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  • 2017/10/12 掲載

なぜAWSやサイボウズはリアルの「イベント」に積極投資するのか

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BtoBマーケティングの展示会やセミナーは旧来より盛んに行われているが、近年ではプラットフォーマーを中心にプライベートイベントを主催し“モノより体験”を訴求する、“一日滞在型”で一個人としても楽しめるエンターテイメント手法を取り入れたものが増えている。8月30日に開催されたカンファレンス「BACKSTAGE2017」では、日本経済新聞社 戸井 精一郎氏をモデレーターに、アマゾン ウェブ サービス ジャパン 篠原 克志氏、サイボウズ 鈴木 亜希子氏が登壇。両社のイベント戦略について明かした。
執筆:Miho Iizuka
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オンラインで完結するクラウドサービスや大規模なBtoB事業を展開するAWSとサイボウズ。それぞれ“顧客とのリアルな接点が持てる”イベントに積極投資を行う

AWSやサイボウズがプライベートイベントを行う最大の目的とは

 展示会やセミナーの開催目的、来場目的はどこにあるのか。製品カタログや実物展示、自社が思うところの魅力的な事例の訴求や現場での営業スタイルは、意外とアナログ時代そのままのテイストで行われていることも多い。せっかくマーケティングオートメーションの導入をはかったところで、受け手にささるものはスペックだけという、デジタルの恩恵を最大限活用できずに終わる残念な話もある。

 「AWS Summit Tokyo」をはじめ数々のイベントを各地で開催するAWS、海外展開も視野に入れた「Cybozu Days」を開催するサイボウズ。積極的にイベントを仕掛ける二社の、マーケティング戦略におけるイベントの位置付け、プランニングの際に着目していること、実施後の評価の在り方とは? イベント戦略の最前線を知る二人が語った。

 グループウェアメーカー、サイボウズは今年設立20周年を迎える。11月に東京・大阪で開催されるプライベートイベント「Cybozu Days 2017」のテーマは「壁を超える」。毎回テーマを設けることで、それに沿う世界観をまるでテーマパークのように展開する手法を取る。去る7月21日には中国支社設立10周年を記念し、上海で「Cybozu Days Shanghai」を開催。約560名の招致に成功している。サイボウズ プロモーションディレクターの鈴木 亜希子氏は次のように語る。

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サイボウズ プロモーションディレクター
鈴木 亜希子氏

「皆さんメディアを通じてご存知かもしれませんが、弊社の社長(青野 慶久氏)、お子さんが生まれてから急に“イクメン”に変わったんですね。それまでいかにもビジネスマンという感じだったのに、それに沿うように会社もすごく変わっていきました。チームワークや働き方について考える機会も増え、クラウドサービスも軌道に乗ってきた」(鈴木氏)

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さまざまな角度から“働く”をテーマにした情報発信を行う。ブランドとのタッチポイントを増やし、継続的にアプローチすることがクラウドサービスには必要不可欠なのだ

 導入時の体験談や導入効果の生の声が聞けること、製品を触りながら最新技術を学べること、成功事例よりも「これは失敗だった」というなかなか聞けないことや、現場の人間同士だから分かり合える「トホホ」な話ほど共感できるし、自分事として捉えながら意見交換ができる。このように、プライベートな側面から垣間見れる“ストーリー”と共に伝えられる情報に親近感を覚え、ブランドへの付加価値を感じることも、自身の視点だけ、営業の案内を待っているだけではなかなか難しいものだ。

 一方、AWSではどうか。従量課金制のクラウドコンピューティングサービス、AWSは、全世界の幅広い業種においてさまざまな規模の100万社以上が導入している。毎年5月に開催される「AWS Summit Tokyo」は世界中をサーキットするイベント「AWS Summit」シリーズの中でも、4日間で19,000人以上が参加する世界最大規模の無料クラウドカンファレンスだ。最新導入事例、技術トレンドを紹介。テクニカルセッション、展示ほか、ハンズオン機会も多く設け、オンラインストリーミングなど、クラウドコンピューティングに関わる人々のネットワーキングハブとして進化を続ける。

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AWS Summit Tokyo 2017のテーマは“クラウドで、未来を「今」に。”現地参加ができなくても、セッションの資料配布や動画配信などを通じて少しでも現場の空気に触れられるようになっている

 すべてがお堅いものでは息が詰まる。AWSユーザーコミュニティ向けのナイトイベントなど、展開するコンテンツの幅は常に柔軟性を持って広げられている。去る5月に開催された「AWS Summit Tokyo 2017」のオープニングには、国内外のイベントで活躍する田中 知之(FPM)氏をDJに迎えるなど、イベント全体を“フェス”のように捉え、クールでカジュアルなブランド形成を図る。

“続ける理由”は結局「人」とのリレーションにある

 新規開拓・顧客満足度向上、どちらもできるはずのデジタルコミュニケーションも、クラウド時代においては、満足できなければ離脱することがとても容易だ。続けてもらうというリレーション、顧客との接点を以前より多く持つ必要がある。マーケティングオートメーション化の矛盾に苦しむのは、結局そこにコミュニケーションの媒介となるコンテンツが生み出せていないからなのだ。二社のイベントにおけるコンテンツプランニングには、どのような発想や着目点があるのか。アマゾン ウェブ サービス ジャパン マーケティング本部長の篠原 克志氏は次のようにリアルの大切さを説く。

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アマゾン ウェブ サービス ジャパン マーケティング本部長
篠原 克志氏

「効率だけを重視するならデジタルマーケティングですが、足を運ぶことで感じる安心や信頼、提供者や利用者が目に見える、そういった分かりやすい情報を提供できるのも大切なことだと考えています」(篠原氏)

 また篠原氏は、全国の各都市でイベントを開催する意義について次のように語る。

「普段東京に居るとその視点からマーケットの状況を捉えがちだが、一極集中ではなく全国を周ることで新たに見えてくるものがある。これまでよりさらに踏み込んだ内容にする、コンテンツのリッチ化を図る、切り口はまだまだ変えていけると思います」(篠原氏)

 サイボウズの鈴木氏も、“滞在型”というキーワードでイベントのコンセプトを説明する。

「既存ユーザーにどう満足してもらうかを打ち出すには、コンテンツでの差別化が必要だと感じ、イベントコンセプトも“滞在型”を意識し、テーマパークのように楽しめるものへ大きく変えました。聴きたいセッションだけ参加したら帰るのではなく、一日中そこに滞在することで得られることも大きい。

 会場がリラックスした雰囲気でエンターテイメントな空間であることを意識しています。もともとサイボウズ自体、楽しいことが好きという社風。そこは結構“らしさ”がある。難しいことよりも、優しく伝える。そこに共感してもらえたらいいなと思う」(鈴木氏)

 本カンファレンスが行われた「BACKSTAGE2017」においてもそうだが、多くのカンファレンスイベントではネットワーキングタイムが設けられ、参加者がカジュアルに繋がれる場になる。その場にいる人の素顔がリアルに垣間見れるというのも貴重な体験だ。

 一個人としてもエンターテイメントを楽しむ空間では、その人の「素」が意外にも滲み出るものだ。主催者側が提供するコンテンツをそれぞれの楽しみ方でカスタマイズしている雰囲気もある。商談にこぎつけたい相手を口説くスペースもあれば、共通の趣味を持つ人とのプライベートトークまで、実にさまざまな人間模様が数日間の営みで可視化される。リアルイベントの情報量は想像以上に非言語の側面も多く、数値化も難しい。

【次ページ】 イベントの成果、KPIやROIはどう計測すればよいのか
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