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- 2022/04/06 掲載
トヨタに学ぶべき「日本流」不確実性への対応、「修正は決して失敗ではない」
企業の力を左右するビジネス・コンポーザビリティ
新型コロナの世界的パンデミックはいまだ収束せず、ここにきてウクライナ危機も高まるなど、ビジネス環境は不確実性を増すばかりだ。「IT面でも、それは同様です」と語るのは、ガートナー リサーチ&アドバイザリ部門 バイスプレジデント,アナリスト,ガートナーフェローの藤原恒夫氏だ。ガートナーでは毎年、CIOとテクノロジー責任者に対するアンケート調査「CIOサーベイ」を実施。21年末に調査を行ったその22年版によると、「デジタル化された業務」「デジタル化されたプロセス」の2019年比の21年の割合は、日本でも前者で約10ポイント、後者で約3ポイント増加し、今後、伸びはさらに加速すると見込まれている。
その中にあって、あらゆる企業が危機を好機に変えるべく「変化対応」に注力。ただし、そのすべてが成果につながっているわけではないことは周知の通りだ。では、そこで成否を分けるのは果たして何か。その観点から藤原氏がCIOサーベイから読み取れる傾向として紹介したのが、「ビジネス・コンポーザビリティ(BC)に長けた企業はビジネス・パフォーマンスも業界他社と比べて高い」ことだ(図1)。
BCとは、端的に言えば「不安定な状況に対抗し、ビジネス価値を高める手段」(藤原氏)である。経営資源をコンポーネントと捉え、状況に応じて柔軟に組み立て直すという考え方かつ能力であり、従来から「リ・エンジニアリング」や「選択と集約」など、時代ごとにさまざまに表現されてきた。
3つの能力育成が衰退の回避で不可欠に
藤原氏によると、BCの大きさは、「コンポーザブル・シンキング」「コンポーザブル・ビジネス・アーキテクチャ」「コンポーザブル・テクノロジー」の3つにより決まるのだという。1つ目は、いわゆる「ゲームチェンジャー」となるための継続的な能力探求と創造に取り組む力、2つ目は業務能力や製品、組織、プロセスなどのビジネス要素を、新たな価値創出のために動的に進化させる能力、3つ目はテクノロジー資産/能力が組み立てや再構成が自動化された、モジュール型の構成要素となっている程度をそれぞれ意味する。
現状、グローバルでもBCに長けるとの回答は約2400の回答のうち6%とごく少数で、日本だけでみればさらに少なく、その割合はわずか1%ほどにとどまる。
「日本人は控えめに回答する傾向が強く、この数字だけで日本の将来を悲観することはありません。ただ、コダックやブロックバスターなど、過去に成功を収めつつも衰退した企業の多くが、BCの力に欠けている点は否めません。同じ轍を踏まないためにもBCを高める必要性は明らかです」(藤原氏)
そこで参照すべきとして藤原氏が紹介したのが、BCが高い企業で実践率が高い取り組みだ(図2)。
それらと従来ビジネスでの常識とを照らし合わせ、目指すところの違いを明確化し、新たに必要な能力を見極めて養う――これが藤原氏の提案するBCの向上に向けたアプローチだ。その中身は具体的には次のようになる。
まず、コンポーザブル・シンキングの向上で柱となるのが「新しい価値を探求/創造するマインドセットの醸成」だ。その点における日本と世界との一番のギャップが「権限の委譲」の程度である。
「日本では現場で責任が取れる文化になっていません。このままでは機敏性を高められず、イノベーション創出もそれだけ困難になります」(藤原氏)
【次ページ】日本企業ならではのトヨタ流BC向上術
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