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  • 2021/04/07 掲載

「優秀な人を正社員で雇用」はもう無理?コロナ後に求められる「人」と「企業」の特徴

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ウィズコロナ、アフターコロナの世界で、ビジネス環境や働き方が大きく変わってしまった。こうした時代に、求職者はどのような戦略を持って企業を選び、自分の価値を高めていけば良いのだろうか? 一方、企業はどのような人材戦略で成長を目指せば良いのだろうか。転職サイト「イーキャリア」などを運営するSBヒューマンキャピタルの代表取締役社長 木崎秀夫氏に話を聞いた。
聞き手・構成:編集部 中島正頼、執筆:井上猛雄

聞き手・構成:編集部 中島正頼、執筆:井上猛雄

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SBヒューマンキャピタル
代表取締役社長
木崎 秀夫氏

なぜ有効求人倍率は「もう元に戻らない」のか

──前編で、「コロナショックは出口が見えている」というお話をされていましたが、今後の転職市場はどう推移していきそうでしょうか?

木崎 秀夫氏(以下、木崎氏):有効求人倍率の推移におおむね比例して、転職市場も動いています。1.03まで下がった倍率がいつ回復するか、それはコロナ由来なので、コロナの終息に委ねられます。転職支援業界各社の来年の計画は、おおむね前年並みで、右肩上がりの軌道に戻るのはおそらく2022年春以降。夏にかけて右肩上がりになり、ピークは少し先になるでしょう。

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有効求人倍率の推移。バブル崩壊、オイルショック、リーマンショックのときは、いずれも1.00を下まわったが、今回のコロナでは1.03と何とか持ちこたえている

──逆に有効求人倍率が1.63レベルに戻るのは、いつぐらいになりそうですか?

木崎氏:それはもう期待できないかもしれませんね。有効求人倍率はあくまで、公共職業安定所(ハローワーク)に届いた求人数を求職者で割った値です。コロナ禍で自由な働き方を選択する人も増えました。いまは企業の労力調達も従業員採用だけでなく、業務委託も副業者もクラウドソーシングもあるし、RPAも選択肢になります。

 もはや雇用は労力課題を解決する選択肢の1つでしかなくなっています。経営者側も厳しい環境下で、違う手立てで安い労力、解決策を確保したいので。経済が回復しても、以前の水準まで戻るかはわかりません。

──コロナショックが自由な働き方を加速したことで、有効求人倍率の高低では景気の良しあしを語れなくなってきたわけですね。

木崎氏:大まかには、有効求人倍率の傾向は正しいと思います。ただ、いまは二次、三次的な要素が加わるため、この数字だけでは測れません。逆に「1.63に届いていないから、以前より景気が悪い」とも言えません。働き手が認識すべき点は、経営者の持っている選択肢が随分と変わってきているので、それを理解して自己価値をどう高めていくのかということですね。

「流し」の営業や経理が活躍する時代に?

──いまの時代、自己価値はどのように高めていけばよいでしょうか。

木崎氏:経営側は、「安定雇用を続けなければいけない業務A」と、「これ以外の労力でも置き換え可能な業務B」の切り分けを明確にしていくと思います。業務Aに該当する人たちは、専門性を高めれば、正社員として安定を勝ち取れるかもしれません。しかし問題は、業務Bに分類される仕事をしている人たちです。競争相手が業務委託や副業者、機械やAIに肩代わりされてしまい、かなり厳しい状況になります。

 そういった方は思い切って、業務Bの仕事で直接市場に出る方法もあります。実は「流しの営業」が結構います。保険会社や広告会社でも営業をアウトソーシングする動きは大きくなっていますし、仲介する会社やサービスも登場しています。また経理業務などには繁忙期に各社季節性があるため、そういった業務も流しで動けます。会社に所属せず、フリーランスで動ける分野は確実に広くなっています。

──企業側は本当にやるべき業務Aに注力したいので、業務Bのアウトソーシングはさらに活発化すると。

木崎氏:そうですね。特に採用に苦戦している中小企業などは、雇用以外の選択肢を幅広く活用していくようになると思います。

 一方で、結果が見込まれる高い専門性を発揮してきた人の市場価値はますます高まり、より良い条件を求めて転職する人も増えていくでしょう。正の循環に入って、さらに価値が高まっていく。この傾向は間違いなく強まるでしょうね。

加速するIT社会での生き残り戦略

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──機械やAIが競争相手になる、といった話は以前からよく出ていましたが、コロナ禍でリモートワークやDX(デジタルトランスフォーメーション)が進む中、この流れは加速したのでしょうか?

木崎氏:前編でも触れましたが、「リモートワークが働き手に良い世の中をもたらした」と言う人もいますが、逆に厳しくなっている側面もあります。一方で、この変化を先読みし、努力して価値を積み上げた人には報われる時代になりますが……。

 いまは会社にとって多くの選択肢がある状態なので、働き手には競争相手が増えました。そのうちの1つ、現在のRPAツールなどは導入が容易く事務処理能力の格段に高いものが登場しています。これらは文句も言わず黙って24時間働き続け、しかも雇用よりコストが安い。強力な競争相手です。相手は機械なので、人間が同じ分野で同じだけ生産性を上げようとしても太刀打ちできません。対抗するなら、違う分野で労力を発揮するしかありませんね。

──短期的なお金ではなく、自分がどこで戦えば良いかを把握し、仕事を選ぶ必要があると。

木崎氏:まあ、お金は後から付いてくるので。自分が戦うフィールドで高付加価値を発揮し、ライバルに勝つ戦略が求められます。作業に近い職種を選ぶと、いつかどこかで代替されてしまう恐れがあります。

──本当に代替されてしまうのですか?

木崎氏:固定で長期雇用するのは、採用側から見ればリスクですから、代替されるでしょうね。ただ再び人材需要が盛り上がれば、一定のリスクを負って採用する会社が現れると思います。しかし、またこの手の経済危機がやってくると、同じ理屈になるので、やはり総じて代替される傾向にあることは変わりません。もちろん、作業に近い職種であっても、前述のように直接市場に出て、流し(フリー)として力を付け、刹那的なニーズに対応できるように、価値を高める選択肢もあります。

【次ページ】「優秀な人を正社員で雇用」はもう無理?
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