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- 2015/08/24 掲載
デキる営業もデキる発注者も「完全な要件定義」を求めない(2/3)
完璧な要件定義を目指さないことの重要性
一方の発注者は、獲得したい物やサービスの「要件」を定め、その「品質、コスト、納期」を適切にマネジメントすることがその業務の本質となる。「要件と品質基準を定め、適切なコストと納期で発注・納品サイクルを運用する」という行為は、一見当たり前のことに思えるが、実際のところはこれが極めて難しい。
たとえば、新たな業務管理システムの導入といったものを考えてみる。それは文字通り業務にまつわる様々な情報を取り扱うシステムである。そして業務というものは単純な正常系のフローでだけ処理されるものではなく、様々な「非・正常系フロー」すなわち、例外処理を含めた「業務従事者が、欲しい情報を欲しい時に、欲しい形で確認でき、やりたいように処理できるもの」であることを要求するものだ。
システムとは、本質的に正常系をベースとして設計されるものであるため、納入されたシステムが、当初からその意図通りのパフォーマンスを発揮できるということはなかなかない。マニュアルを整備し、トレーニングを実施するのは当然のこと、現場の声を反映した微調整、業務フローの見直しを繰り返していくことで、初めてようやくなんとか業務が回るようになる、という経験をしている人も多いのではないだろうか。
どうしてこのようなことが起きるのだろうか。開発手法やフレームワーク、はたまたプロジェクトマネジメント手法、いやいやUXだなんだと、様々な要因を挙げることは可能だが、本質はそこではない。ありとあらゆる現場で起きているのは、「要求する品質」と「それを実現するための納期とコスト」のバランスがとれていない、という単純な現実である。
あともう少しだけ時間をかけて要件を詰めておけば、あともう少しだけ手間をかけてマニュアルを整備しておけばこんなことにはならなかったのに・・・という後悔の念とともに、システムはカットオーバーの日を迎えるのだった。
そもそも、あらゆるものを充足する調達行為は存在しないものであるが、システムの調達ほど難易度の高いものも珍しい。何しろ、そこで獲得されるのは「モノ」ではなく「振る舞い」だからだ。必要とされるものがどういったものであるのかということがいかんとも定義し難い。だからこそ、自社の求めるものは一体何なのか、何を優先していて、何は気にしないのか、これを伝える必要が生じるのである。
ここで、デキる発注者とは、「営業サイドの強み・弱みや事情を考慮したうえでいかに最適な情報を提示することができる」というその一点を有するかどうかにつきる。自社が求めているものが、予算との折り合いなのか、スケジュールなのか。経営者の理想の実現なのか、はたまた現場の納得感の醸成なのか。ありとあらゆる条件を譲歩していては受注側のビジネスは立ち行かなくなるので、営業はなんとかしてコストをかけずに要望を満たすための道を探す。そのみちしるべとはただひとつ、発注者の言葉を手がかりにするしかないのである。
先に「有能な営業は調達業務を肩代わりする」と述べたが、実のところこれは、「調達担当者が、営業業務を肩代わりしてあげている」とも言える状況である。有能な発注者と納入者が共に仕事をすることになると、互いが互いの工程を肩代わりするという、ちょっと不思議な相互依存的関係が形成されることになるのだ。
【次ページ】幸福な納入にいたる道
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