連載:キャラクター経済圏~永続するコンテンツはどう誕生するのか(第12回)
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ハリー・ポッターと言えば、英国出身のJ.K.ローリング氏が30歳(1995年)の時に書き上げた、その後30年にわたって世界を席巻する傑作だ。小説としては累計6億部と人類史上最も売れた小説シリーズの1つでもある。映画としても、ファンタスティック・ビースト(FB)シリーズ含めた全11作は、『マーベル』『スターウォーズ』『スパイダーマン』に並ぶほどの興行収入を誇る。今回は、そんなハリー・ポッターシリーズが生み出してきた衝撃の経済効果を解説する。
ワーナーが仕掛ける“ハリポタ頼み”の逆転戦略
2023年6月16日、としまえん跡地にオープンする、映画「ハリー・ポッター」をテーマにした屋内型施設「ワーナーブラザーズ スタジオツアー東京 ‐メイキング・オブ・ハリー・ポッター(WBSTT)」が耳目を集めている。
もともと2012年にロンドンで設立された同パークは、これまで1700万人もの参加者を集め、9.75億ドル(約1,350億円)の売上を生み出してきたワーナーの看板コンテンツである。今回、その初めての“海外展開先”として日本が選ばれた格好だ。同パークに出資したのはワーナーブラザーズグループ(以下、ワーナー)、西武鉄道、伊藤忠商事、芙蓉総合リースだ。
趣向は異なるが、ハリー・ポッターの世界を再現した施設やアトラクションと言えば、2014年7月にすでにUSJが「ウィザーディング・ワールド・オブ・ハリー・ポッター」を設立している。
同施設の建設費は450億円、それ自体がテーマパーク1個分とも言いえる規模感の大型アップデートを行い、USJの来場者は激増、経済効果は5.6兆円に上る。ほかの施策効果と相まってUSJ年間来場者数は「1010万人(2013年)」→「1494万人(2017年)」と、4年で1.5倍にまで伸びる結果となった。それほどまでにハリー・ポッターというIPの影響力は大きい。
ご存じのように世界テーマパーク市場の半分を握るディズニーは、世界に10カ所以上ものパークを展開、年間約1.5億人ものユーザーを集める巨大メディア企業に成長しており、続くユニバーサルもUSJを含めた世界5カ所で年5000万人を集める(各グループの2019年の来場者数から筆者算出)。
かたやワーナーとなると、豪州の「ワーナーブラザーズ・ムービーワールド」やマドリードの「Parque Warner Madrid」などのテーマパークを合わせても年間の集客数は数百万人足らず(2019年の来場者数から筆者算出)。いまだディズニーには「2桁足りない」状態なのだ。また、これまでハリー・ポッターという自社のIPを競合ユニバーサルのテーマパーク(USJ)に展開するなど、後塵を拝する結果となってきた。
そのため、日本市場に投入するWBSTTの成功如何は、その後のワーナーとしてのテーマパーク戦略の成否にも通じるのだ。すでにハリー・ポッターのUSJでの展開で大きな実績を上げているからこそ、強い期待値が込められていることは想像に難くない。
とはいえ、あらゆるIPを抱えたテーマパークを形成するディズニーやユニバーサルに対し、ハリー・ポッターシリーズだけで勝ち目はあるのだろうか。ワーナーがハリー・ポッターというIPにここまで懸ける理由を探るべく、ここからは、映画ハリポタシリーズの各作品がどれだけ売上を出したか、そして映画ハリポタシリーズはどれだけ経済効果があったか(1つの映画で、どれだけ書籍・MD・DVDなどの派生商品が売れているか)を見ていきたい。
【次ページ】映画ハリポタシリーズの売上を解説、一番儲けた作品とは?
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