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  • 2016/04/07 掲載

コンピテンシーとは何か?人事教育・評価に活用する方法、評価項目と導入事例を解説

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コンピテンシーとは、仕事で成果をあげる人に共通する「望ましい行動特性」を指すものだ。コンピテンシーの理論は1970年代に米国で生まれ、現在では日本でも、面接や人事評価にコンピテンシーを用いる企業が増えている。しかし、人事部門のPDCAサイクルである「採用/配置」(P)「教育/育成」(D)「評価/フィードバック」(CA)を回し、限られた予算で業績を上げるためのツールと認識される一方、その導入効果を疑問視する声もある。コンピテンシーに基づく人材の教育、評価は本当に効果的なのだろうか。コンピテンシーモデルを有効に活用するための目標設定や評価基準、導入に際して注意したいポイントを解説する。

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面接だけでなく、人事評価や育成にも有用なコンピテンシーの活用事例を紹介

コンピテンシーは仕事ができる人の「行動特性」

コンピテンシーとは
コンピテンシーとは、仕事ができる人の「行動特性」を指す。コンピテンシーを人事のPDCAサイクルの中心に据え、コンピテンシーを体系的に整理し、部門・職種や等級・職位などによって組み合わせたものを「コンピテンシーモデル」という。

 企業等の人材活用に用いられる手法として認識されているコンピテンシーは、もともと米国における特定の職務への採用基準(応募者にどのようなことが期待されるのかを示したもの)であった。

 日本においては、1990年代後半よりコンピテンシーが紹介され、従来の職能資格制度に代わる評価制度として認知されるようになった。たとえば、元日本ペイント人事部長の太田 隆次氏は、『アメリカを救ったコンピテンシー』などの書籍で、企業の実務家にわかりやすい形でコンピテンシーを紹介している。

 従来の職能資格制度は、職務遂行能力(主要な仕事を一定のレベルで遂行するのに必要な能力)のうち、潜在的であれ顕在的であれ、保有している能力(「〜ができる」)を中心に評価するものだ。これに対し、コンピテンシーモデルは、職種別に高い業績を上げている従業員の行動特性を分析し、その行動特性をモデル化し、実際に行動で示される能力(「~をしている」)を評価する仕組みだ。このため、成果への連動性が高いというメリットがあるといわれる。

コンピテンシーモデルが重視される理由と成功の条件

 一方で、コンピテンシーモデルは、評価基準が曖昧だということや、「嫌いな部下に低い評価を付ける」など評価主体が恣意的な評価を行うことが可能だということが指摘されることもある。そこで、実際に人事の実務でどのようにコンピテンシーモデルが取り入れられているか、専門家である人事政策研究所 代表の望月 禎彦氏に話を聞いた。

 望月氏は、ユニ・チャームの人事部を経て、約25年前の1992年に人事政策研究所を立ち上げた。独自のコンピテンシー理論を駆使し、コンピテンシーモデルの導入先は中堅企業100社、勉強会・講演会参加企業は500社以上に及ぶ。

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人事政策研究所
代表
望月 禎彦氏
「もともと、コンピテンシーモデルに興味を持ったきっかけは、ユニ・チャーム時代の社長秘書経験にあります。創業者である高原社長(当時)が『行動』『実践』を重視する方で、その方のもとで人事制度見直しなどを経験する中で、300~400項目くらいの『仕事ができる人の行動モデル』というものが確立されました」(望月氏)

 当時はまだ、コンピテンシーという概念は一般に浸透しておらず、いわばコンピテンシーの原型と呼ぶべきものだ。その後、望月氏は独立し、コンピテンシーモデルと出会い、上述の300~400項目を厳選、整理し、A~H群の8つの分野、全75項目の「オリジナルコンピテンシー」を作り上げた。

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ビジネスシーンにおける仕事ができる人の行動特性を分類したコンピテンシー。A群には「自己の成熟性」に関する項目が挙がっている。
(B~H群を含めた全コンピテンシーは次ページ)
(望月氏提供資料から作成)


「オリジナルコンピテンシーは、『A群:自己の成熟性』『B群:変化行動』『C群:対人』など、8つの分野(群)、75項目に分類され、業種、業態を問わず多くの企業で当てはまる汎用的な内容になっています」(望月氏)

 しかし、中小、中堅企業では、ロールモデルとなる「仕事ができる人」が大企業に比べて少ない場合もあるのではという疑問も湧く。その点について、望月氏は、「仕事ができる人の行動特性ということで、それぞれの人の中にある『得意分野』に着目すればよい」と語る。

「コンピテンシーモデル導入を成功に導くには、3つのポイントがあります。1つ目は『自分たちの手で作ること』、2つ目が『継続的に更新すること』、そして3つ目が『コンピテンシーの性質を理解し、それだけに頼らないこと』です」(望月氏)

コンピテンシー導入は「3ステップ方式」で

 では、実際にどのようにコンピテンシーを導入しているのか、そのプロセスを紹介する。望月氏が提唱する方法は、グループワーク形式でカードと一覧表を用いて行う「3ステップ方式」と呼ばれるものだ。

<3ステップ方式>
(1)選ぶ
(2)書く
(3)まとめる

 まず、(1)の「選ぶ」だ。参加者はいくつかのグループに分かれる。望月氏によると、最小単位は「1グループ3名、2グループ(6名)」だそうだ。参加者は、オリジナルコンピテンシーが書かれたトランプ大の75枚のカードから、「仕事ができる人がしている行動だ」と思うカードを5枚選ぶ。

 カードにはどんなことが書かれているのか、一例を示そう。たとえば、「A群:自己の成熟性」には、「『冷静さ』:感情に動かされることなく、落ち着いていて物事に動じない」というカードがある。また、「C群:対人」には、「『親密性/ユーモア』:心からの感じの良さ/その場を和ますユーモアがある」と書かれたカードがある。

 各メンバーが5枚ずつカードを選び終わったら、今度はチームで5枚に絞り、最終的にメンバー全体で5枚に絞っていく。

 カードを選んだら、次に(2)の「書く」に移る。たとえば、選ばれたカードが「親密性/ユーモア 心からの感じの良さ/その場を和ますユーモアがある」だとしよう。このうち、「親密性/ユーモア」がコンピテンシーにあたる。そして、「心からの感じの良さ/その場を和ますユーモアがある」というのが、コンピテンシーを定義する要素だ。

 参加者は、選ばれた5つのカード(コンピテンシー)に対応する「代表的な行動」を、自分たちの業務に当てはめて、付箋紙に具体的に書いていく。

 そして、最後のステップが(3)の「まとめる」だ。付箋紙に書かれた「具体的な行動」をグルーピングし、見出しをつけ、模造紙に貼って構造化していく。望月氏によると、ここまでの作業の目安の所要時間は約6時間ということだ。

【次ページ】コンピテンシーモデルを導入した自動車販売会社の事例
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