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現在、国内各キャリアが研究開発や実証実験に取り組む「5G」(第5世代移動体通信システム)。NTTドコモ、KDDI、ソフトバンクら大手キャリア3社は2019年中にプレサービスを開始する計画を公表しているが、各キャリアはどのように変化していくのか。NTTドコモ、KDDI、ソフトバンクら大手3キャリア、そして総務省が2018年10月、CEATEC JAPAN 2018でディスカッションを行った。
スピーカーとして総務省 布施田英生氏、NTTドコモ 中村寛氏、KDDI 宇佐美正士氏、ソフトバンク 野田真氏の4人が登壇。モデレーターはリックテレコム 土谷宜弘氏が務めた。
5Gによってテクノロジーによる社会的課題の解決が期待される
リックテレコム 取締役 編集統括部長 土谷宜弘 氏(以下、土谷氏): 5Gとは何か、どういうサービスになるのか。考えをお教えください。
総務省 総合通信基盤局 電波部 電波政策課長 布施田英生 氏(以下、布施田氏): 5Gとは私たちの生活を便利にする、社会の産業構造を変えていくものと捉えています。使い新しい暮らしのアイデアをベンチャー企業がつくり、キャリアと共創しながら社会を作っていくような動きが出てくる。まさしくソサエティ5.0を支える基盤の技術です。
その上で重視したいことは3つです。1つは、総務省としては電波をきちんと割り当てること。2つ目は、社会への普及が進むよう、キャリアと共同で実証実験をしていくこと。そして、3つ目は、世界の国と協調していくこと。できるだけ同じ周波数帯を使うなど、キャリアが実現したい機能や性能を国際標準に入れていくことも支援していきたいと考えます。
総務省としても、5Gによって日本の産業が成長し、国民の暮らしが良くなっていくような政策を推進することを目指しています。
土谷氏: 周波数帯の割り当ての進捗(しんちょく)について教えてください。
布施田氏: 周波数帯の割り当てについては、来年3月末までには決定する予定となっていて、これは政府の政策予定にも入っています。
IoTが進展し、社会に大きなインパクト
土谷氏: 従来までの3G、4Gと5Gは何が違うのでしょうか?
NTTドコモ 中村寛 氏(以下、NTT 中村氏) :移動体通信の歴史は10年ごとに大きな技術革新が、20年ごとに社会にインパクトを与える出来事がありました。5Gのサービス開始が予定される2020年は、日本でセルラー通信が始まった1979年から約40年の節目に当たります。
セルラー通信は自動車電話から始まり、その後携帯電話が登場。1979年の20年後にあたる1999年には『iモード(i-mode)』が登場した。そして、スマホの登場によって、マルチメディア端末としての活用が進んでいます。
5G登場によってモバイルの発展の方向性は2つあるでしょう。1つはスマートフォンがさらに進化し便利になること、そしてもう1つがNTTグループが掲げる「B2B2X」と呼ばれるビジネスモデルです。
これは、「X」(企業や個人などのエンドユーザー)に対して価値を届けるために、「B」(NTTグループ)から「B」(法人)に対してサービスを提供するもの。このように、5Gは一人ひとりが便利になるだけではなくビジネス基盤、社会基盤になっていく点が従来技術とは異なるといえます。
KDDI 宇佐美正士 氏(以下、KDDI 宇佐美氏): 5Gの広帯域・低遅延という特徴を生かし、今までの4Gでは無理だった高精細画像のアップロードが可能になるでしょう。ドローンの映像も4Kで扱えるようになり、監視の精度やスピードが桁違いに上がっていきます。このように「5Gによって、サービスの劇的な質の向上が期待される」点が従来技術との違いです。
ソフトバンク 野田真 氏(以下、ソフトバンク 野田氏): 今までとネットワークの使い方がまったく変わってくる可能性があります。これまでのデータの伝送は、エンド側から見て『ダウンロード』が主流でした。しかし5Gによる高速化によって『アップロード』がメジャーになる。つまり、これまでの人間同士のコミュニケーションから、あらゆるモノがネットワークに繋がり、価値を生む世界に変わっていくのです。5GとIoTをセットで捉えるのはこのためです。
土谷氏: では、基地局の設置やエリア展開についてこれまでと変わることがあるのでしょうか?
NTT 中村氏: 従来通り、東京、大阪、名古屋の大都市圏から整備することになります。あわせて、都市部だけではなくパートナーが必要とするエリアに基地局を作り、5Gのユースケースを作っていきたいと考えています。
KDDI 宇佐美氏: 基本的にはドコモさんと同じことを考えています。社会的課題の解決というニーズの高いエリアを優先し、従来のような「人口の多い主要都市から順次、面で展開する」よりも、必要な場所に必要な時期に基地局を構築していきたいです。
ソフトバンク 野田氏: ソフトバンクも同じで、ニーズあるところから整備していくのが基本の考え方です。今、4Gで使っている周波数を5Gで使うことを可能にしてもらいたいという希望もあるため、なるべく早いタイミングで全国津々浦々、5Gを届けていきたい考えがある一方、IoTという側面からむしろ人が行かないところに電波を行き届かせる必要があり、そうした観点からも基地局展開を進めていく必要があると考えます。
布施田氏: 人があまり住んでいない場所、地方にも産業を興したり、人を呼び寄せたいというニーズもあります。社会的課題の解決という観点からも、5Gのニーズのあるところにしっかりサービスを届けてほしいと思います。
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