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- 2015/06/10 掲載
旭硝子 神庭基氏インタビュー:面白くなってきた「ストーリーとしてのアジャイル開発」
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IT部門が「もうけ」につながる4つの取り組みテーマを設定
神庭氏:クラウドだけに留まらず、主要なITの領域について「技術ロードマップ」を作ろうという取り組みを、約3年前からスタートさせました。
情報システムセンターのメンバーに対して、今何を考えているか、あるいは何をやりたいかをExcelシートに書いてもらい、そこから我々が取り組むべきテーマを絞り込んでいきました。その時の基本的な視点が「もうけにつながるITは何だろう」という発想です。
ここでいう「もうかる」というのは、コストが大きく下がるといったことも含まれます。コストが下がれば利益が増え、それがもうけにつながるからです。あるいは経営判断のスピードが速くなることももうけにつながります。より迅速に意思決定できれば機会損失が減り、その分、もうかる。
最初に集まった項目は約30で、そこから最終的に4つのテーマを設定しました。それがクラウド活用、デバイスフリー、アジャイル開発、BIツールの活用(経営情報の見える化)で、これらはAGC plusを支える現在の攻めのITにも結び付いてくる取り組みテーマだと言えます。
クラウドを活用することにしたのも、クラウドを使うときっともうかるだろうという結論に達したからで、だったら真剣に考えようということで、2年前から人もお金も投下して、本格的に調査を開始しました。すると2014年の春頃に、実際に安くなるということが決定的になり、その直後にAmazonがAWSの価格を下げました。AWSを利用すれば、必要なコストをどう高く見積もっても同等になることが分かりました。だったら「やるしかない」となったのです。
取り組む基準は「ストーリーが描けるかどうか」
──「技術ロードマップ」での「もうかる」という視点について、それを判断する定量的なROIとしては、何か設定されたのでしょうか。神庭氏:具体的な数字としてのROIは、最初は出てきません。大事なのは「もうかりそうだというストーリーが描けるかどうか」で、技術ロードマップの中に書いてあるのも、これができるときっとこうなる、そうすればこんなことが可能になり、それがこんなもうけにつながる、といったさまざまな仮定のストーリーで、実はあまりITではないところにフォーカスしたものです。
そしてそのストーリーを実現するためにはどんなITが必要かを、逆に後からプロットしていき、それをサマライズし、カテゴライズした結果、導き出されたのが先の4つのテーマだということです。
要は、もうかる流れができそうだというストーリー性を大事にしたということで、やってみなければ分からないことがたくさんありますし、世の中の環境もどんどん変わっていきます。クラウドもやってみて、数字がだんだん積み上がってくることで、結果としていくらもうかるかが分かりました。
この技術ロードマップの作成は、IT組織として非常に大きな転機になったと思います。テーマを絞り込んでいく過程では、メンバー全員でおおいに盛り上がりました。今回は日本/アジアを対象に行いましたが、次は欧米のIT部門のメンバーにも加わってもらおうと考えています。これは他社のIT部門の皆さまにも、是非やっていただきたい取り組みですね。
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