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  • 2022/09/09 掲載

アステラス製薬副社長に聞くDX、人×AIの共創で「成果1000倍」を実現

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アステラス製薬は2021年5月に、2025年度までの「経営計画2021」を発表。この経営計画2021の実現に向けて、アステラス製薬がどのようにデジタルトランスフォーメーション(DX)に取り組んでいるのか。戦略と方針、具体的な取り組み事例、DX人材に対する考え方を、代表取締役副社長 経営戦略担当(CStO)の岡村直樹氏と情報システム部長 須田 真也氏に聞いた。
聞き手、構成:編集部 山田 竜司 執筆:畑邊康浩

聞き手、構成:編集部 山田 竜司 執筆:畑邊康浩

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アステラス製薬
代表取締役副社長 経営戦略担当(CStO)
岡村 直樹氏

中期経営計画達成の要にDXを位置付ける

岡村直樹氏(以下、岡村氏):アステラス製薬は、「変化する医療の最先端に立ち、科学の進歩を患者さんの価値に変える」というビジョンを掲げています。これを実現するための道筋が「経営計画2021」です。

 この「経営計画2021」では、3種類の目標を掲げています。成果目標、戦略目標、組織健全性目標の3つです。

 成果目標とは、経営状態を投資家や株主から見て分かりやすい定量的な指標で表したもの。戦略目標は、成果目標を達成するために必要な戦略的な実施項目です。

 組織健全性目標は、やや特殊な位置付けになります。今回、成果目標で掲げた内容は今までの延長線上で達成できるレベルのものではありません。これを実現しようとすると、アステラス製薬が今まで以上にイノベーティブかつディスラプティブな組織、勇気を持った従業員の集合体になる必要があります。そのような組織が健全であると定義して、皆で協力して向かっていける組織の状態目標が、組織健全性目標です。

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デジタルトランスフォーメーションに取り組む理由
(出典:アステラス製薬)

 これら目標の達成を確かなものにするために必要な3つの事柄を社内的には「Critical enablers(達成の要)」と呼んでおり、ペイシェント・セントリシティ、バリュー・ジーンに並んで、デジタルトランスフォーメーション(DX)を達成の要の1つとしています。

 アステラス製薬におけるDXは、戦略目標と組織健全性目標、それぞれに対して横串を差していくような位置付けです。デジタル技術の進歩を大いに活用し、DXを加速していくことによって、戦略目標で掲げたことや組織健全性を高めていくことに貢献していく狙いです。

DXで「人だからこそ」できる仕事に注力

岡村氏:私たちが定める「Digital Ambition in 2025」中に、DX Visionというものがあり、「デジタル革新を加速して科学の進歩を患者さんの価値に変える、ワールドクラスのIntelligent Enterpriseとなる」というビジョンを掲げています。

 Intelligent Enterpriseという言葉にはいくつかの観点がありますが、最も重要なポイントとしては、データを会社全体のアセットとしてあらゆる形で活用し、それによって大胆かつ正しい意思決定を、今まで以上に迅速に進めるという意味を込めています。

 また、患者さんや医療関係者との関係において、デジタルと非デジタルを組み合わせてオムニチャネルとして新しい形に進化したカスタマーエンゲージメントの形をつくっていくという意味もあります。

 さらには、社内に目を向けてオペレーションをデジタル技術でもっとシンプルにし、自動化していくことで「人だからこそ」できる仕事に注力して、全体のパフォーマンスを上げていくことを目指しています。

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Digital Ambition in 2025
(出典:アステラス製薬)

 加えて、これはDXそのものではありませんが、情報セキュリティやサイバーセキュリティについても非常に重要なものとして、DXと同じレベルで扱っていきます。データを扱うに当たって、どのような優れた仕組みがあっても、安心して使える環境になければ広がっていかないからです。

創薬領域で1000倍の成果を上げる仕組みとは

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アステラス製薬
情報システム部長
須田 真也氏
須田 真也氏(以下、須田氏):データをあらゆる形で活用する取り組みは、製薬会社におけるバリューチェーンの全体、つまり創薬・開発のところから製造、販売、また販売後の安全性情報管理に至るまで、あるいはコーポレートとしての意思決定など、あらゆるところに存在します。

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製薬業界は情報産業でありバリューチェーン全体で、膨大なデータを扱う
(出典:アステラス製薬)

 たとえば創薬のフェーズでは、医薬品創製プラットフォームというものを構築しています。創薬のプロセスは、膨大な実験データを集めて多くの解析を行い、新しいことを発見して薬を生み出していくものです。今までは人が手作業で実験をし、そのデータをコンピューターで解析してきました。

 しかしこの医薬品創製プラットフォームでは、人が手作業をする代わりにロボットが操作して実験を、そこから得た大量のデータをAI/機械学習で解析し、薬になりそうなものを予測し、シミュレーションしていくというプロセスを、数多く、そして速く回していくということをやっています。

 連続する作業を正確に、そして徹底的にやるのは機械が得意とするところです。でも機械は、非連続なものを生み出すことはできません。その部分を担えるのは人です。この実験ロボットとAIが得意なところに研究員が、ぽんとアイデアを1つ入れると、一気に創薬の方向性を変わるのです。

【次ページ】ロボット×AI×人で成果を1000倍にした取り組みとは
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