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- 2023/08/04 掲載
ほんとうの不況はこれから? アフターコロナの不動産市場を待つ「バブル崩壊」
連載:どうなる? これからの日本の不動産
不動産への影響は「これからが本番」
東京の街を歩くと、マスクをしてない人の割合が体感で5割以上になった。私たちの意識の中では「新型コロナは終わった」という気持ちが広がっている。しかし、約3年にわたるコロナ騒動の影響はあちらこちらに色濃く残っている。私がアレコレとモノを言うことにしているマンションや不動産市場においても、コロナの爪痕はクッキリと残っている。
最も如実にそれを表しているのはオフィスマーケットであろう。コロナ騒動が始まる前の2020年1月、東京都心のオフィスを専門に仲介している大手の三鬼商事が発表する東京ビジネス地区のオフィス空室率は1.24%で、平均賃料の坪単価は2万2,448円だった。それが直近の2023年6月では空室率が6.48%で平均賃料の坪単価は1万9,838円だ。空室率は5倍近くに上昇し、賃料は明らかに下落している。これでは、オフィスマーケットは「冬の時代」に突入していると考えざるを得ない。
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その原因は、一言で言ってしまえば「テレワークの普及」である。
東京の人混みは、一見コロナ前に戻ったように見える。しかし、それは100%ではない。コロナ前に比べてテレワークの割合は確実に増加している。「全国、どこで勤務してもOK」を打ち出したNTTが、コロナ終了でその方針を変更したとは聞かない。
私の感覚では、知的水準の高い企業ほどテレワークの比率が高まっている。たとえば、私の知り合いの弁護士は、裁判所に行く回数が劇的に減ったという。遅れに遅れていた日本司法のIT化が、コロナによって一挙に世界最先端レベルにまで進捗(しんちょく)してしまったのだ。民事裁判の進行はほとんどテレワークで行われているそうだ。
オフィス面積への需要縮小は、いずれオフィスビルそのものの不動産価値に波及せざるを得ないだろう。先行指標として注目される東証リート指数はコロナショックでいったん下落。2021年の7月まで上昇した後、下落傾向を示している。
これは日本だけの傾向ではない。アメリカでは商業用不動産の価格下落が、第二のリーマンショックにつながるのではないかという不安が、日に日に強まっている。
約3年にわたって続いた新型コロナ禍は人類に多くの厄災をもたらした。しかし、不動産市場に対するマイナスのけん引力を発揮するのは、これからが本番ではなかろうか。
そのトップバッターになりそうなのが、アメリカや日本も含めた世界のオフィスマーケットなのである。
追い打ちをかける「2023年問題」とは
先に示した三鬼商事が毎月発表するレポートの対象としているのは、東京都心の超A級のオフィスである。そういう物件は短くて5年、長ければ10年以上の年月をかけて開発・建設される。つまり、コロナ騒動の何年も前から計画されていたオフィスが、この後も続々と完成していくのだ。特に今年は「2023年問題」と呼ばれる、オフィス供給過剰の年である。東京都心で2023年中に新たに供給されるオフィス床は、大規模ビルに限っても例年の2倍以上の規模になる128万平方メートルだという。ただでさえテレワークの普及による需要の減退に悩まされていることに加え、この大量供給は市場のバランスを大きく崩しかねない。 【次ページ】新築マンション市場はなぜ「絶好調」なのか
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