- 2024/09/20 掲載
なぜ生成AIはこんなに便利でも使われないのか?ガートナー流「アメとムチ」の成功戦略(2/2)
「現場任せ」にしない「成功3カ条」
実際に生成AIを導入する段階で大きな問題となるのが、現場での利用をどう活性化していくかだ。林氏は「生成AIはたしかに強力な機能です」と前置きした上で、「ただ、業務レベルで役に立つ生成物を生むには、一定以上のプロンプトの生成スキルが必須となります」と指摘する。現場に利用を一任していては、2~3度ほど利用しての思うような生成物が得られないことへの失望から、利用が下火になってしまうことも決して珍しいことではない。
そうした中での生成AIの活用促進に向けた“方策”として、林氏は3つを提示する。
1つ目は、企業の戦略の中に生成AIを位置付け、そのことを社員に明確に伝えることだ。それを抜きには、生成AIの導入の狙い社員に十分には伝わらず、利用の動機が生じにくい。
2つ目は、各部門のユースケースに踏み込んだ支援である。その好例としては、日清食品の取り組みがあるという。同社では、CEO自ら「より多くの時間を創造的な活動に」と狙いを明らかにした上で、部門別にプロンプト/テンプレート作成などにまで踏み込んだ生成AIの利用支援を実施。結果、導入の先駆けとなった営業部門において、生成AIの利用率を28%から68%まで引き上げることに成功していると林氏は話す。
「新たに用意された生産部門向けプロンプトの1つは、実に40行もの長さになります。これは素人がちょっと勉強しただけで作成できるレベルではありません。社内利用の拡大にあたっては、これほどの工夫や配慮が欠かせません」(林氏)
なぜ「アメとムチ」が重要なのか
そして、方策の3つ目が「アメ」と「ムチ」の両方を駆使することだ。すでに述べたとおり、生成AIの利用ではコストが生じるものも存在する。利用されない状況は、ムダな浪費を放置しているのと同然だ。そこでの利用推進に向けた施策が、利用権を取り上げる「ムチ」だ。人は、何らかの与えられた喜びよりも、それが奪われた失望はより大きなものとなりがちだ。
「当たり前に利用できていたものの利用が禁じられると、人は大いに慌てるもので、それを利用の動機に用います。コスト最適化の観点から、そのことを社内で明言して問題はないはずです。また、利用頻度の測定は生成AIのユーザー層の把握にも大いに役立ちます」(林氏)
生成AIは現在進行形で進化し続けており、各ツールの比較は現状、困難なのが実態だ。その中にの生成AIの導入は、すでに述べたツールの特性を理解し、選定した上での限られた部門から始めるのが望ましいという。
林氏は、現状ワークプレースへの生成AIの導入における“セオリー”は存在せず、得られる成果はユースケースやチューニングによっても大きく左右されると指摘した上で、市場と技術の双方で大きな変化も大いに考えられ、ツール選定は容易ではないが、もたらされる新たな価値のインパクトから、利用ノウハウの蓄積のために何らかの利用に踏み切るべきなのは明らかだと強調する。
「ユースケースの明確化をまずは最優先に、違う生成AIへの切り替えも視野に入れつつ前向きに活用を進めるのが現時点での最適解にほかなりません」(林氏)
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