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デジタル化の急速な進展・高度化が進む中、日々生成されるデータは「智恵・価値・競争力の源泉」として期待されている。国と地方公共自治体のデジタル化を主導するデジタル・ガバメント閣僚会議は2021年5月26日、デジタル国家にふさわしいデータ戦略を策定する「データ戦略タスクフォース(第7回)」を開催、「包括的なデータ戦略(案)」を公表し、6月18日に正式版を公開した。政府が推進するデータ戦略をさらに発展させた包括データ戦略とは何か。検討項目を中心に、その内容を解説する。
包括的データ戦略とは何か? その目標とは
包括的データ戦略とは、内閣官房が2021年6月に発表した、日本政府が世界トップレベルのデジタル国家を目指す上で必要なデジタル基盤を構築するための戦略である。
日本政府は、包括的データ戦略上での「データ」について「智恵・価値・競争力の源泉であるとともに、課題先進国である日本の社会課題を解決する切り札」と表現している。政府がデータを活用し、世界トップレベルのデジタル国家を目指す上で、それにふさわしいデジタル基盤を構築するための戦略を包括的データ戦略と位置付けている。
そもそも包括的データ戦略では、どのようなデジタル社会の実現を目指しているのだろうか。同データ戦略では、データ戦略の基本的な考え方を明確にし、データ戦略の基本的価値観である理念、その理念に基づき目指すべき社会のビジョン、およびそのビジョンを実現する基本的行動指針を定めている。
具体的には、信頼と公益性の確保を通じてデータを安心して効率的に使える仕組みを構築することなどを理念に掲げ、現実空間とサイバー空間が高度に融合したシステム(デジタルツイン)により、新たな価値を創出する人間中心の社会の構築を目指すべき社会のビジョンとしている。
包括的データ戦略を策定する組織と検討事項とは
包括的データ戦略を検討しているデジタル・ガバメント閣僚会議は、内閣総理大臣を議長として、内閣官房長官やデジタル改革担当大臣、その他の国務大臣、内閣情報通信政策監(政府CIO)などで構成される。この会議を担うデータ戦略タスクフォースは、産学官民一体となってデジタルデータの整備や標準化、データの取り扱いルールなどを推進する組織だ。
今回公表された「包括的データ戦略」の策定に当たり、政府は2020年末の「データ戦略タスクフォースとりまとめ」で示された課題について、その実装に向けて以下の内容を検討項目として整理している。
主な検討項目としては「行政におけるデータ行動原則の構築」や「プラットフォームとしての行政が持つべき機能」、「トラスト基盤の構築」「データ連携に必要な共通ルールの具体化とツール開発」「ベース・レジストリの指定」などが掲げられた。
「包括的データ戦略」推進のための行動指針とは
昨今のコロナ禍では、行政のデジタル化の遅れが顕著に露呈したといえる。そのため、包括的データ戦略の中で「行政が率先して業務改革をすることが必要である」と明記された。また、データの価値を認識してデータ視点で業務を再整理し、データの利用、再利用を前提としたシステム整備を可能にするための「データ行動原則」がとりまとめられた。
行政におけるデータ行動原則では、「データに基づく行政(文化の醸成)」「データエコシステムの構築」「データの最大限の利活用」などが、今後行政分野の改革でと勲位遵守すべき原則として掲げられている。
「包括的データ戦略」で進む行政機関のプラットフォーム化
デジタル社会においては、行政機関は最大のデータ保有者にもなりうる。そのため、行政自身が国全体の最大のプラットフォームとなり、それがガバメントクラウド上で提供されることになるという。包括的データ戦略では「広く国民や民間企業などから活用されることが、産業競争力や社会全体の生産性向上に直結する」と説かれている。
その実現に向けては、今後は「行政機関全体のアーキテクチャの策定」「マイナンバー制度とリンクしたID体系の整備」「ベース・レジストリをはじめとした基盤データの整備やカタログの整備」のなどを展開する予定。さらに、民間企業ともオープン化・標準化されたAPIで連動できる「オープンなシステム」の構築を目指す計画だ。
データ社会を支える包括的な認定スキーム「トラスト基盤」
また、サイバー空間とフィジカル空間が高度に融合した社会構想「Society 5.0」の実現では、電子署名法や公的個人認証法など個別の制度構築だけではなく、データ社会全体を支える包括的な認定スキーム基盤が求められる。
包括的データ戦略では、デジタル庁を中心として関係省庁が協力して、2020年代早期に認定スキームとしての「トラスト基盤」の実装を目指すと記された。
その実現には、意思表示の証明、発行元証明、存在証明などのトラストサービスに共通する水平横断的な一般原則と共通要件を整理し、クオリファイドサービス(法的に認められるための証明)としての認定スキームを創設する必要性が明記されている。
データ活用で価値を創出する「プラットフォーム」整備とは
データを活用して新たな価値を創出するためには、「データ連携」とそれを「利活用したサービスを提供」するプラットフォームの構築が鍵となる。しかし、日本はプラットフォームという概念そのものが浸透せず、それを構築する能力が官民ともに世界レベルに追いつけず、データ利活用による価値を顕在化できない状況にある。
そのため、包括的データ戦略では、これまでの取り組み状況などを踏まえ、以下の4項目を検討する必要性が示された。
プラットフォーム検討の共通手順
データ連携に必要な共通ルール(データ流通を促進・阻害要因を払拭するためのルールを含む)
データ流通を容易にするツール開発
「DATA-EX」による分野間連携と外部組織との連携
4.項目「DATA-EX」とは、2021年4月に創設された一般社団法人「データ社会推進協議会(DSA:Data Society Alliance)」が提供するデータ連携を目指すプラットフォームを指す。DATA-EXでは、データカタログ検索機能、データ交換機能、データ連携契約機能など、分野間データ連携基盤技術(コネクタ)を開発し、共通機能を提供することが想定されている。
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