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- 2020/02/07 掲載
悪徳事業者が福祉食い物に「やりたい放題」、放課後等デイサービスはどうあるべきか
全国に広がる不正請求、摘発は氷山の一角?
京都府亀岡市内2カ所で放課後等デイサービスを運営していた事業者が2019年12月、京都府から行政処分を受けた。京都府障害者支援課によると、内部告発で京都府が立ち入り検査したところ、児童10人に対して2人以上の配置が必要な児童指導員や保育士が足りないのに、水増しして報酬を不正請求していたことが分かったからだ。さらに、業務日誌などの虚偽記載や職員による虚偽答弁があったほか、京都府の出頭要請を拒否する事態も起き、行政処分で最も重い指定取り消しとなった。不正請求額は京都府が精査中で、確定次第返還を求める。
2施設のうち、1カ所は2019年4月から休止していたため、直ちに処分が下りたが、もう1カ所は障害を抱える子どもたち28人が通っている。このため、京都府は処分発効日を2020年3月末とし、その間に新しい受け入れ先を確保するよう事業者に命じた。
兵庫県加古川市では、職員の数を水増しして不正請求していた事業者が2019年11月、兵庫県から指定を取り消されている。兵庫県障害福祉課によると、事実を隠ぺいするために書類を偽装して県の検査を妨害したほか、隠ぺい工作を繰り返していた。不正請求額は約1,200万円に上る。
この施設のあとには現在、別の事業者が入居し、放課後等デイサービスを運営している。兵庫県と加古川市が障害を抱えた子どもたちの受け入れ先確保に動いた結果で、加古川市障がい者支援課は「障害を抱えた子どもたちが行き場をなくす事態を避けたかった」と話した。
2019年に指定取り消しやサービス停止の行政処分を受けた事業者は、全国に広がっている。この状況にここ数年、大きな変化はない。摘発されたのは氷山の一角とみられている。
2019年にあった全国の主な放課後等デイサービス行政処分
自治体 | 処分の内容 |
群馬県 | 大泉町で施設を運営する愛知県の事業者が児童発達支援管理責任者、児童指導員の規定を満たさずに不正に給付費を請求したなどとして、指定を取り消し |
埼玉県 | 所沢市、入間市で計3カ所の放課後等デイサービス施設を運営する東京都の事業者を指定取り消しに。実際に利用していない児童が利用しているとした偽装契約書を作成、給付費を不正請求するなどしていた |
東京都 | 中央区の事業者が基準を満たさない職員数であるにもかかわらず、基準を満たしていると偽って指定を取得したなどとして、1年のサービス提供停止処分に |
川崎市 | 実際に在籍していない児童指導員を在籍しているように届け出て、不正に指定を取得した事業者の指定を取り消し。この事業者は届け出た指導員の経歴も偽造していた |
岐阜県 | 羽島市で施設を運営していた名古屋市の事業者が指導員の数が基準に満たないのに、基準を満たしていると偽って給付費を不正請求したうえ、県の検査に虚偽報告したなどとして指定を取り消し |
愛知県 | 豊川市の事業者が専任で常勤が要件の児童発達支援管理責任者を常勤でないまま、専任かつ常勤と偽って指定を取得したなどとして、6カ月の新規利用者受け入れ停止処分に |
京都市 | 児童発達支援管理責任者が不在となったにもかかわらず、伏見区の事業者が市に報告せずに給付費を不正請求したなどとして、6カ月の新規利用者受け入れを停止 |
大阪府 | 吹田市の事業者が児童発達支援管理責任者を置いていないのに、置いているように見せかけて給付費を不正請求したなどとして、3カ月のサービス提供停止処分に |
堺市 | 堺区で施設運営していた大阪市の事業者が児童発達支援管理責任者を置かず、個別の支援計画を作成していないうえ、給付費を請求できない自宅や学校、事業所以外の送迎で不正請求したなどとして指定を取り消し |
兵庫県 | 宝塚市の事業者が実際に在籍しない利用者がいたと見せかけ、給付費を不正請求したなどとして、6カ月の新規利用者受け入れを停止 |
岡山県 | 赤磐市で施設を運営する北九州市の事業者が児童発達支援管理責任者を置いていないにもかかわらず、いるように見せかけた虚偽文書を提出し、給付費を不正請求したなどとして4カ月のサービス提供停止に |
異業種からビジネス目的で相次いで参入
放課後等デイサービスは2012年、児童福祉法に位置づけられてスタートした。障害を抱えた子どもたちに居場所を提供し、自立に向けた支援や地域との交流などを進めるのが狙いで、「障害児の学童保育」とも呼ばれている。女性の社会進出などからニーズが高まったのを受け、その数が全国で急増した。厚生労働省によると、2019年4月の施設数は約1万4000カ所。2012年10月が約3000カ所だっただけに、4倍以上に増えている。利用者数も2019年9月で約23万人に達した。
事業は自治体の指定を受けた事業者が運営している。事業者は施設に常勤の管理者、常勤かつ専従で個別の支援計画を作成する児童発達支援管理責任者、現場で支援に当たる児童指導員または保育士を置くことが求められる。
報酬は9割が公費でまかなわれる。基本報酬の上に適正な職員配置などをすると加算できる仕組みで、職員数が不足するなどした場合はその分の報酬を減額して請求しなければならない。しかし、基準を無視して運営し、不正請求してまでもうけようとする事業者が相次いでいる。
その背景には、制度創設に当たって報酬を高く設定したことがある。厚労省の2017年障害福祉サービス等経営実態調査では、放課後等デイサービスの収入に占める利益の割合を示す平均収支差率が10.9%に達し、障害福祉サービス全体の5.9%を大きく上回っている。
このため、福祉団体だけでなく、不動産や学習塾など福祉や保育経験のない事業者が相次いで参入した。その結果、受け皿は順調に確保できたものの、1日中アニメを見せるなど支援の質低下が著しい施設も出ている。
インターネット上では、開業を勧めるコンサルタント会社が暗躍している。ホームページには「素人でも即、開業が可能」、「3カ所設置すれば年商3億円」などとあおる文言が並ぶ。大阪府の事業者は「コンサルタントと話したが、いくらでももうかる方法があると強調していた。福祉の心は感じられず、ただ、金もうけの話ばかりだった」と証言する。
【次ページ】浜松市と京都市は総量規制を導入
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