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  • 2020/01/15 掲載

大学は“お金持ち”だけが行くところ? 4月スタート「大学無償化」は吉と出るのか

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2020年は大学などの高等教育無償化や私立高校の実質無償化など、教育関係の支援策が拡充される。日本は人材以外に資源のない国であり、高等教育の充実は最重要課題であるはずだが、教育は経済力のある人だけが受けるべきという価値観を持つ人が意外と多く、就学支援策の拡充には反対の声もあった。一連の施策の狙いや効果、今後のあるべき姿について考察する。
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2020年4月から大学無償化がスタートする
(Photo/Getty Images)

令和になっても残る価値観、大学はお金持ちが行くところ?

 2019年5月、大学などの学費を無償化する「大学等における修学の支援に関する法律」が成立したことで、今年4月から大学生に対する支援策が本格的にスタートする。この施策は、もっぱら「大学無償化」というキーワードで議論されてきたが、実際には低所得層に限定した支援策であり、全員が無償で大学教育を受けられるという、欧州で導入されているような施策とは少々ニュアンスが異なっている。

 つまり、誰でもタダで大学に行けるという話ではないのだが、それでも、この法案の是非をめぐってはかなりの議論になったというのが現実である。

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大学無償化の議論で垣間見えた本音
(Photo/Getty Images)

 大学生という存在そのものが貴重だった昭和の貧しい時代はともかく、これだけ豊かになった現代社会においても、大学教育は所得の高い人だけが受けるべきという価値観が存在しているのは、少々信じがたいことではある。だが、この法案を推進した現政権内部からも、これに近いニュアンスの発言が出ていることを考えると、この価値観は意外と広く共有されているのかもしれない。

 同法とは直接関係ないが、萩生田文部科学相が2020年度に始まる大学入学共通テストにおける民間英語試験に関して、「身の丈に合わせて勝負を」と発言したことが問題視された。言葉尻をつかんで批判する行為はあまり有益とは思えないが、それでも教育の機会は保障されるべきとの基本的な価値観を持っている人であれば、同じ発言でも言い方が変わってくるはずなので、萩生田氏が必ずしも機会は均等でなくても良いとの考えを持っている可能性は高いだろう。

 2018年には麻生財務相が、国立大学出身の市長に対して「人の税金を使って学校へ行った」と発言して問題視されるという出来事もあった。

 そもそも国会議員自身が多額の税金を受け取っている立場であることを考えると、この発言は議論する価値すらないレベルだが、重要なのは、麻生氏の基本的な価値観の中に、税金で運営された大学に通うことは「後ろめたいことである」との意識が存在していることである(麻生氏自身はどうなのかという話や、私立大学も現実には多額の助成金が投入されており、実質的に税金で運営されているという話はあえてここでは問わない)。

 萩生田氏は八王子市の生まれで、早稲田実業高校から明治大学に進学しているし、麻生氏は説明するまでもなく九州の麻生財閥の御曹司で学習院大学を出ている。安倍首相も岸信介元首相の孫であり、富裕層の子弟が多いといわれる成蹊大学卒である。政権のキーマンで学業の苦労を知っているのは、集団就職で上京し、苦学の末、法政大学二部(夜間学部)を卒業した菅官房長官くらいかもしれない。

国立大学に通うのであれば、十分な水準の支援だが……

 「希望する人に対して可能な限り教育の機会を確保すべき」という考え方は、戦後民主主義の基本理念の1つであり、この当たり前の価値観に対して異議を唱える人が出てくることは、実はあまり想定されていなかった。

 しかし現実には政権のキーマンにもこうした価値観を持つ人が存在しており、今回の大学無償化についても、国民の一部からぜいたくであるとの批判の声が出た。では、今回の大学無償化策というのは具体的にどのような内容なのだろうか。

 高等教育(大学)無償化は主に2つの施策で構成されている。1つは授業料や入学金の免除、もう1つは給付型の奨学金(返済の義務がない奨学金)である。

 今回の無償化策では、大学の入学金について国公立の場合には約28万円、私立の場合には約26万円を上限額として減免される。授業料については、国公立の場合には約54万円、私立の場合には約70万円を上限に減免される。国立大学の標準的な入学金は約28万円、授業料は約54万円なので、国立であれば、ほぼ全額が支給されるとみて良い。

 私立大学は大学や学部によって大きな差があるが、標準的な数字としては入学金が約28万円、授業料が約82万円なので、かなりの部分が支援策でカバーできる。学費が高い学校に通わなければ何とかなる水準といって良いだろう。

 給付型奨学金については、国公立と私立、学校の種類、自宅生かどうか、などで違いがある。

 私立大学に自宅外から通っている学生の場合、最大で年間約91万円の支援を受けることができる。一方、国公立で自宅から通っている場合には約35万円となる。金額についてはさまざまな見解があるが、最低限、学生としてやっていけるだけの金額は確保されたとみて良い。

 だが、これらの支援策は誰でも受けられるというものではなく、支援の対象となるには所得制限をクリアする必要がある。

【次ページ】支援の対象となる条件とは? 無償化ではなく貧困対策と捉えた方が適切
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