中に含まれており、廃棄された電子部品から鉛が酸性雨で地中に溶け、地下水を汚染するといった問題が起こっている。また、水銀については、自動車の前照灯、蛍光灯、テレビやノートPC/液晶ディスプレイのバックライト(陰極管)など、さまざまな部品に含まれている。これらが廃棄され、焼却や埋め立てなどで自然界に放出され続けると、環境汚染が一層深刻なものとなる。
この問題を重視したヨーロッパ連合(EU)では、2003年2月に電気/電子機器の廃棄の削減を目標にし、リサイクルを推進するための「WEEE指令」と共に、WEEE指令に基づくリサイクル時の有害物質の処理の問題や最終的に破棄処分にした時に環境に影響を与えないようにすることを目的に「RoHS指令」を交付。2006年7月より施行された。
RoHS(Restriction of the use of certain Hazardous Substances in electrical and electronic equipmen:電気・電子機器における特定有害物質の使用規制)指令は、特に人体や環境に有害とされる鉛、水銀、カドミウム、六価クロム、ポリブロモビフェニル(PBB)、ポリブロモジフェニルエーテル(PBDE)の6種類の有害物質の含有率を厳しく規制し、実質的に使用禁止とするものだ(表1)。
表1 RoHS指令で使用禁止となっている有害物質と含有率基準値 | |
物質の名称 | 含有率 |
鉛 | 0.1wt%以下 |
水銀 | 0.1wt%以下 |
カドミウム | 0.01wt%以下 |
六価クロム | 0.1wt%以下 |
ポリブロモビフェニル(PBB) | 0.1wt%以下 |
ポリブロモジフェニルエーテル(PBDE) | 0.1wt%以下 |
wt%は製品の重量を基準とした含有率の単位で、0.1wt%は100gの製品に0.1g含まれていることを示す |
また、RoHS指令の対象製品は下記に示す通りだ。家電、電機メーカ、コンピュータメーカや部品メーカなど、電気・電子製品を何らかの形で扱うすべての企業が対象となる。
・小型家庭用電気製品(電気掃除機、アイロン、トースターなど)
・ITおよび遠隔通信機器(パソコン、フリンター、複写機など)
・民生用機器(ラジオ、テレビ、楽器など)
・照明装置(家庭用以外の蛍光灯など)
・電動工具(旋盤、フライス盤、ボール盤など)
・玩具、レジャーおよびスポーツ機器(ビデオゲーム機、カーレーシングセットなど)
・自動販売機類(飲用缶販売機、貨幣用自動ディスペンサーなど)
ただし、この指令をすべての製品に適用してしまうと、産業に重大な影響を与えるものもある。たとえば、RoHS指令では陰極管バックライトを使った液晶ディスプレイやノートPCの販売が一切できなくなってしまうが、現実には、ほとんどの液晶ディスプレイが陰極管であり、これを規制するとテレビやコンピュータなどが一切販売できない、ということにもなりかねない。
そこで、定められたのが「RoHS除外項目」だ。陰極管や小型水銀灯、一般用途の直管蛍光灯や「サーバー、ストレージ、スイッチ/信号/電送用ネットワーク・インフラストラクチャー装置および通信管理ネットワークに使われる『はんだ』に含まれる鉛」など、32項目が除外対象となっている。この情報は随時変更が行われており、最新の情報は「Waste Electrical and Electronic Equipment(WEEE)」で確認できる。
なぜRoHSは世界基準になったのか?
RoHS指令はEU加盟国に向けた指令だ。指令の具体的な適用については、EU加盟国の国内法の制定や改正などを経て、各国の法律として制定される。このため、具体的な罰則や対応方法については国によって異なっているが、いずれにせよ、EU加盟国以外は関係のない指令のように思える。しかし、家電メーカやコンピュータメーカなど、あらゆるグローバル企業にとって、ヨーロッパは極めて大きなマーケットであり、EU以外の国であってもRoHSの基準に適合しない製品は販売できなくなるため、実質的にRoHSへの対応を必要とする。むしろ、積極的にRoHSに対応する製品に切り替え、環境問題に真摯に取り組む姿勢が重要、というトレンドが市場に根付いたことも、RoHS指令の普及の大きな要因と考えられる。
その一端を示すのが、各社が自社製品パッケージなどの「RoHS」を示すロゴマークだ。しかし、メーカによってロゴマークが異なっている。実は、RoHS指令にはロゴマークが制定されておらず、何ら表示義務もない。RoHSロゴは各メーカが独自に作成したものであり、環境問題に対応していることをアピールするために利用されている(図1)。
図1 各企業が使用しているさまざまなRoHS対応ロゴ |
---|
もちろん、企業にとって毒性の強い有害物質を含まない製品を生産することは、かつてないほどに環境問題がクローズアップされる昨今、道義的に必然的なこととなりつつある。現在では、除外項目となっている液晶ディスプレイのLED化や鉛を含むはんだから無鉛はんだへの転換などの動きも加速している。
なお、RoHSのロゴマークについては、将来的に統一されたマークの表示が義務づけられる可能性もある。また、RoHS指令は定期的に規制対象外の条件や追加物質の検討、改正が行われることになっている。
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