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  • 2020/08/11 掲載

IT運用管理のニューノーマル、2020年代「クラウドを使いこなす」3つの条件

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企業システムのクラウドシフトが進む中、IT部門の役割が大きく変化している。従来とコンセプトの違う製品やサービスも台頭してきており、最適な技術活用がビジネスの主要成功要因となりつつある。ITコンサルティングと調査を手掛け、IT運用管理に精通するアイ・ティ・アール(以下ITR)取締役を務める金谷 敏尊氏が、IT運用管理市場の最新動向とクラウド時代のIT運用管理のあるべき姿について解説する。
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アイ・ティ・アール 取締役/リサーチ統括ディレクター/プリンシパル・アナリスト
金谷 敏尊 氏
英国MBA(経営学修士)、MCPC認定IoTエキスパート。テレマーケティング会社にて顧客管理システム等の構築・運用に従事。営業部長、統括事業マネージャーを歴任後、1999年より現職。“As a Service”を主要な研究テーマとし、ビジネスの創出と収益化、テクノロジーの活用と成果に関わる提言を行う。ITマネジメントの上流プロセスを得意とし、大手企業の戦略立案、方針化、稟議に関わる多数のプロジェクトを遂行すると同時に、ITベンダーのビジネス開発、市場性分析、技術戦略に関わるアドバイスを提供する

クラウドはユーティリティ化し、パブリッククラウドに向いていく

 金谷氏はまず、「世の中はパブリッククラウドに向いていく」と指摘する。その根拠の1つとして、ITシステムのユーティリティ化の流れを取り上げる。

 ITシステム(特にインフラや汎用的なプログラム)がたどってきた流れは、電力システムに共通することが多いという。電力システムにおいて、1880年代まで発電所は企業が所有する私的な設備であった。だが、1888年のロータリー式コンバータの発明以降、「ユーティリティ化」すなわち「所有せずに利用する」設備へと変わっていった。ITシステムも、元来は自社電算センターで運用されていたが、VMware ESXリリース以降、クラウドにシフトしていった。

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図1 ユーティリティ化するクラウド

 クラウドのユーティリティ化が進展すれば、パブリッククラウドの利用が主流になることは容易に想像できる。では、企業側はこの流れをどう捉え、どのように対応していくべきなのだろうか。まずは、企業の実態から見ていこう。


 ITRが2019年3月に行った調査によると、クラウド利用企業における自社システムのクラウド化割合の中央値は約40%であった。2019年の段階でシステムのクラウド化がかなり進展していることが分かる。

 さらに同社がその翌月に実施した「企業が考えるクラウド・コンピューティングの最終形態(10年後)」を尋ねた調査では、「パブリッククラウドのみ」が33%、「パブリッククラウドとプライベートクラウドの両方」が45%、「プライベートクラウドのみ」が6%であった。トータルするとパブリッククラウドを利用する企業が78%、プライベートクラウドを利用する企業が51%となる。

「10年後には、パブリッククラウドが主流であり、必要に応じてプライベートクラウドを構築するようになると言っていいでしょう」(金谷氏)

運用管理トレンドの推移と今後の3つの方向性

 このようなクラウド化の流れを前提として、IT運用管理は今後どのような方向に進んでいくのだろうか。今後の方向性を考える前に、2000年頃からの運用管理トレンドを振り返ってみよう。

 クライアント・サーバシステムを対象に1990年代前半に登場した運用管理ツールは、当初はノードマネージャーやサーバリソース管理など機能ごとに販売されていたが、やがて1990年代末にはスイート化された統合管理ツールとなった。

 2000年にはx86系サーバの仮想化技術が登場し、やがてクラウド技術につながっていく。クラウドは2010年前後から日本でも普及し始めたが、当初は性能やセキュリティなどに不安があった。だが、2010年代も半ばになると、「まずはクラウド化を検討せよ」というクラウドファーストポリシーを採用する企業が増加していった。

 日本のIT運用管理について考えるにあたっては、2003年のitSMF Japanの発足を無視するわけにはいかない。

 itSMFとは「ITサービスマネジメントの普及促進を目的とする」組織であり、設立以降、日本でも急速に「ITサービス」という概念が広まった。これは、ITシステムを従来の品質・性能ではなく、顧客対応やユーザーに対するサービスレベルといったもう一段高いレイヤーで捉え、評価する概念で、その後「企業ITのサービス化」につながっていく。企業グループでシステムを標準化し、それをシステム子会社が集中管理する形態は「ITのサービス化」の典型例である。

【次ページ】今後のIT運用管理「3つの方向性」
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