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IT投資の動向は、企業におけるIT活用のトレンドを見るうえで有効な指標の1つとなる。2019年10月に開催された「IT Trend 2019」に登壇したITR シニア・アナリスト 三浦 竜樹氏は、同社が毎年実施しているIT投資動向調査の速報値を披露。2,826件の回答から分析した国内企業が重視するIT戦略、新規導入の可能性が高い製品・サービス、デジタルトランスフォーメーション(DX)への取り組み、IT部門の動向などを解説した。
投資の方向性:好調企業は「ビジネス成長」、不調企業は……
「IT投資動向調査」は、ITRがIT戦略・IT投資の意思決定に関わっている国内企業・組織の役職者を対象に2001年から毎年実施しているアンケート調査である。今回の有効回答数は2,826件。ITの取り組み状況を尋ねるもので、最新報告書は2020年度版として2019年12月に発刊される予定。
このセッションは9月に調査を終えたばかりの集計結果を速報値として伝えるものだ。ITRの三浦 竜樹氏が解説を行った。
最初のテーマ「IT投資の方向性」では、企業におけるITの新規投資比率が取り上げられた。ここでは、“売上高”や“業種”ではなく、「非常に好調」「やや好調」「やや不調」「非常に不調」といった“ビジネスの現状認識”別での集計結果が紹介された。
その結果、全体の新規投資比率の割合は30.7%だが、非常に好調な企業では新規投資比率は36.2%まで高くなる結果となった。その逆に、非常に不調な企業では24.2%と3割を切ってしまう。なお、この新規投資比率は2000年代初頭は40%台半ばであったものが、微減続きで今は30.7%まで落ちてきている。
それでは、新規投資の目的は何なのか。非常に好調な企業で最も割合の高かった回答は「ビジネス成長」(37%)だ。これは新規ビジネスの創出や既存ビジネスの拡張を意味する。
一方、非常に不調な企業が最も投資しているのは「業務効率化」(38%)である。こちらはプロセス改善、自動化、就労環境の改善などが包含されている。業績が良ければその分、新規投資に多くの予算を回しビジネス成長に資する投資ができるのに対して、不調になるとその余裕がなくなる状況が見てとれる。
重視するテーマ:データ活用、サイバー攻撃など急伸
企業が今、最重要視しているIT戦略上のテーマは何か。結果からいえば、前年の上位5項目と今回の上位5項目に変化はなかった。その5項目とは、「売上増大への直接的な貢献」「業務コストの削減」「顧客サービスへの質的な向上」「システムの性能や信頼性の向上」「ITコストの削減」である。
前年度から大きく順位を上げたものは3項目ある。「情報やデータの活用度の向上」「サイバー攻撃への対策強化」「経営における意思決定の迅速化」だ。
一方、前年度から大きく順位を下げたのは、「グローバル・ビジネスへの対応強化」「IT部門スタッフの人材育成」「IT組織の再編(子会社含む)」「従業員の働き方改革」の4項目だった。
DX推進:金融業や製造業らが強い関心
同社は、今回からデジタルトランスフォーメーション(以下、DXと略称)に関する質問を追加した。
まずは、この潮流について企業はどのようにとらえているか。「全社レベルで取り組むべき最重要事項だと思う」と回答した割合は27%、「少なくとも部門・部署によっては取り組むべき重要事項だと思う」は34%、合わせて約6割の企業が取り組むべき重要事項だと認識している。
続いて、その推進体制については、全体では「DX推進専任部門が設置」が15%、「既存部門が担当」が27%、「部門横断型のプロジェクトチームが推進」が19%で、こちらも約6割が何らかの形でDX推進組織を形成していることが判明した。
業種別で見ると、「情報通信」がDX推進専任部門の設置割合が25%と最も高く、「金融・保険」が21%で続く。何らかの形でDX推進組織を形成している割合で見ると、「情報通信」と「金融・保険」がともに70%、そこに「製造業」も68%と僅差で続き、この3業種でDXに対する高い意欲がうかがえる。
それではDXで推進したいことは何か。「最優先課題であり、すでにプロジェクトに着手している」割合が最も高い3項目を挙げると、「コミュニケーション/コラボレーションの高度化」(23%)、「業務の自動化」(23%)、「ワークスタイルの変革」(21%)という結果になった。
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