- 2024/06/21 掲載
焦点:財政再建、「25年度PB黒字化」明記も玉虫色 骨太きょう決定
[東京 21日 ロイター] - 政府がきょう決定する経済財政運営の指針(骨太方針)は、3年ぶりに財政目標の年次を明記し、先送りの過去から決別する姿勢を強調する。日銀の政策転換で「金利のある世界」が現実味を帯びる中、不退転の覚悟をみせる格好だが、骨太に盛り込む2030年度までの経済・財政新生6カ年計画は玉虫色の内容で、健全財政を続けられるかは見通せない。
<PB先送りの過去>
ロイターが確認した骨太の最終案によると、財政目標である国・地方の基礎的財政収支(プライマリーバランス、PB)について、原案に沿って「2025年度の黒字化を目指す」と明記した。
菅義偉前政権から目標を引き取った岸田政権は25年度の黒字化目標を堅持する姿勢そのものは崩していなかったが、22年度以降は、自民党内の積極財政派に配慮して骨太への明記を見送っていた。岸田政権としては初めて骨太に明文化することになる。
PB目標は先送りの連続だった。小泉純一郎政権が2006年の骨太で掲げた11年度の黒字化目標はリーマン危機で棚上げされ、政権交代を果たした民主党(当時)が「遅くとも20年度」と、達成時期を後ろ倒しした。
安倍晋三政権はPBを20年度までに黒字化させる目標を国際公約に掲げたが、衆院選前の17年9月に先送りを表明。翌年に、25年度とする目標に置き換えた。
自民党政調会長だった当時の岸田首相は選挙公約を巡り、安倍氏と頻繁に協議していた。「選挙を前に年次を示すことはできなかったが、20年代など幅を持たせる腹案もある中で岸田首相は責任ある姿にこだわっていた」と、当時を知る関係者1人は語る。
「これまでは目標時期が迫れば先送りという状況だった。25年度が近づくなか、年次を記載する意義は大きい」と、別の政府関係者は言う。
<赤字なら債務発散>
もっとも、25年度以降の財政目標は心もとない。25年度から30年度までの新生計画では、人口減少時代を迎える中でも1000兆円経済を見据えた政策を散りばめたが、財政の数値目標は示せなかった。
骨太では、計画期間中も黒字基調そのものは「後戻りさせない」とし、「債務残高対GDP(国内総生産)比を安定的に引き下げることを目指す」と記す。
同時に「経済あっての財政」との基本姿勢は変えず、歳出を正当化してきた「(財政目標により)状況に応じたマクロ経済政策の選択肢がゆがめられてはならない」との文言は残る。27年度までは「歳出改革努力を継続する」とうたう半面、歳出の目安を具現化する議論は進んでいない。
内閣府によると、骨太の決定に先立つ経済財政諮問会議で「目安に沿った予算編成はPBの安定化に寄与してきた」との声も出た。一方、社会保障費の抑制には「インフレ局面では(目安が)過剰な制約要因になる」と一部与党からの風当たりが強く、「25年度目標を明記する代わりの折衷案」として歳出のキャップを外した、という。
日銀が今後、利上げ局面に入れば長期金利の上昇は避けられない。専門家の間では「PBが赤字基調から脱せず、さらに長期金利が名目成長率を上回れば国債利払いが雪だるま式に膨らみ、政府債務残高の発散が懸念される」(SMBC日興証券の宮前耕也シニアエコノミスト)との指摘がある。
財政への信認が揺らげば金利上昇を通じてかえって景気を冷やし、金看板である「次年度以降の賃上げ定着」にも影を落としかねない。
(竹本能文、山口貴也 編集:久保信博)
PR
PR
PR