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  • 2012/02/29 掲載

父が息子に贈るコンサルティング講座(13)~「仕組みとして結実させる-1」 親父が、本当に変わった!

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親父が、いつものようにソファーでテレビを見ていた。僕は、ビールを持ってソファーの向かいに座った。親父は、世界の不愉快を一身に背負ったようなむずかしい顔をして、漫才を見ていた。時々、右の唇だけを斜め上に引き上げて、グエッっとトノサマガエルが鳴くような声を出す。これでも笑っているのだ。今日の漫才は、相当おもしろいらしい。
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「あの」

今言うべきか悩んだ。

「どうした、便秘か」

「違います」


親父は、僕をちらっと見た。

「例の、グローバル営業改革はどうなった」

「そっちの方は順調だよ。谷川事業部長がリーダーシップを発揮して、順調に進んでいる。谷川事業部長は、自ら『グローバル衆知結集』という戦略を出した。世界の営業部門で生み出された成功事例や営業ノウハウを集めて標準化して、グローバルグループで活用する。この戦略は、日本ではなくて、まずヨーロッパで完成させることになったよ」


親父は、ほおっ、と言って、僕の方を見た。

「今僕らは、この戦略を実現する仕組みを考えているところだ」

「あの事業は、新興国よりまずヨーロッパで、製品普及率が上がっていくからな」

「そのとおり。ヨーロッパ各国で、営業業務もバラバラだからね」

「お前、グローバル衆知結集の仕組みは、どうやって作るつもりだ」

「さすがにそれなら大丈夫だよ。ユーザー要件を基に、業務プロセスやITを考えるのは専門だからね」

「要件は、誰が決める」

「誰って。ユーザーだよ。ヨーロッパの営業部門の人たちかな」

「彼らが、グローバル衆知結集戦略の要件を出せるのか」

「うん。え。いや」


確かに、ヨーロッパの現地法人で、谷川事業部長が決めた戦略に対する要件を聞いても、答えが出る訳がない。あれれ。どうしよう。

「お前は今まで、すでにある業務プロセスを改善することしかしてないんだろう」

そうか。そうだ。僕は、自分が、新しい仕組みをゼロから考える方法を知らないことに気がついた。親父は、名残惜しそうに漫才を見て、グエッと一笑いするとテレビを消した。

「戦略は、最後には、組織、リソース配分、そして業務プロセスや会議体などの仕組みに落として、初めて実現される。日本企業の中には、今後の戦略を、グローバルグループで実現させなければならないところが多い。グローバルな仕組み化は必須だ。情報システム部門としても、今後戦略実現を支援する場面が増えるだろう。するとシステム部門も、現状がないものの仕組みを作る方法を持たなければならない」

「今ない仕組みって、どうやって作るんだろう」

「まずモデルを考えることだ」

「モデル?」


こうして、意図していない形で、親父のコンサルティング講座が始まった。今日はそういう話をしにきたんじゃなかったんだけど。

【次ページ】戦略を仕組み化する方法

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