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- 2006/11/30 掲載
【CIOインタビュー】 東京全日空ホテル-外資系高級ホテルの進出ラッシュに戦略的IT投資で対抗(2/2)
【オンラインムック】経営革新を支える日本のCIO
東京全日空ホテルにおいて、早急に改善すべきもののひとつとして、スタッフに対する連絡/指示の迅速化があった。それまでスタッフは、スティック型のポケットベルを携行し、呼ばれたら最寄りの電話に走っていって応えなければならなかったため、ひどいときには呼んでから応えがくるまで3分とか、2分も呼んで結局応答がこない、というときもあった。これでは、顧客からの問い合わせに応えるには遅すぎる。 こうした問題に対応するため、東京全日空ホテルでは420台のPHSを導入した(NECから館内PHSとして「Passage」、IP-PBX「APEX7600i」)。同時に196台のPHS基地局を設置した。もちろん、ただPHSを導入しただけでは業務改善につながらない。このPHSでは、宿泊状況、宴会の予約状況、簡単な宿泊客情報などをウェブベースの画面(ブラウザ)で参照できるようになっている。情報の共有化が図られているわけだ。
このPHSはホテルのスタッフのみならず、業務委託者も携行するため、各人の権限に応じて引き出せる情報を限定している。現在は、その権限のレベルをA群、B群、C群の3つに分けている。A群では、すべての情報を閲覧、使用でき、すべての情報を取得することができる(270台強)。B群は、主に客室のメイド担当が携行し、その部屋がチェックインしているのかいないのか、部屋の状況がわかるようになっている(30数台)。残りのC群は、通話さえできればいいというもので、ブラウジングはできない。
もしPHSを紛失してしまったときに、悪用されることはないのだろうか。高橋氏は、そのようなことがあった場合、「サーバーを操作して端末からのブラウジング操作ができないようにすることや、全館のPHSパスワードを瞬時に変えることができる」ので心配はないと言う。
このような情報端末システムは、PHSシステム以外にもある。実際、ある企業からは「FOMAのほうがスピードも速くて機能もよい」と提案されたという。それでもPHSシステムを選択した理由として、高橋氏は次のように説明してくれた。
「画像などをダウンロードするわけではなくテキスト情報のみでかまいませんので、通信スピードも要求されません。また、コストが全然違います。1台のFOMAでPHSが2、3台買えてしまう価格でした。」
導入の成果はどうだったのかというと、PHSシステムの導入にともない、時間のロスも減ったという。「1日にポケットベルで呼ばれる回数などを試算したことがあって、だいたい1日に1時間くらいのロスを短縮できました」(高橋氏)。
東京全日空ホテルの客室に装備されたインターネット環境は、100Mbpsの光ファイバーだ。ファイアウォールやIDP(不正侵入検知)機能を統合したスイッチ製品「Inkra 4000」も導入している。各客室、宴会場などを仮想的に独立したものとして扱い、ファイアウォール、ウイルス検知、不正アクセスの検知を1台で利用客に提供することが可能だ。
このような優れた製品だが、思わぬ不都合もあったという。「このInkra4000を導入したことによって、高いセキュリティをお客様に提供できたのですが、セキュリティが強固すぎて、ときに諸刃の剣になることがありました」と高橋氏。ほかのホテルのセキュリティ機器であればできたこと、たとえば宿泊客がVPNを行う場合、ほかのホテルでは通信できたことが同社ではできないと言われたことが何度かあったという。
「導入から約1年を経てお客様の声を聞きながら必要な設定をし、一定のセキュリティを保ちながらも通常の通信を可能にすることができました。またポート設定もそのお客様のためだけにカスタマイズすることも可能です。そういうことでも、顧客満足度は上げられるのではないかと思います」(高橋氏)。
これは、IT技術だけで達成できるものではない。清田氏は、次のように指摘する。
「コミュニケーションが一方通行ではいけません。やはり、血が通っているところが感じられないと。ITとかいうとそればっかりで一方通行になってしまいがちですが、お互いのやりとりというか、相互のコミュニケートが必要なのだなという感じがします。」
■データ
株式会社エーエヌエーホテル東京(東京全日空ホテル)
代表取締役社長 太田 正
設立年月日 1985年
資本金 4,000万円(平成17年3月31日現在)
売上高 145億円(2005年3月期実績)
本社所在地 〒107-0052 東京都港区赤坂1丁目12番33号
従業員総数 630名(2005年4月1日現在)
電話番号 03-3505-1111
ホームページ http://www.anahoteltokyo.jp/
■事業内容:
・ホテル業
今回の記事は、弊社刊行「日本の情報システムリーダー50人」(2006年4月発行)に掲載されております。 その他の企業の記事は、同書でご覧頂けます。
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