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岸田内閣の支持率が低下する中、次の「選挙の顔」として名前が挙がっているのが、上川陽子外務大臣だ。「胆力のある政治家」としてこれまで手腕を発揮してきた上川氏だが、その一方で、岸田政権をさらに窮地へと追い込んだ政策の元凶になっているという。ポスト岸田として取りざたされている上川氏は、果たして日本経済を正しい方向に導くことはできるのか、詳しく見ていこう。
次の選挙で求められる「非連続性」
上川陽子外務大臣が、完全に「レームダック(死に体)」と化した岸田文雄首相の「次の首相」として名前が挙がることが多くなった。
立憲民主党の枝野幸男前代表が、3月中旬、さいたま市で行った講演では、「岸田文雄首相で解散したら、自民党は自滅だ。首をすげ替えて総選挙になるのは間違いない」「次の衆院選の相手は初の女性首相だ」として、有力候補に「上川陽子」氏を挙げた。産経新聞でも上川氏は絶賛されている。
「時事通信が先月配信した世論調査によれば、内閣支持率も政党支持率も20%を割ったままで、低迷から抜け出せない状態だ。これを立て直して新たな展開を生み出すのに、上川さんほど適した人材はいないように私には思える」
「ひとりの日本人として、私は上川首相の誕生を切望している」
枝野氏の発言は、異次元の子育て政策をブチ上げたものの、少子化は止まることはなく増税に走った岸田政権への失望。そして終わりの見えない自民党の裏金問題など、岸田首相は総裁選までに解散総選挙は打てず、また総裁選に出馬することはないだろう、という思いから出たものだろう。
では、次の首相、次の自民党総裁をどうするのか。次の首相は、任期満了が近づく衆議院をすぐにでも解散することになり、いわば「選挙の顔」だ。そのとき、少しでも新鮮味のある人物に就任してもらう必要がある。
そこで、永田町で流布されているキーワードが「非連続性」だ。つまり、岸田首相と同じような人を首相にしては選挙で戦えないということである。
そうなると、政策的に、増税や無意味だった少子化対策の撤回を掲げる人が就任すればいいのではと考えてしまうのだが、永田町の常識からすれば、政策はわかりにくいので、性別を変えることで新味を出せるという思惑だという。
そこで、上川氏の注目が高まっているのだが、彼女は、岸田文雄首相と同じ政策集団(現在、形式的に派閥は解散)出身である。同じような政策を続けて、日本は本当に大丈夫なのだろうか。
「胆力のある政治家」としての上川氏
上川氏の名前が挙がるもう一つの理由は、産経新聞に代表される「胆力のある政治家」としての上川氏だ。オウム真理教の元教祖、麻原彰晃(本名・松本智津夫)死刑囚ら7人の死刑を、当時法相だった上川氏は粛々と執行したのだ。
筆者は、政治的パフォーマンスではないのかと疑って、上川氏の国会での発言を全部読んだが、むしろ、「胆力のある政治家」であることが確認できた。
たとえば、2000年(平成12年)10月10日、
法務委員会での質疑だ。当時は、自民党ではなく「21世紀クラブ」という保守系会派に所属していた。
上川氏は「少年凶悪犯の逆送率が低い」という実態に怒りを示した。逆送とは、日本の少年法に関連する用語で、罪を犯した少年が、その行為や状況に鑑みて少年法に基づく保護処分ではなく、一般の刑事手続きによる処罰が適切と判断される場合に、少年審判から一般の刑事裁判所へ「逆送」されることを指している。
つまり、少年であっても、事件によっては成人と同じように扱うことである。当時、凶悪犯ですら4.4%しか逆送していない現実を法改正して変えよと迫ったわけである。その後、法改正を受け、逆送率は大幅に増えることとなった。
このあたり、やはり「胆力」があるというのは正しい評価であろう。自民党関係者からは、現在の外務大臣としての職務について「核なき世界を訴える国連や地球温暖化など地球規模の課題解決には、積極的な姿勢を見せる。
しかし、アジアの台湾情勢をどう解決するか、米国との2カ国関係をどうしていくか、など具体的な問題の解決には消極的だ。官僚の説明にいっても、わかっているのか、わかっていないのかがわからないまま、話はあまり聞いてもらえない」という声が漏れる。
この証言の評価はさまざまだろうが、永田町には「官僚の声をいちいち代弁しないのはいいことだ」という人もいる。これも胆力といえば、胆力だろう。この辺は、公正に評価をしておこう。
では、課題解決や増税の問題についてはどうだろうか。まず、繰り返しになってしまう人もいるので、前提を簡潔に述べる。
【次ページ】岸田政権をさらに窮地に追い込んだ「ある政策」
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