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健康食品や医薬品などのインターネット通信販売のパイオニア、ケンコーコム。2000年5月に「ケンコーコム」を開設以来、今や約20万点の商品を取り揃えるまでになった。しかし、商品を拡充すると、処理すべきデータも同時に増える。そのため、「システムおよび情報の集約と一元化は大きな課題だった」とケンコーコム、取締役の新井達也氏は語る。そこで同社は、基幹系システムであるSAP ERPの稼働環境として、アマゾンの「AWS(Amazon Web Services)」を採用。なぜAWSなのか。「ガートナー エンタプライズ・アプリケーション&アーキテクチャ サミット 2013」で、導入の背景やSIer選定、効果などが語られた。
日々増大するデータと乱立するシステムの集約と一元化
健康関連商品などを扱うECサイト運営などを手がけるケンコーコムは、実店舗では難しい豊富な商品ラインアップを魅力に事業成長を続ける企業だ。回転率の低い少数市場向け商品も、ネット店舗では欠かせない収益源になる、というロングテールの概念をベースに商品を拡充し、今では約20万点を取り揃えるまでとなった。
一方、こうしたビジネスでは、処理すべきデータも同時に爆発的に増える。「ベンチャー企業時代から連続的な成長の中で、必要なシステムをその都度追加してきた。そのため、システムは分断され、乱立していた。その結果、データの二重管理や不整合性が発生し、内部統制上でも問題があった。システムおよび情報の集約と一元化は大きな課題だった」とケンコーコム、取締役の新井達也氏は当時を振り返る。
こうした課題に加え、健康関連商品は必要なときに素早く届けなければならない。待っている顧客に安定して商品を供給できるスピード感、そしてBCP(事業継続計画)の概念も同社にとって求められるものだった。
さらに同社は他のECサイトのパートナー法人などに、自社在庫の商品を提供するドロップシッピング事業も展開している。リテイル事業(ECサイト関連)とその他事業(ドロップシッピング事業)という2つの異なる事業をどのようにERPで集約するかもテーマだった。
SAP ERP選定とAWS採用の理由は?
同社は2011年3月、東京と福岡の2拠点に業務を分割し、その際にインフラの一部をオンプレミスからAWS(Amazon Web Services)へと移行していた。それ以前から、運用の経験やメリットを実感していたこともあり、AWS前提で選定を開始したという。
このとき、50台以上のサーバをAWSに移行した。それにより「リプレース費用を考えると、月600万程度のコストダウンができた」と新井氏は明かす。
また、SAP ERPを選択した理由は、「会計や在庫、発注といった物流領域まで踏み込んでサポートできるのがSAPだけだったから」と新井氏は話す。さらに、導入経験が豊富なSIerが多いことも決め手だった。また、「中小規模企業で意思決定が速く、ビジネス展開にスピード感があるという特徴に対応可能なパッケージは、SAP ERPだった」と新井氏は言う。
2011年9月、同社はSIerの選定を開始し、NTTデータグローバルソリューションズに決定した。導入ポイントが簡潔にまとまった提案書は、事業展開の速い同社にとってありがたかったという。
こうして2011年10月、導入プロジェクトが始動し、10か月後の2012年8月に本格運用が始まる。
SAP ERPで実装したのは、会計(FI/CO)と購買(MM)だ。アドオンについては、夜間に数千社の仕入れ先へ自動発注するEDIとの連携を含め、相当数のアドオンを作り込んだ。
その際に、インターフェイスでの通信の遅れなどが懸念されたが、実際は問題なかったと新井氏は言う。
「リアルタイムといっても、小さなファイルを圧縮して送信するという仕組みなので、遅れなく処理できることが分かった。中には大きなバッチファイルを送信するインターフェイスもあるが、ここでも運用に問題ないと判断できた。」(新井氏)
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