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- 2021/07/19 掲載
なぜ、任天堂は儲かるのか? 歴代ゲーム機の販売台数から分かる「戦略転換」の大成果
【連載】エンタメビジネスの勝ち筋
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任天堂の戦略転換、「デジタル流通の収益獲得」とは
2017年にNintendo Switchが発売されて以降、任天堂が決算説明会などで宣言しているのが、「デジタル流通での収益獲得」です。図表1は、任天堂のデジタル売上高の推移(2019年度から2020年度)です。FY21Q1は、パッケージと同時にリリースされたダウンロード版ソフトが、任天堂の全ゲームソフト合計で683億円と年間の売上を牽引しました。
特に、2020年3月に発売された「あつ森」が大きく貢献しています。定額サービスである「Nintendo Switch Online(以下、NSOL)」の売上も年間を通じ安定した収益獲得をしています。今や、ゲーム専用機のソフト売上高に占めるデジタル売上高の比率(デジタル売上高比率)は、FY21Q1で5割を超え、クリスマス商戦を含むQ4でも49.6%と5割に迫っています。
任天堂は長い歴史の中で、ゲーム機とゲームソフトという、形のある製品(フィジカル)を大規模に販売することで成長してきました。こうした企業がデジタルでの収益獲得に移行する際には、フィジカル製品とのカニバリゼーションが大きな懸念となります。
特にゲーム機は、サプライ品モデルと呼ばれる「本体を安く売り、補完品の追加購入で儲けていく」ビジネスモデルの典型のため、デジタル併売をする場合、フィジカルのソフトとデータダウンロードのバランスを検討しながら本体の価格設定を行う点に難しさがあります。こうした壁に直面しつつも任天堂が販売しはじめた「Nintendo Switch」の売れ行きはどのようになっているのでしょうか。
戦略転換を占う、Nintendo Switchの売れ行き
Nintendo Switchは、歴代のゲーム機と比較をすると高めの希望小売価格ですが(図表2)、「自宅で大画面のテレビに投影できる」「外に持ち出せる」、「1人でも多数でも遊べる」といった従来のゲーム機にはない価値を装備していて毎年右肩上がりの売上を記録しています。また、Nintendo Switchのゲーム機売上台数と、デジタル売上高のグラフを比較してみると、どちらも毎年1Qから4Qまで順調に累計を伸ばしていること、ゲーム機とデジタルの収益に相関性があることが分かります(図表3)。
図表3の赤い棒グラフはNSOLの年度ごと会員数累計ですが、こちらも毎年順調に伸びています。Nintendo Switchは、「あつ森」をはじめ、「スーパーマリオカート8 デラックス」「スーパーマリオ 3Dコレクション」といったミリオンセラータイトルもデジタル売上高の伸びに大きく貢献していると考えられます。こうした商品開発能力が、既存製品とデジタル製品の共存を支えていると言えるでしょう。
なお、Nintendo Switchの売れ方には、過去の任天堂のゲーム機とは異なる現象が見られます。ここからは、ゲームキューブ(2001年発売)、ゲームボーイアドバンス(2001年発売)、Wii(2006年発売)、ニンテンドー3DS(2011年発売)、とNintendo Switch(2017年発売)を比較しながら、違いを見ていきましょう。
【次ページ】ゲーム機の定説を覆す…Nintendo Switchは何が凄いのか?
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