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- 2016/02/18 掲載
トヨタが考える「究極の自動運転」とは? 2020年までにどこまで実現可能なのか
「MOBILITY TEAMMATE CONCEPT」をベースにした究極の自動運転
トヨタの鯉渕氏は「我々の自動運転に対する考え方は、すべての人に移動の自由を提供するが、ドライバーが運転したいときに運転を楽しめないクルマはつくらないということ。逆にドライバーが運転できないときは、安心してクルマに任せられる技術を目指す。“MOBILITY TEAMMATE CONCEPT”をベースに、人とクルマが協調する究極の自動運転を考えている」と語る。
このような自動運転を実現するために、トヨタでは1980年代から開発をスタートした。当時の技術は、前方車のテールランプを認識して追尾したり、レーンマーカーの上を走行する簡単なものだった。その後、1990年代に入って、自動車単体ではなく、インフラ利用も含めたバスの自動運転システムに着手した。
さらに2000年以降から自律型システムを手掛けた。最近ではトヨタのような研究だけでなく、自動運転にまつわる多くの競技会が催されるようになってきたが、まだ本当の意味での自動運転は実現できていない状況だ。
では、なぜいま自動運転が盛り上がっているのかといえば、やはり「外部」の動きが活発化した影響が大きい。米国ではDARPA GRAND ChallengeやUrban Challengeなどの競技会が頻繁に行われるようになった。もともとDARPAでは、イラクやアフガニスタンなどの戦争で、地雷を踏んで命を落とす兵士が後を絶たないため、無人で物を運ぶ自動運転を研究していた。
また近年になって、いくつかの技術革新もあり、自動運転の期待が高まってきたことも後押している。1つ目の進化は、カメラセンサーの高解像度・高感度化だ。レーザースキャナーも高性能になり、3次元で状況を把握できるようになった。2つ目はハードウェアの進化だ。いまのiPhoneのCPUは、DARPA GRAND Challenge当時のコンピュータよりも遥かに性能がよく、ここ10年で劇的に性能が向上した。
3つ目はソフトウェアの進化だ。自動運転の基本アルゴリズムが確立され、機械学習(マシンラーニング)の認識ロジックの性能も高まった。周辺3D網羅認識技術が大きく進展したのである。
一般道を走る自動運転研究用の実験車は、カメラのほか、ミリ波レーダー、GPS、姿勢センサーに加え、3次元360度のレーザースキャナー(LIDAR)も搭載され、空間情報から自己位置推定を行って走れるようになった。トヨタでは先行して北米の一般道で試験を始めたが、国内でも実験を行っている。
自動運転に求められる要素技術:自己位置推定と高精度なマッピング
これらは技術的要素だが、自動運転が実現するには、さらに交通ルールの整備も重要になる。鯉渕氏は「いくら技術が進歩しても、歩行者が突然飛び出す可能性もある。自動運転のメリットだけでなく、リスクもあることについて、社会的なコンセンサスを得る環境づくりを考慮していくことも大切」と強調する。
自動運転では、ドライバーが運転する際にやるべきことをシステムに代替させている。つまり、走れる場所を認識し、自らの位置を推定しながら目標走路を決め、衝突せずに交通ルールを守って走行するのだが、安全運転のためには、GPSの精度だけでは足りない。
「GPS単独では、最悪で50m程度の誤差が出る。GPSに加えてジャイロを利用しても約30m、さらに最新ソフトウェア技術を使って10mの誤差が最悪で生じることもある。そこで認識センサーと高精度な地図を使って、横10㎝・縦50㎝以下まで自己位置推定の精度を高めていく」(鯉渕氏)
また高精度な地図は、自己位置推定だけでなく、センサー情報との差分による障害物の検出にも役立てられる。このような網羅的な認識に加え、機械学習を用いて侵入してよい場所を学習する技術も研究されている。
【次ページ】トヨタが推進する、2020年を見据えた自動運転システムとは
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