- 2007/12/28 掲載
【長谷川裕氏インタビュー】他メディアと連携しながらラジオの存在感を示す
「文化系トークラジオ Life」の仕掛け人に聞く多角的な展開
長谷川 裕氏 |
長谷川氏■やっぱり、ラジオそのものに対する危機感があるからでしょうね。僕の友達でも日常的にラジオを聴いてるっていう人はごく一部です。そういうなかでラジオだけで何かやって、それで聴いてもらえるとは思えないんですよ。実際、これなら普段ラジオを聴いていない人にも興味をもってもらえるかなっていうものをつくっても、聴いてほしい相手になかなか届かない。だったら、ラジオ以外のもので出していけばいいんじゃないか……っていうのが最初にあったんですね。
特に若い人にとってはラジオを聴くという行為のハードルが上がってしまっていると思うんですよ。そもそもラジオを持っていないとか、あっても電波が入りにくいとかね。それからやっぱり、時間的な制約ですよね。その時間を逃すと聴けないという。だったらとりあえずハードルを下げてみようと。ラジオを持ってなくても、リアルタイムじゃなくても聴けるというような形で、制約を外すことを考えたわけです。その意味で一番わかりやすいのはやっぱりポッドキャストでしょう。それから、インターネットでのウェブ中継、ストリーミング放送ですね。あれはリアルタイムですが、ラジオを持っていなくても聴けますから。
ただ一般的には、ラジオとしてそういうことをやると本業のほうのマイナスになるという考え方が強いですね。「Life」のように放送内容をすべてネット配信しちゃうのは、ある意味自己否定的なことかもしれません。普通はポッドキャストで配信するにしても、これを聴いたら本編も聴きたくなるような予告編的なものであったり、あるいは「ストリーム」(TBSラジオの人気番組の一つ)の「コラムの花道」のように、ポッドキャスト向きの部分を、本編とはある種、別の価値をもたせて出すというような感じですよね。
それを「Life」では極端に、全部出しちゃうという形でやっているのは、やっぱり全部聴いてほしいから、まあ僕が勝手にやっちゃっているわけですけど、それでも社内で大目に見てもらえてるのは、「この番組はいったい誰が聴くの?」という感じがあって(笑)、既存のリスナーが損なわれるようなことはないだろうと思われているからでしょう。むしろポッドキャストを取っ掛かりとして、もともとラジオをまったく聴いてなかった人をリスナーとして迎えられるんじゃないか。ようするに新規開拓をやるのだと。それで許されている部分はあると思います。
――新規開拓ということで番組を始めて、リスナーの顔というのはだいたい見えてきましたか?
長谷川氏■それはもうかなり……実際にイベントなどで直接会って話したりしていますから(笑)。20歳前後の大学生ぐらいの人たちと、それから30歳前後の社会人になって10年近く経ったぐらいの人たちというのが一番多いですね。ただ、やってみて思ったのは、「文化系トークラジオ」なんてサブタイトルがついてるから、リスナーも属性的にいかにもそっち系の人が多いかなと思っていたんですけど、案外そうでもないんですよ。この番組で話されているようなことっていうのは、たとえば固有名詞にはピンと来なくても、出演者が楽しそうに話してたり真剣に話してたりすると、思っていた以上に幅広い人が興味をもってくれるんですよ。
これはこの番組を企画したり、つくる上でのモチベーションになっていることでもあるんですけど……これまで僕は、自分が個人的に面白いと思うものとか好きなものとかを企画で出しても、そんなの誰が興味もつんだよ!っていうふうにずっと言われつづけてきて。まぁ子供の頃から基本的にずーっと少数派でいたので、自分でもそりゃそうだとも思ってきたんですが。だけどそれは、自分の感覚が特殊であったり、ほかの奴らにはわからないだろう、みたいなことでは全然ないんです。みんな知らないだけで知ったら案外面白いと思ってくれる人もいるんじゃないか、っていう思いは昔からずっとあったんですよ。
だから「Life」も、たしかにこれまでの一般的なリスナー層にすぐ人気が出るような番組ではないと思うけど、場をちゃんと与えてもらって、ある程度工夫しながらじっくりやらせてもらえば、特殊な属性の人にだけではなく、もっと幅広い人たちに面白さを伝えることはできるんじゃないかな、っていうふうに思って始めたので、そういう反応があるとすごく嬉しいですね。
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