- 会員限定
- 2014/08/13 掲載
NTTドコモ、HIS、マネックス証券のAWS活用事例、クラウドはビジネスに何をもたらしたのか
NTTドコモ:AWS活用によって得た「新しい開発カルチャー」
AWS Tokyo 2014に登壇したNTTドコモ 執行役員 研究開発推進部部長 栄藤稔氏は冒頭、「ドコモはBig AWSユーザー」と宣言。同社が展開する「しゃべってコンシェル」の音声認識エージェントによる自然言語処理を中心に、現在Amazon EC2において数千インスタンスを組織で活用している状況という。
NTTドコモでは2010年当時、サービス開発ではウォーターフォールモデルの開発スタイルだった。このモデルは、通信事業会社にとっては当たり前で、「大きな通信インフラ、社会インフラに対する設計手法としては正しい方法」(栄藤氏)だった。
しかし、成功するかどうかわからない「しゃべってコンシェル」のようなWebサービスの開発においても、2010年当時はウォーターフォールモデルで開発していたのだという。
「我々は、それを変えなければならなかった」(栄藤氏)。そこで同社が選択したのがAWSだった。その決断によって、同社の開発のカルチャーも徐々に変わっていったという。
「AWSを使うことで新しい開発コミュニティともつきあいがはじまり、我々の考え方も変わっていった。たとえば、『失敗のためにデザインする』『安くデザインする』『開発パートナーを発注先として見ない』『小さく作って大きく伸ばす』といった考え方だ」(栄藤氏)
実際に、音声認識エージェントは数人で開発し、開発期間も圧倒的に短い。開発しながら保守・運用を行い、市場の反応を見て仕様を変えていった。
いうまでもなく、NTTドコモは日本を代表するような大企業だが、栄藤氏は同社のような大きい組織でも、アジャイル開発は可能であると強調した。
「AWSを検討するとき、セキュリティは本当に大丈夫なのか、性能は出るのか、SLAはしっかりしているのかなど、いろいろなことを考えるだろう。しかし、現在のエコシステムを壊したくなかったり、スイッチングコストが高かったりといった理由で採用に至らない企業も少なくない。しかし、使わざるをえない状況に立たされることがある。NTTドコモの場合、音声認識エージェントを数ヶ月で立ち上げるプロジェクトがそれだった。新しいことに挑戦しなければ、何も生まれない」(栄藤氏)
HIS:何がAWSに合うかではなく、まずはAWSで考える
「たとえば、タイでいつまでに、インドネシアでいつまでにといった状況が続くので、日本で対応していたのでは間に合わない。そこで、IT基盤としてAWSを選択した。AWSなら、海外で動いているシステムを日本からコントロールできるし、その逆も可能だ。リソースの増減も容易で、初期投資もかからない。さらに、スピードも速い。持たない、面倒を見ないことで、もっとお客さまに時間を費やし、戦略部門のひとつになることを目指していたIT部門にとって、AWS選択は不可欠だった」(髙野氏)
同社がAWSの活用をスタートしたのは2012年からだ。まずは、小規模なWebサイト等から利用を開始し、翌2013年には、AWS Direct ConnectでデータセンターとAWSを専用線で接続した。その結果、低レイテンシーで安定した高速通信が可能となり、IT部門の意識が大きく変わったという。
「社内スタッフはもちろん、お客さまに対しても安定的にサービスを提供できることがわかり、マイナスになることは何もないと確信を持った。その結果、今年に入ってからは、海外40カ国で立ち上げているオプショナルツアー、レンタカーのサイトにもAWSの活用を始めている。いまは、何がAWSでできるのかを考えるのではなく、まずやりたいことをAWSで考えて、できないことがあれば他の選択肢を考えるようになった」(髙野氏)
【次ページ】マネックス証券のミッションクリティカル事例、東大 喜連川優教授
関連コンテンツ
PR
PR
PR