- 2024/06/22 掲載
アングル:香港へ向かう中国富裕層マネー、制度緩和で加速
[香港 17日 ロイター] - 中国の富裕層が、香港の保険商品や定期預金への投資を急増させている。本土の経済と不動産セクターの低迷や、人民元相場の下落から財産を守るのが狙いだ。
この傾向は昨年から顕著だったが、中国が2月に「クロスボーダー・ウェルス・マネジメント・コネクト(越境理財通)」制度の投資枠を拡大したことで、ここ数カ月は加速している。
香港の金融機関は、この機を逃すまいと奔走。民主化運動や中国の統制強化、地政学的な緊張によって失墜した香港の金融センターとしての地位を蘇らせる一助になりそうだ。
HSBCの香港幹部、マギー・Ng氏は「中国には富裕層が約4500万人おり、海外投資や教育、自己防衛策をますます求めるようになっている」とし、「中国本土以外での資産運用需要は増えている」と語った。
2021年末に導入された越境理財通は、香港と隣接する南部広東省の9都市の住民に、香港とマカオの銀行が販売する投資商品の購入を認めるもの。同様に、香港とマカオの住民も中国本土に投資できる。
中国人民銀行(中央銀行)のデータによると、この制度を使った中国本土投資家による香港およびマカオへの投資は3月に130億元(18億ドル)と、2月の8倍近くに膨らみ、月間最高記録となった。
さらに4月は前月比70.5%増の223億元となった。一方、香港とマカオの住民による中国本土への投資はわずか1400万元で、制度導入時からほぼ変わっていない。
HSBCでは昨年、香港での新規口座開設が新型コロナウイルスのパンデミック前の2019年に比べて3倍以上に増えた。Ng氏によると、中国本土の富裕層が中心で、今年第1・四半期も勢いは続いた。
資産運用会社の幹部らによると、一般的な富裕層だけでなく、中国と東南アジアの超富裕層も香港で投資を目論んでいる。UBSのアジア太平洋資産運用幹部、L・H・コー氏は「昨年は(潜在的なファミリーオフィス顧客からの)問い合わせが前年比で約85%増えた」と述べた。
問い合わせの60%以上は、香港にファミリーオフィスのような法人を設立することに関するもので、主に中国の顧客だという。
<現金を持て余す>
中国は依然として資本統制が厳しく、個人は年間5万ドルまでしか送金が認められていない。しかし2月に越境理財通の投資枠が従来の3倍の300万元に拡大されたことで、香港への資金流入に拍車がかかった。
業界幹部らによると、香港の資産運用会社は当局に対し、制度をさらに緩和するよう働きかけている。
香港金融管理局(HKMA、中央銀行に相当)はロイターへの声明で、「業界からのフィードバックを適切に考慮し、必要に応じて追加的な促進策を検討し続けていく」と表明した。
香港の一部銀行は流れに乗ろうと、越境理財通の一環として年利最大10%の定期預金の提供を始めた。中国本土の銀行では、定期預金の利率は2%前後だ。
香港の保険会社も本土顧客からの需要が急増している。
一方、中国本土では貯蓄の選択肢が限られ、長期債の利回りは過去最低水準に下がっている。人民元相場は2008年以来の最低水準で推移し、株式と不動産のリターンも低落した。
深センでインターネット企業を経営するワンさん(51)は「本土の多くの人々はキャッシュを持て余している」と語る。ワンさんは昨年末、本土の怪しい投資商品で大損を被ってから当座預金に現金を遊ばせたままだが、今は越境理財通について勉強中だという。
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