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- 2017/02/23 掲載
伊勢志摩サミットで自信をつけた三重県の「MICE」誘致戦略
すずき英敬知事が語るポスト伊勢志摩サミット(1)
急速に伸びるMICE誘致に見出すビジネスチャンス
これらのビジネスイベントは企業・産業活動や研究・学会活動等と関連し、早い段階から開催地が決定されるため安定的な収益が見込まれるとともに、一般の観光にはない会議施設利用やレセプション開催等により開催地への経済波及効果が高いと言われています。
MICEでは、(1)地域への高い経済効果、(2)ビジネス機会やイノベーションの創造、(3)国・都市の競争力・ブランド力向上などが見込まれるとされています。
MICE誘致によって、人が集まるという直接的な効果はもちろん、人の集積や交流から派生する付加価値や大局的な意義についての認識を高める意味において重要な役割を果たすのです。
三重県では、これをビジネスチャンスと捉えています。そこで、ICCA(国際会議協会)の統計で約80%を占める「参加者500人未満の国際会議」や、名古屋や大阪など近隣の大都市圏で開催される「大規模会議の分科会や部会」といったイベントを、三重県のスペースを使ってもらおうとしています。
キーワードはエクスカーションとアトラクション
しかし、MICE誘致に取り組むことで観光客の増加が見込まれますので、競争相手は少なくありません。そこで三重県が考えた戦略は、県内の豊富なイベントスポットを使ったエクスカーション(体験型見学会)を推していくことです。たとえば、そのひとつが「ゴルフ」です。トランプ大統領と安倍首相のゴルフ外交が話題になっていますが、海外リゾートに匹敵する風光明媚な環境が整ったコースをはじめ、三重県にはゴルフ場が69もあり、ポータルサイトのゴルフダイジェスト・オンライン(GDO)の調査によれば、三重県は県別ゴルフ場のベスト10にも入っています。
米国女子プロゴルフ協会や日本ゴルフ協会の公式トーナメントが開催されるコースや地形を活かしたチャレンジングなコースが特に人気で、コース間の距離が近く移動がスムーズなことから、一度の滞在で複数のゴルフ場でのプレイを楽しむことができると好評です。
三重県桑名市にあるナガシマスパーランドは、テーマエンターテインメント協会(Themed Entertainment Association:TEA)が発表した「世界で人気のテーマパーク」のランキングで第20位に入っています。また、「アジア・大洋州地域」では、(日本のテーマパークとしては)ディズニーランド、USJ、ディズニーシーに次ぐ10位に入っています。
実は、スパーランドを中心とするナガシマリゾート内には、1000人規模の会議やレセプションが行えるコンベンション施設「ホテル花水木」があります。
ほかにもイルミネーションランキングで日本一の「なばなの里」、巨大アウトレット「ジャズドリーム長島」、日本最大級の温泉「湯あみの島」など、さまざまな施設がコンパクトに集積した総合リゾートです。
さらに、F1日本グランプリや鈴鹿8時間耐久ロードレースといった数々の国際レースを開催してきた鈴鹿サーキットや、伊勢志摩サミットの首脳の表敬を受けた伊勢神宮などイベントスポットは豊富です。
MICE誘致のポイントは「知的好奇心を満たす仕掛け作り」
海外の観光客の方々は、日本の文化や歴史に大変興味を示されます。特に人気が高いのが「伊賀流忍者特殊軍団 阿修羅」による忍者ショーです。伊賀流忍者博物館では、心・技・体を基に年間1500回もの実演が繰り広げられ、そのスピードや迫力、テクニックによって彼らを楽しませています。
彼らからは、忍者に対して「普段は何をしている人たちなのか?」といった質問が寄せられます。伊賀衆が最も活躍した中世、特に戦国時代の史料によれば、彼らは数百人を単位として周辺の大名権力に合力する戦闘の専門集団で、いわば傭兵とも言うべき姿です。つまり、普段は農耕をしながら出稼ぎに赴くという姿が垣間見えるのです。
このように、三重県はMICE開催地としてのブランドイメージを確立する取り組みを進めていますが、ここで重要なのが、2016年に開催され無事成功を収めた伊勢志摩サミットの経験を活かすことです。三重県のMICE誘致戦略は、イベントの背景にある知的好奇心を満たす仕掛けをつくることがポイントです。
【次ページ】サミットを機に高まる三重県の「国際化意識」
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