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  • 2012/07/23 掲載

ITを使う立場と提供する立場の100名が入り乱れて激論!「これからのITを考える大会議」レポート

ITは役立っていない? ユーザーとIT企業に深い溝

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企業の事業発展を支える基盤を目指し、さまざまなシステムを提案、構築してきたIT企業。しかし、実際はそれほど役立っていないという衝撃の回答がユーザー企業から返ってきた。理想と現実の隔たりはどうすれば埋められるのか。ワールドカフェと呼ばれるスタイルで、ユーザー企業とIT企業が入り乱れて本音をぶつけ合い、これからのITを真剣に模索した「これからのITを考える大会議」の様子をレポートする。

ITは役立っていない? ユーザーとIT企業の意識に深い溝

 ユーザー企業への貢献をIT企業は、十分にできているのか。顧客のITシステムは、本当に事業経営で役立っているのだろうか。顧客の要望をできるかぎり汲み取り、希望に近いITシステムを提供してきたつもりだが、実際はどうなのか。顧客の反応を肌身で感じてきたIT企業の営業からは、そんな疑問が漏れ聞こえる。

 2012年7月5日、都内で開催された「これからのITを考える大会議~ユーザーと営業が共に考えるワールドカフェ~」は、こうした声を背景に企画されたイベントだ。もともと10名の有志からスタートしたが、今回は約100名が集まった。

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「これからのITを考える大会議」会場の様子

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ノークリサーチ
代表取締役社長
伊嶋謙二氏
 きっかけは、3.11を機に、2011年に20名の有志によって開催されたパネルディスカッション形式の会議が行われたこと。それを起点に今年もさらに問題意識のある人々が集まった。

 今やITは単なるインフラではなく、事業戦略や意思決定を支え、イノベーションを促進することが求められている。より良い未来を目指すためにも、まずは互いの意見を交換し、建設的な議論をしたい。その場として提供されたのが、本会議である。

 イベントに先立ち、調査会社のノークリサーチがZDNet Japanの協力の下、アンケート調査を実施した。その結果について、ノークリサーチ 代表取締役社長、伊嶋謙二氏は、「ITは売上の増大という経営課題の解決にどの程度役立っているか」という質問について、IT企業から一番多かった回答が「やや役立っている」(51.9%)だったのに対し、ユーザー企業は「あまり役立っていない」(42.4%)と感じていると発表した。

 「ユーザー企業のITに対する期待感は低い」と現状を指摘した伊嶋氏は、IT市場全体がどうなるかではなく、どうすれば企業にとって役立つITになるのか、どうすれば本当に役立つものを提供できるのかを互いに議論すべきと提案した。「その方向性を考えるチャンスとして、本イベントを活用してもらいたい」(伊嶋氏)。

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ITは「売上の増大」という経営課題の解決に
どの程度役立つと「期待」しているか?
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ITは「売上の増大」という経営課題の解決に
どの程度役立っているか?
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「費用の低減」という経営課題に対しては
クラウド活用にどの程度「期待」しているか?
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「費用の低減」に対するクラウド活用実態は
どの程度、どの段階か?
母数:ユーザー企業=85、ベンダー/SIer=79
期間:2012年6月22日~7月3日
アンケート実施:ZDNet Japan
アンケート集計:ノークリサーチ

手探りから活発な意見交換へと発展する会場

 こうして幕を開けた大会議は、ワールドカフェ形式で行われた。ワールドカフェとは、カフェのような空間で対話する手法だ。対話を通じて相互理解を深められ、一体感が得られる。最近は、一般企業や自治体、研究会などで採用例が増えている。

 同イベントの進行は、主催者のひとりである営業創造の戦略デザイン部、古杉和美氏が務めた。古杉氏はまず、アンケートの自由記入欄を一部抜粋した紙を配り、読む時間を作った。「ユーザーの声」と題したその紙には、「製品ベンダー、SIerに対して一言申し上げたいことは?」と「全体についての自由な感想」がまとめられた。その中では、下記のようなユーザー企業からの厳しい意見が並んでいた。

「会社の事業内容を理解した上で提案してほしい」
「通り一遍の提案が多い」
「新しいインフラにおよび腰すぎる」
「新商品だからとウチの業務にあまり効果のない商品を売り込みに来ないでほしい」
「クラウドやビッグデータという流行り言葉をシステム提案に盛り込んでくる営業の話は、話半分で聞くことにしている」
 会場が現状を再確認したところで、古杉氏はワールドカフェの手順を説明した。

  1. 5人1組で1つの「島」を作る
  2. 5人のうち1人が「ホスト役」になる。ホスト役は最後まで島から動かず、島での議論の進行を担当する。
  3. 他の4人は島を渡り歩く「旅人役」。
  4. 議論のテーマを与えられたら、まずは今いる島で話し合う。その内容は、島に置かれた大型の模造紙とマーカーを使って落書きのように書き込んでいく。進行はホスト役が務める。制限時間は7分。
  5. タイムアップしたら、4人の旅人は他の島へとばらばらに渡り、同様のテーマについて7分間議論する。これを2回繰り返す。
  6. 最後は自分のいた元の島へと帰り、旅人は聞いてきた話を報告する。
  7. これを1ラウンドとする。今回は4ラウンド行う。

 まずは、知り合い同士で着席している状態を崩すため、古杉氏は移動を促し、結果、15の島が完成した。

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知り合いと離れて見知らぬ人のいる島へと大移動する参加者

 次に、ユーザー企業はオレンジのシール名札、IT企業は青いシール名札にそれぞれ名前を書き、胸に付けた。そして、A4用紙に「名前・仕事・期待すること」を記入し、ホームグラウンドとなる島の仲間で自己紹介を行った。

 準備が整ったところで、5つの「ラウンド」と呼ばれる段階を踏んだテーマが用意される。各ラウンドのテーマは、次のとおりだ。

R1:企業にとっての「IT」とは?
R2:「IT企業」の顧客への役割とは?
R3:企業の「IT」利活用の状況は?
R4:ユーザー企業とIT企業のこれからの関係はどうあるべきか?

【R1:企業にとっての「IT」とは?】

 まず第1ラウンドでは、「企業にとっての『IT』とは」が提示された。ホームグラウンドで議論した後、旅人は他の島へ散り、ホスト役はやってきた旅人にこれまでの経緯を説明し、さらに議論を深める。

 ここでは、「ITは高いというイメージがある」「ITはイノベーションを与えるもの」「人ができることと、ITしかできないことを考える」「ITの捉え方は人によって異なるので、意識のすりあわせがまず必要」など、思い思いの意見が飛び交った。

【次ページ】何かを変えたいというモチベーションにつなげる
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