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- 2008/01/22 掲載
第1回:意識改革できるか「内部統制は中堅・中小企業のためだ!」
連載『中堅・中小企業に必要な内部統制とは』 NPO法人内部統制評価機構 専務理事 髙梨智弘氏
中堅・中小企業の経営者に直訴したい!
2008年4月から施行されるいわゆる日本版SOX法(金融商品取引法)は、対象企業内に内部統制組織の整備・運用を求めている。本格開始直前の上場企業は、てんやわんやでその対応を進めているが、中堅・中小企業の皆さんの現状は、どうなっているのか?もしかすると、皆さんは、「中堅・中小企業の自分たちには関係ない」「売上げ増に繫がらない」「ムダなコストがかかる」「やる暇な人がいない」などと誤った認識をしていないだろうか? 内部統制は、何のために行うのか本当に知っているのか?
2007年までの、企業不祥事の多発をどう思っているのか?自分達には関係のない、よそ事だと思っていないだろうか?実は、経営者のあなたが気づいていないだけで、今、現場で同じようなことが起こっているのではないか?「このくらいなら、まあ良いだろう」と結果的に不正の片棒を担いでいないか?経営者の責任をどう思っているのか?
皆さんの会社は日本を支える150万社の1つだ。社会から信頼される企業になるのに、理由はいらない。どうしたら信頼されるのか、皆さんの心に聞いて下さい!
今の時代は、社会に対して良い会社を求めている。この2~3年の不祥事の発覚により市場から退場させられた事例が示すように、社会は悪い会社を許さない。顧客や会社の関係者だけでなく、地域社会も住民も以前と比べて得られる情報が多く、消費者として会社への対応も厳しくなっている。
会社を取り巻く利害関係者全てが、会社の活動に対して物言う集団になっていると理解すべきだろう。それは、社会・経済に深く入り込み縦横に組み込まれている会社の一挙手一投足が、利害関係者に大きな影響を与えるからである。したがって、経営者の社会的責任が強く求められ、内部の問題を内部のこととして隠すことはできないため、内部統制を適切に実施することが時代の要請と言える。
このようなパラダイムシフトが起きているにも拘わらず、この数年、企業活動上の諸問題の隠蔽や粉飾決算等、企業の不祥事が規模の大小に拘わらず、毎日のように新聞・テレビ等で報道されてきた。世界に目を向ければ、エンロン事件やワールドコム事件のような世界を揺るがす不祥事の対策として、米国で企業改革法が成立し、日本に先駆けて企業経営者の責任が強く問われるようになった。特に、上場企業に、内部統制組織の整備・運用が義務づけられた。
このような世界の動きに合わせて、日本でも2006年6月に日本版SOX法と呼ばれる金融商品取引法が成立し、08年4月1日以降に始まる事業年度から上場企業の経営者には、財務諸表と共に内部統制についても報告義務が生じることになった。公認会計士(監査法人)による外部監査を受けなければならず、公開企業では、組織の整備、制度の導入、IT化等に資金を投入し適切な運用をしようと必死の努力を続けている。 では、非上場企業の中堅・中小企業は、このような報告義務がないので、内部統制を無視できるのだろうか?その答えは、「否」である。全ての会社が従わなければならない新会社法(2006年5月成立)は、いわゆる内部統制を前提とした規則になっている。詳細は、次回以降に解説するとして、上述したように、あらゆる企業にとって、良い会社としての経営を実践するためには、内部統制による経営管理が最も適した方法と言えるだろう。
経営者が、最適な企業活動を行おうとすれば、組織の隅々までトップの意思が浸透していなければならない。つまり社員全員が、経営者の指示した通り活動することが企業活動の重要成功要因である。そのためには、何をすればよいのだろうか?まず、株主の意を受けた経営者がトップダウンで、組織を最適な方向に動かすために適切な戦略に沿ってコーポレート・ガバナンス(企業統治)を行うことである。この戦略を具体的に計画に落とし込み、予算通り業務を適切に実施するためには、PDCA(計画―実施―チェック―是正処置)サイクルがうまく回っていることが必要となる。この“C-A”チェック-是正処置のステップが、内部統制であり、それが有効に機能していなければならない。
言い換えれば、株主の負託に応え業務の執行を統括するのは、経営者(社長)の責任である。企業活動の成否は、戦略に基づいて計画通り全社員が動いていることを社長が適切に確認することができるかどうかにかかっている。経営の善し悪しを判断するために全体が見える仕組みで最も効果的と言われているのが内部統制システムである。
中堅・中小企業においてこそ、企業活動の良し悪しを見ることのできる内部統制組織の整備・運用が重要視されるべきではないだろうか。上述したような意味合いから、上場企業と違い、中堅・中小企業にとっての最大の関心事(弱み)は「業務の有効性と効率性」である。
もし、会社の経営が大変であれば、まず最初に手を付けなければならないのは、経営の健全化を図ることである。そのためには、世界的に受け入れられている内部統制の基本的枠組み(COSOフレームワーク:3つの目的、5つの構成要素)を基にして制定された金融商品取引法が対象とする4つ目的(業務の有効性と効率性、財務報告の信頼性、事業活動に関わる法令の遵守、資産の保全、)と6つの基本的要素(1 統制環境、2 リスクの評価と対応、3 統制活動、4 情報と伝達、5 モニタリング、6 ITへの対応)を業務に取り込むことである。
特に中小企業の目線に合わせて、(1)顧客と社会にどう対応するのか、(2)少ない経営資源をどう活用するのか、(3)問題を少なくするために学習する組織をどう構築するのか、(4)効果的、効率的に動けるような経営管理は何か、(5)情報をいつでも共有できる知の経営をどう実施すればよいのか、という業務の流れに沿った中堅・中小企業向け基準が必要である。
専門家が集まった当機構では、内部統制の重要性に気づき、また内部統制レベルを経営者自らが簡単に分かるように、中堅・中小企業の経営者の視点から簡易な基準書を作成している。内部統制システムの導入こそが、顧客と社会の信頼を得、結果的に売上を上げ、コストを削減し、利益を出す経営を保証するという考え方である(参考情報先:NPO内部統制評価機構)。
本連載の達成目標は、経営者の意識改革を促すことであるため、「儲かる内部統制」を実際に実施してみようと経営者が思うように「150万社の中堅・中小企業を動かすイネイブラーを探し出す」ことである。 そのために、本連載では、第1回:内部統制の本来の意味、第2回:不祥事事例等の参考、第3回:新会社法の趣旨、第4回:内部統制の良し悪しの評価、第5回:業務プロセスの強み・弱み、第6回 抜本的改革の手法、第7回 経営全体の品質の評価、第8回:中堅・中小企業向け内部統制評価基準、第9回:従来のCS/QCDと新しいCS/QCTの考え方、第10回:新しいリーダーシップと個の多様性等を一緒に考え、何をすべきかを解説したい。
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