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  • 2024/02/14 掲載

「オワコンだったはず」のメタ、利益200%増を叩き出した納得の理由

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テック大手の決算が出そろった。今回の注目の的は、前年同期比で利益が200%増となったメタだ。株式市場も大きく反応し、株価は一時20%も急騰する場面があった。しかし、マーク・ザッカーバーグCEOが社名変更までして始めた「メタバース」はあまりぱっとせず、X(旧Twitter)の代替アプリとして注目された「Threads」もその後あまり話題にのぼらなくなってきた。メディアからも数多くの批判にさらされていたメタがなぜここまで急伸したのか、その理由を探ってみたい。
執筆:細谷 元
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なぜメタがここまで急伸したのか?
(Photo:Sergei Elagin / Shutterstock.com)

増収増益、四半期利益は3倍に

 米テック大手の2023年10~12月期と通年決算が出そろったが、今回特に注目されたのはメタだ。営業利益率が大幅に上昇、また四半期利益が前年同期比の3倍に拡大した。これを受けて時価総額ですでに1兆ドルに達していたメタの株価はさらにそこから一時20%以上急騰するなど市場でも大きな反応を招いた。

 いったいどのような決算内容だったのか、まずその概要をみていきたい。

 2023年10~12月期の四半期決算では、売上(Revenue)が401億1,100万ドルとなり、前年同期の321億6,500万ドルから25%増加。これに対し、費用は237億2,700万ドルとなり前年同期の257億6,600万ドルから8%減となった。売上増と費用減のダブル効果で、営業利益は前年同期の63億9,900万ドルから2倍以上となる163億8,400万ドルに拡大、これに伴い営業利益率も前年同期の20%から41%に上昇した。

 営業利益から法人税などを差し引いた純利益(Net Income)は140億1,700万ドルと前年同期の46億5,200万ドルから3倍(201%増)に拡大した格好だ。

 2023年通期でも売上は1,349億200万ドルと前年の1,166億900万ドルから16%増加、一方、費用は881億5,100万ドルで前年の876億6,500万ドルから1%増にとどまった。営業利益は467億5,100万ドルと前年の289億9,400万ドルから62%の増加を記録。このほか2023年の営業利益率は35%と前年の25%から10ポイント上昇、また純利益も390億980万ドルで前年の232億ドルから69%の増加を記録した。

 さらには上場来初めて配当を実施することを発表。1株あたり0.5ドルを支払う。

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好業績を支えたのは皮肉にもメタバース事業ではない
(Photo/Shutterstock.com)

「効率化の年」で実行されたレイオフとオフィス閉鎖

 メタの決算で注目点の1つとなるのが、どのようにして純利益201%増を実現したのかという点だ。

 本業であるネット広告事業の拡大が寄与したのは間違いない。Facebookの利用者は6%も増加し、Instagramのリール、メッセージ誘導広告などの事業は改善した。

 こうした中でも特に大きな影響を及ぼしたのが、マーク・ザッカーバーグCEOが2023年初めに宣言していた「year of efficiency(効率化の年)」だ。これを実現するためにさまざまなコスト削減の取り組みが実施され、それらが奏功したという事実は無視できないだろう。

 費用削減は大きく、レイオフとオフィス閉鎖によって遂行された。2023年通年でみると、メタがレイオフを遂行するために費やした費用は11億7,000万ドル、オフィス閉鎖に費やしたコストは25億600万ドルに上る。これは決算報告における「Severance and Other Personnel Costs」、そして「Facilities Consolidation」の項目で確認することが可能だ。

 レイオフでは通常、解雇される人員に対し手当が支給される。この手当関連のコストが「Severance and Other Personnel Costs」に計上されているのだ。またオフィス閉鎖では、主にリース契約の解除に伴い発生したコストなどが計上される。

 2022年末時点におけるメタの社員数は8万2000人以上だった。しかし「year of efficiency」によりレイオフが実行され、2023年末時点における社員数は6万7317人と前年比で22%減少した。約1万5000人がレイオフされた計算だ。

 上記「Severance and Other Personnel Costs」に計上された11億7,000万ドルをレイオフされた約1万5000人で割ると、7万8,000ドル(約1,200万円)という数字が算出される。これはレイオフで支給された解雇手当の平均額として考えることができる。メタで規定されている解雇手当のルールには、基本給に対して16週間分の手当のほか、勤続1年あたり2週間分の手当、さらに保険、イミグレーションサービスなどが提供されるとある。

 仮に基本給を15万ドル、勤続年数5年とした場合、16週間分の手当は4万6,000ドル、勤続年数に応じた支給額は約2万9,000ドル。合計は7万5,000ドルとなり、上記の平均推計値とほぼ同じ額になる。

 メタでの平均基本給を15万ドル(約2,200万円)とした場合、2023年のレイオフで同社は11億ドルのコストをかけ、年間22億5,000万ドルの人件費節約を実現したことになる。基本給以外にもさまざまなコストがかかることを鑑みると、それ以上の節約効果が見込めるはずだ。

 実際メタの費用は、2022年10~12月期の257億6,600万ドルから2023年10~12月期には237億2,700万ドルと20億ドル減少。レイオフが2023年1~3月期と4~6月期に集中したことを考慮すると、その人件費節約効果が下半期になってあらわれたと考えられる。

 メタでのレイオフに関して、どの部署・役職が影響を受けたのか、いくつかの報道がなされている。ブルームバーグ2023年2月の報道によると、メタでの組織再構築に伴い、マネジャーなど多くの管理職クラスの人材が影響を受けるといわれていた。

 影響を受けるマネジャーの数は1000人に上るという別報道もあった。またエンジニア職に関しては、WhatsApp部門に比べ、インスタグラム部門での影響が大きかったほか、メタバース関連の役職におけるレイオフも進められたという。

 オフィス閉鎖に関する情報としては、2023年9月に報じられたロンドン中心部のオフィス解約のニュースなどが挙げられる。ロンドンのオフィス解約に伴い、メタは1億4,900万ポンドを支払ったといわれている。ニュースにはならないが、このほかにもオフィス閉鎖が進められていると推察され、2023年は通年で計25億600万ドルが費やされた。 【次ページ】増収増益のグーグルとメタ、費用削減で大きな差
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