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- 2013/06/26 掲載
ライオン、国分、カシオ、ラックが語る、10年後に向けてIT部門が今できること
ITR 内山悟志氏:ITは10年変わらず、変革するキーワードは「トライブ」と「予測市場」
IT部門が変わるための3つのテーマ
少子高齢化やグローバル化が進み、クラウド化はますます浸透して、さらなる新技術も台頭する。そんな10年後の世界で組織が成功するために、IT部門は今どのような取り組みをすべきなのか。内山塾は2008年1月から開始されたITR主催のフォーラムで、企業のIT部門に所属する20~30代の若手社員のための勉強会だ。すでに16期開催されており、のべ320人の塾生を輩出しているという。
今回の発表内容は、昨年のIT Trend 2012閉会後、内山氏がこれまでの成果をプレゼンテーションしてみないかと提案。それを受けて有志が集結してアフタースクールを開催、「10年後のIT部門にバトンを渡すために、今何をすべきか」を1年間かけて議論し、まとめたものだという。
プレゼンテーションの最初に登壇したライオン 統合システム部 森山卓也氏は、IT部門に求められる役割をブレーンストーミングで洗い出すことから始めたと説明した。ルーティン業務の省力化、人材の有効活用、トライブなどのキーワードが次々と提示された。
こうしたキーワードを整理した結果、3つのテーマが浮かび上がってきたという。
B:競争優位性の向上(コラボレーションの促進、ビジネススピードUP、人材の有効活用)
C:新たなビジネス価値の創出(“トライブ”によるイノベーション、気付きを与える支援、R&D)
これらについて、森山氏は「現在は社内リソースの大半がAの“守りのIT”に集中しており、組織の成長を促すBやCにはあまりリソースが割かれていない」と指摘。「10年後には競争優位性、守りのIT、ビジネス価値の創出の順番で分配されるのが理想だ」と述べた。
しかし、人材も予算も足りず、新しい挑戦がなかなかできない現状で、どうすれば10年後の理想的な配分にステップアップできるのか。
これに対して森山氏は、「ビジネスの差別化とリスクに応じて、IT部門の実際の業務内容(企画・開発・運用)を、IT部門、事業部門、社外の役割分担をテーマごとに明確にすれば、具体的な方針が見いだせるのではないか」とした。
事業部門が主体となり、IT部門はガバナンス面でサポートする
まず、Aの安全・確実なビジネス推進について、森山氏は「差別化にはつながらないが、企業としての一定のリスクを与えるビジネス」と定義。それは今日のビジネスが依存する情報システム基盤であり、IT部門は企画・開発・運用まですべて背負い込んで対応、予算の大半もそこに割かれていると指摘した。だが、こうした自動化やアウトソース可能なルーティン業務にリソースや予算を割くのは理想的ではない。IT部門は企画の一部を担当し、あとのルーティン業務は極力アウトソースする形を目指すべきと森山氏は提案する。
「まずは非コア業務を明確にし、アウトソースのために的確な技術評価とコスト管理を確立して、ベンダー/プロジェクトマネジメントの手法を整備する。そうすることで、より事業戦略やイノベーション面でIT部門が動きやすくなるはずだ」(森山氏)。
続いて、Bの競争優位性の向上だが、「明らかな差別化要素があり、他社との競争優位が維持できる」分野であり、事業部門が積極的に関わるべきテーマである。もっとも、現状は事業部門が企画を出し、その後の開発や運用はIT部門に押しつける形が多い。
10年後のあるべき姿は、表のとおりだ。事業部門が主体となり、IT部門はガバナンス面でサポートする。「10年後には技術が進歩し、事業部門でもビジネスツールを開発・運用できるようになっているだろう。そして、そのための知識と経験を得るために、積極的な人材交流が進むと考えられる」。そのためにも、意思決定プロセスを簡素化できるフラットな関係を構築し、社内のタテヨコ方向のコミュニケーションを活発化させたいと、森山氏は述べる。
このテーマに現在取り組んでいるのが、ユナイテッドアローズだ。同社はこれまで、POSシステムから在庫確認ができず、販売機会を失いがちという課題を抱えていた。そこで、ユーザー部門からの提案でiPhoneによる確認システムを導入、店員はその場でリアルタイムに在庫状況を確認できるようにした。
「当初は在庫確認メニューが4つだったところ、事業部門からの提案でさらに便利で充実したメニューが組み込まれたと聞く。IT部門と事業部門がコミュニケーションをとりながらシステム開発を実施した好例だ」(森山氏)。
【次ページ】IT部門が新たなビジネス価値を創出する
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