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  • 2021/11/22 掲載

なぜ日米企業のDX推進に大きな差が出る?「DX白書2021」が示す不都合な真実とは

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新型コロナウイルス感染拡大の影響など、企業の取り巻く環境は大きく変化し、将来予測がより困難となった。環境変化への迅速かつ柔軟な対応や、システムのみならず企業文化や事業変革していくDX(デジタルトランスフォーメーション)の推進が重要となっている。IPA(独立行政法人情報処理推進機構)は2021年10月11日、「DX白書2021」を公表した。今回は、384ページにも及ぶ同書の中でも、特に重要な第2部の「DX戦略の策定と推進」について解説する。
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なぜ日米企業のDX推進に大きな差が出るのか?
(Photo/Getty Images)

日米企業の「DXへの取り組み状況」の差

 DX白書2021は、これまで調査をとりまとめてきた「IT人材白書」や「AI白書」を統合し、日米比較調査を踏まえて、DXの戦略や人材、技術などに焦点をあてている。「総論」「DX戦略の策定と推進」「デジタル時代の人材」「DXを支える手法と技術」の4部構成となっている。

 今回解説する第2部「DX戦略の策定と推進」では、経営突風が自ら変革を主導し、全社横断で組織的に取り組んでいくために必要不可欠なDX戦略と実施のプロセスが述べられている。

 まず第1章「DXへの取組状況」では、日本と米国におけるDXへの取り組み状況を比較している。その比較によると、日本ではDXに取り組んでいる企業は約56%であるのに対して、米国では約79%となり、取り組み状況には大きな差がある。また、DXに取り組んでいない企業の割合は、日本が33.9%で、米国では14.1%となっている。

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DXへの取り組み状況の日米の比較
(出典:IPA「DX白書2021」2021年10月)

 また、DXの取り組みで設定した目的に対する成果の状況を尋ねたところ、米国企業の90.1%が「成果が出ている」と回答し、「分からない」とする企業は2.4%にとどまっている。一方、日本企業の27.9%が「分からない」と回答しており、DXへの取り組みに対する成果評価が適切になされていない可能性がある。

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DX取り組みの成果
(出典:IPA「DX白書2021」2021年10月)

DX戦略の全体像と進め方のポイント

 第2章「DX戦略の全体像」では、DX戦略の全体像と立案のポイントが解説されている。それによると、DXを推進して業務そのものや組織、プロセス、企業文化・風土を変革し、競争上の優位性を確立することが、日本企業にとって喫緊の課題となっているという。

 また、DXを全社的な取り組みとして推進するためには、経営、IT部門、事業部門など全社で危機意識や取り組み指針に対する共通認識を持つ必要があると説く。そのためには、経営戦略のみならずIT戦略や事業戦略とも整合したDX戦略を策定し、経営のコミットメントのもと変革を推進していくことが重要だと述べている。

 また、DX戦略の策定に関しては、DX推進によって達成すべきビジョンを定めることを推奨。特に「外部環境変化とビジネスへの影響評価」を考慮した上で「取り組み領域の策定」や「推進プロセス策定」を実施し、その達成に向けた道筋を整理することが必要だという。

 さらに「策定した推進プロセスの実現には、DXを推進する際に必要不可欠な経営資源である人材・ITシステム・データなどの「企業競争力を高める経営資源の獲得、活用」が鍵となる」と説く。特に、DXを推進する人材やサービスを差別化する際の源泉となるデータの整備や老朽化したITシステムの刷新には長い時間を要するため、中長期的な視点での取り組みが求められているという。

 「成果評価とガバナンス」という観点では、顧客への価値提供を評価するための評価指標の設定とDX推進状況の評価、評価結果に基づくDX戦略や人材、投資などリソース配分を見直す仕組みを構築する必要性を強調する。

 DX推進に際しては、これまで挙げてきた戦略策定・推進の一連のプロセスを早いサイクルで繰り返し、失敗から学習しながら進めていくことがポイントとなると言えるだろう。

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DX戦略の全体像と進め方
(出典:IPA「DX白書2021」2021年10月)

外部環境の評価と取り組み領域の策定

 DX戦略策定に際しては、外部環境の変化や自社のビジネスへの影響を考慮した取組領域を設定することが必要となる。第3章「外部環境の評価と取組領域の策定」では、外部環境変化とビジネスへの影響評価が示されている。

 先述した調査では、日米の企業にパンデミックをはじめとした外部環境変化によるビジネスへの影響を尋ねている。それによると、各外部環境変化がビジネス機会として非常に強い影響があるという選択肢に対して、すべての項目で日本企業よりも米国企業が高い数値となった。中でも「パンデミック」と「技術の発展」に対しては日本企業と米国企業との差が大きく表れている。

 また、日本企業は、外部環境変化を事業機会と捉えて、外部環境変化へのアンテナを高くして、競合よりできるだけ優位に立つためのケイパビリティ(企業競争力を高めるための組織能力)を確保できるDX戦略を考えておくことが必要だと述べられている。

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外部環境変化への機会としての認識
(出典:IPA「DX白書2021」2021年10月)

 さらに、DX戦略を策定する上では「社会の課題や顧客の課題に対して、どのような価値を提供し、どのように解決をするか考えることも重要」と説く。同白書では「デジタル技術を用いて実現される主な提供価値」と「ビジネスモデル」の例を提示。それらは「消費/利用体験価値の向上」「消費/利用ハードルの低減」「安心・信頼感の創出」の3つに分類されている。企業は、こうした価値提供を考えてビジネスモデルを構築していくことが重要だと言える。

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「デジタル技術によって実現される顧客への提供価値」と「ビジネスモデル」の例と、経営効果
(出典:IPA「DX白書2021」2021年10月)

価値創出に必要な「アジャイルでの継続的な推進プロセス」とは

 DXは、ニーズの不確実性が高く、技術の適用可能性も分からないといった状況下で推進することが多く、状況に応じて柔軟かつ迅速に対応していくことが必要だ。同白書では、日本企業にもDXの実現手段として、アジャイルな取り組みが求められていると説く。アジャイルとは、企画、実行、学習のサイクルを継続的かつスピード感を持って反復することを指す。

 「アジャイルの原則とアプローチを組織のガバナンスに取り入れているか」を尋ねたところ、日本企業ではいずれの部門においても取り入れている割合が5割に満たなかった。一方、米国企業ではいずれの部門も取り入れている割合が高く、「取り入れていない」という割合はおよそ1割にとどまっている。

 DXの実現においては、アジャイルな取り組みを理解し、アジャイルで継続的に進められる環境を整備していくことが重要だと言える。

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アジャイルの原則とアプローチの日米企業の比較
(出典:IPA「DX白書2021」2021年10月)

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