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- 2024/08/16 掲載
国交省GISデータ「全公開」の衝撃、企業はどう活用すればいいのか?
国交省推進する「都市計画情報のデジタル化・オープン化」
都市計画とは、都市計画法に基づいて自治体が策定する街づくりのプランのことだ。土地利用(用途地域、地区計画など)や都市施設(道路、公園など)、市街地開発事業(土地区画整理など)に関する計画を総合的に定め、住民が住みやすく、働きやすい都市を目指す。街づくりは行政のトップダウンですべてがうまくいくような簡単なものではなく、実現には民間事業者の理解と協力が欠かせない。そこで、自治体が都市計画を対外公表することで、事業者側がそこにビジネス機会を見いだし、街ごとのエコシステムが形成されていくことが期待される。
ただ、これまで都市計画のフォーマットは自治体によってバラツキがあり、事業者側にとって街ごとの特性や強みを比較しにくい状況があった。
都市計画のデータ化は以前から少しずつ進められてきた。国交省はすでに2005年には「都市計画GIS導入ガイダンス」を策定。
そもそも、GISとは、地理的位置を手がかりに、位置に関する情報を持ったデータ(空間データ)を総合的に管理・加工、視覚的に表示し、高度な分析や迅速な判断を可能にするシステム。たとえば、地図上の要素 (都市や河川、道路、建物など)を表すデータを識別したり、地理的な関係性を可視化したりするほか、空間データを分析することができる。
ガイダンス策定を受け、各自治体で都市計画情報をGISデータに落とし込む地方自治体の動きが広がっていた。
ただ、フォーマットはやはりバラバラで、オープンデータとして公開されるデータはごく一部にとどまる。情報を紙ベースで整備・活用している自治体も依然として多い。
国交省はDXの一環で2023年に前述のガイダンスを抜本改定し、「都市計画情報のデジタル化・オープン化ガイダンス」を策定した。このガイダンスでは、(1)都市計画情報の基本となり、1/2500以上の縮尺でおおよそ5年ごとに作成される地形図「都市計画基本図」、(2)人口や産業、土地利用、交通などの現況を客観的・定量的なデータとして収集した「都市計画基礎調査情報」、(3)施設や市街地開発事業などの計画をまとめた「都市計画決定情報」──の3つに焦点を当て、デジタル化やオープンデータ化の進め方を示した。
都市計画GISデータを取得できるダウンロードサイトを公開
そして政府は今年7月、全国の自治体から収集した都市計画GISデータを取得できるダウンロードサイトを公開した。都市計画区域や用途地域、都市計画道路など、多岐にわたる都市計画GISデータが新たに公開され、都市計画の内容を幅広く知り、他のデータと組み合わせた分析もできるようになる。
実際の閲覧画面を見てみよう。まず、GISデータを読み込めるソフトウェアをインストールした上で、サイトに記載されている使用許諾条件などを確認し、ページ下部のチェックボタンにチェックを入れ、ダウンロードページにアクセスする。次に、閲覧したい都道府県でデータ形式を選択すると自動でダウンロードできる。ダウンロードファイルは市町村ごとに分かれており、閲覧時には言語を選択する。
Shape形式とCityGML形式の両方でダウンロード可能だが、国側は標準仕様としてcityGMLのほうを推奨している。cityGMLは仮想の3D都市モデルを記述、管理するための形式で、地理空間情報分野の国際標準化団体「OGC」(Open Geospatial Consortium)が国際標準として策定したものだ。Shape形式とは異なり、建物や土地、街路、橋梁など都市を構成するあらゆる要素を3Dモデル化できるのが特徴で、その形状や名称、種類、建築年などの情報を属性として付与できる。
ただ、国交省が2021年に実施した都市計画GISに関する調査によると、地方自治体が実際に導入しているのはShape形式が多く、国が示す方向性と自治体の実状にはまだズレがある。
国交省は「庁内GISもCityGML形式へ対応していくことが望ましい」としつつ、「Shape形式などでの整備・利用も問題ない」と従来の運用も一定許容する方針でいる。たとえば、国土地理院へ提出する都市計画基本図など、外部提供を目的とするデータはCityGML形式で整備する。庁内利用では他データとの連携など利便性を考慮し、無料の変換ツールでShape形式として活用する、といった具合だ。
では、具体的にGISデータはどのように活用できるのだろうか。 【次ページ】知られざるGISデータの活用方法とは?
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