0
会員になると、いいね!でマイページに保存できます。
日本政府は2020年10月、「2050年までに温室効果ガスの排出を全体としてゼロにする」という、カーボンニュートラルを目指すことを宣言した。この達成目標を成長の機会ととらえ、産業競争力を高めていくことも狙いの1つである。そうした中、経済産業省は2022年2月1日、経済社会システム全体の変革(GX:グリーントランスフォーメーション)を牽引する「GXリーグ基本構想」を公表した。2022年7月には「GX実行会議」を設置し、12月に「GX基本方針」をとりまとめ、2023年2月には「GX基本方針」と「GX推進法案」を閣議決定し、2023年5月12日、法定された。そして、2023年度からから本格な活動を開始する計画だ。GXとは何か、GXリーグ基本構想ではどのような取り組みが実施されるのかを解説する。
GX(グリーントランスフォーメーション)とは何か?
GX(グリーントランスフォーメーション)とは、経済産業省が提唱する、経済成長と環境保護を両立させ、「2050年までに温室効果ガスの排出を全体としてゼロにする」という、カーボンニュートラルにいち早く移行するために必要な経済社会システム全体の変革を意味する成長戦略である。
2030年の日本としての温室効果ガス排出削減目標の達成や、2050年カーボンニュートラル達成を目指すために提唱されている。
ロシアによるウクライナ侵略以降、エネルギー価格の高騰や、エネルギー源の不足が懸念される状態が発生し、化石エネルギーに過度に依存することによるリスクが顕在化している。
化石エネルギー中心の産業構造・社会構造からの転換とともに、経済を再び成長軌道に乗せ、将来の経済成長や雇用・所得の拡大につなげるため、早急にGX実現に向けて取り組むことが必要である。
GXへ「基本方針」「成長志向型カーボンプライシング構想」
経済産業省がGX実行会議で取りまとめ、2023年2月に閣議決定した「GX実現に向けた基本方針」では、GXを加速させることで、エネルギー安定供給と脱炭素分野で新たな需要・市場を創出し、日本経済の産業競争力強化・経済成長につなげていく方針を示している。
この方針の柱は、以下の2つである。
- (1) エネルギー安定供給の確保を大前提としたGXの取組
- (2)「成長志向型カーボンプライシング構想」などの実現・実行
「成長志向型カーボンプライシング構想」とは、今後10年間に150兆円超の官民GX投資を実現するため、国が総合的な戦略を定め、GX投資を前倒しで取り組むインセンティブを付与する仕組みを創設する構想だ。
今後10年間で150兆円を超えるGX投資を官民協調で実現していくためには、国として長期・複数年度にわたり支援策を講じ、民間事業者の予見可能性を高めていく必要がある。そのため、新たに「GX経済移行債」を創設し、今後10年間で20兆円規模の先行投資を支援する。
カーボンプライシングによるGX投資先行のインセンティブにも取り組む。カーボンプライシングは、炭素排出に値付けをすることにより、GX関連製品や事業の付加価値を向上させ、投資を促進させる。
カーボンプライシングによるGX投資先行のインセンティブは、直ちに導入するのではなく、GXに集中して取り組む期間を設けた上で導入する。また、当初低い負担で導入し、徐々に引き上げていくこととした上で、その方針をあらかじめ示すことで、GX投資の前倒しを促進する。さらに、エネルギーに係る負担の総額を中長期的に減少させていく中で導入することを基本している。
具体的な計画としては、2026年度から、多排出産業などの「排出量取引制度」の本格稼働、2028年度からは「炭素に対する賦課金」(化石燃料賦課金)の導入を目指す。
「GX推進法」とは?
「GX実現に向けた基本方針」に基づき、「GX推進法」として、(1)GX推進戦略の策定・実行、(2)GX経済移行債の発行、(3)成長志向型カーボンプライシングの導入、(4)GX推進機構の設立、(5)進捗評価と必要な見直しを、法定している。
(1)GX推進戦略の策定・実行では、政府は、GXを総合的かつ計画的に推進するための脱炭素成長型経済構造移行推進戦略を策定。戦略はGX経済への移行状況を検討し、適切に見直しを行う。
また、(4)GX推進機構(脱炭素成長型経済構造移行推進機構)を設立する。GX推進機構の業務は、民間企業のGX投資の支援や化石燃料賦課金や特定事業者負担金の徴収、排出量取引制度の運営などの業務を行う。
【次ページ】GXを実現するGXリーグとは? その基本構想
関連タグ