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IT化で医療過誤を減らせるか
今までの電子カルテパッケージになかったものとして、黒部市民病院ではメール機能を付加している。これにより、医師などが病気に関して情報を交換したり、患者の状況を伝えたりすることが簡単になった。もうひとつ「タスクリスト」という、ログイン後にレポートを表示する機能を加えている。これについては、「病理部に依頼した患者の顕微鏡検査などの結果がすぐにわかる」と好評だ。
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黒部市民病院 関節スポーツ外科医長 今田光一氏
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これまでは、検査の結果が出て予想外に悪性だったとわかっても、紙の報告書が関係各所を回っていたため、それが医師の手元に届くまでに時間がかかっていた。さらに、医師がその情報をすぐに見るかというとそうではない。一方、従来の電子カルテでは逆にこの紙の報告書も来ないため、次の外来で患者が来院したときに電子カルテを開いて初めて気づくといったケースもあり得る。これをタスクリスト機能としてもたせたことで、必要時にすぐに患者に連絡できるようになった。こういったシステム化によって、対応が迅速化されるだけでなく、医療過誤も防止できると期待されている。
「たとえば、クリニカルパスでオーダーした薬は、患者の手首や薬液ボトル、スタッフの名札に張られたバーコードシステムと携帯端末に連動しています。オーダーにない薬を使おうとすると、アラートが出るので安全面でもいいですよ」と今田氏は言う。
そのほか、今田氏が開発したIT機能として「チーム管理ツール」がある。これは、感染予防、転倒予防、褥瘡予防、栄養管理などを、院内の専門チームで統合的/効率的に行うためのユニークな機能で、病棟や科の壁を越えて病院全体での医療の質を高めるために、IT化の利点を最大限利用したものである。クリニカルパスシステムと同様、全国から多くの見学や問い合わせがある。
今田氏はシステムの限界についても強調する。
「クリニカルパスやIT化により、患者に95点の手術を施せば、95点の成績で退院させることができます。これらがないと、95点の手術が合併症や医療過誤により40点になってしまうかもしれない。しかし、50点の手術を90点にすることはできません。大事なことは、IT化で医師の手術や検査技術がうまくなったり、看護師が優しくなったりするわけではない、ということです。技術の研鑽や、患者さんを安心させようとする努力が必要なのは当然のことであり、医療ではこれが大前提。医療におけるITの便利さと限界を充分に理解し、IT本来の力を充分に発揮させることができれば、真に医療の質を高めることができるでしょう。」
理想型にはまだまだ遠いというが、ITと医療現場がうまく融合していくことにより、患者にとって信頼できる質の高い医療を提供できるようになる。医療のITというと、医師の間での情報共有に目が行きがちだが、今後はその情報をどこまで患者にオープンにしていくかが鍵になる。情報公開により、患者が自分の病気や治療についての知識を事前に得ることでき、医師や看護師ら病院のスタッフだけでなく、患者自身も医療に参加できる。こうした取り組みが、医療過誤をなくす糸口にもなっていくかもしれない。
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■データ
黒部市民病院
代表者名 病院長 高櫻英輔
設立年月日 1948年1月1日
所在地 〒938-8502 富山県黒部市三日市1108-1
従業員総数 594名(2006年1月1日現在)
電話番号 0765-54-2211
ホームページ http://www.med.kurobe.toyama.jp/
■事業内容:
・自治体病院の運営
今回の記事は、弊社刊行
「日本の情報システムリーダー50人」(2006年4月発行)に掲載されております。
その他の企業の記事は、同書でご覧頂けます。
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