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新型コロナウイルスの感染拡大を受けて、政府が経済対策の実施に乗り出している。だが現時点で打ち出されているのは、あくまで緊急対応のための施策であり、景気の落ち込みを本格的に防ぐものではない。今回の感染拡大が日本経済に極めて大きな影響を与える可能性が高く、大規模な景気対策の立案は必至だろう。現状の経済対策と今後の方向性についてまとめた。
これまで発表された経済対策はあくまで緊急対応
政府は2020年3月10日、国内での新型コロナウイルスの本格的な感染拡大を受け、臨時休校に伴う新たな助成金制度の創設などを盛り込んだ
緊急経済対策の第2弾を決定した。これは2月13日に決定された
第1弾の緊急経済対策に続くものである。
経済対策の第2弾は、下記の4項目で構成されている。
(1)感染拡大防止策
(2)臨時休校に伴って生じる課題への対応
(3)事業活動縮小への対応
(4)緊急措置
(1)と(4)は主に疫学的な感染拡大防止策なので、純粋な経済対策は(2)と(3)になる。
安倍首相は2月27日、全国の小中学校、高校に対して一斉休校を実施するよう呼びかけたが、一斉休校で仕事を休まざるを得ない人についての言及がなかった。このため各方面から疑問の声が上がり、政府は3月2日になって支援策の概要を公表していたが、今回、正式にこの施策が経済対策として盛り込まれた。
一斉休校で従業員に休暇を取得させた事業者に対しては、1日あたり8,330円を上限として助成金が支払われるので、これを使って従業員に賃金を支払うことができる。この原資は雇用保険なので正社員しか対応できないが、非正規社員に対しても一般会計を利用することで支払いができるようにした。
従業員には該当しないフリーランスなどは、業務委託契約などが存在している場合に限って、1日あたり4,100円の支援を受けることができる。
こうした支援を受けられず、当座の資金に逼迫(ひっぱく)する人たちに対しては、緊急小口融資資金の特例が設けられ、無利子で最大20万円まで借りることができる。また状況によっては償還を免除できる措置も盛り込んだ。
一連の措置は休校に伴うものだが、もう1つの柱は、感染拡大の影響を受けて事業縮小などを余儀なくされた中小企業向けの施策である。
緊急措置としての内容は十分
もともと政府には、事業活動の縮小を余儀なくされた企業に対して支援を行う雇用調整助成金という制度があった。これは、事業縮小などにより、従業員を一時的に休業させる場合、休業手当などを支援するというものである。この対象に新型コロナウイルスを加え、取引先からの受注業の減少、予約のキャンセル、自粛要請による客足の低下といった事態が発生した場合には、助成金を受けられるようにした。
こうした状況では、信用不安から各社が疑心暗鬼になり、支払いを先送りしたり、資金を一気に回収したりする可能性があり、場合によっては黒字倒産や連鎖倒産が起こる可能性もある。このため、5,000億円規模の「新型コロナウイルス感染症特別貸付制度」を創設し、資金が潤沢に提供されるよう体制を整えた。
また既存のセーフティーネット保証(経営の安定に支障を来している中小企業に対して、信用保証協会を通じて、保証限度額の別枠化を行う制度)の4号(自然災害等)、5号(業況の悪化)、さらに大規模な危機に対応する危機関連保証制度を発動し、金融機関から資金がスムーズに提供されるようにする。
支援の規模は、臨時休校対策が約2,500億円、雇用調整助成金などが1,200億円、資金繰りの支援は総額で1兆6,000億円となっている。
今回、発表された経済対策は、緊急対策としては評価に値する内容だと筆者は考えているが、一連の支援策の提示方法には少々問題がある。
【次ページ】問題は、今後の方針がまったく示されていないこと
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