- 2008/03/25 掲載
ひろさちやの究極の人生相談:囚人たちのためのルールブック(4/4)
わからないことで悩むな、サイコロで決めろ
【質問】ヘッドハンティングの声がかかった。ベンチャー企業の取締役だ。まだ名もない企業で、社長は私より20歳も若い。今の立場も安定しているし、やりがいもある。しかし、こうした形で声がかかるというのも、嬉しいものだ。給与はひとまず上がるが、その後は業績次第ということになる。ストックオプションもあるようだが、まだ紙くず同然。だけど、これは大化けする可能性もある紙くずなわけだ。正直迷っている。
【答】
新しい会社に移らずに、今の会社に残ったとしても、早晩、今の会社が潰れるかもしれない。移ったら移ったで、その会社が潰れるかもしれない。未来のことは誰にもわからない。そんなことに悩みなさんな。
好きなようにすればいいんだ。ただ、この人には奥さんがいるだろうから、奥さんの意見も聞くべきだ。やっぱり女房あっての自分だから。
人間って、おもしろいことに、もし奥さんが「よしなさい」と言うと、行きたくなるんだな。それで、奥さんが「行けばいい」と言うと、今度は行きたくなくなる。そんなふうに、女房の意見をリトマス試験紙だと思って、一度聞いてみるといい。それで自分の気持ちが変わるかもしれないし、はっきりするかもしれない。
それで、最終的には奥さんと一緒に決めたほうがいい。
そんなときのための、私自身の解決方法がある。
私は62歳のときに、ある宗教系の女子大から教授で来てくれと頼まれた。週2回でいいという。それで年俸は1300万円。1回当たりにすると20万円になる。定年が70歳だから、1億円を超える。女子大ということもあって、8割方、私は行く気になっていた。それで女房に相談した。ところが女房は「止めなさい」と言うんだね。私は48歳で大学を辞めているのだけれど、「一度辞めているのだし、今さら行く必要はないんじゃない?」というのが女房の意見だった。子供たちに聞いてみたら、彼らも「お父さん、もう止めなよ」と言う。それで大変迷ってしまった。
それで女房と2人でお寺に行って、和尚さんに般若心経をあげてもらった。その上で、女房と2人で1つずつサイコロを持った。偶数が出たら行く、奇数が出たら止める。それでサイコロを転がした。結果は5と4だったので、止めることにした。
和尚さんには、「そんな問題をサイコロで決めるのか?」と驚かれた。女房と私ではわからない。人間の知恵ではわからない。だから、仏様に決めてもらうことにしたんだ。そう和尚さんには説明した。
この方法は、昔から2人の間でルールとして決めていたことだ。どちらの方向に散歩に行くかは、じゃんけんで決めるしね。
どちらでもいいことは、どちらでもいいんだよ。ところがそういう時に人間は、論理で決めようとする。どちらでもいいことは、論理では決められないのにな。あるいは、そういうときに、人に相談するのもだめ。うまく行かなくなったときに、その人を恨んでしまうからだ。
子供の命名のときに、子供に7つの名前をつける。ろうそくに7つの名前を書き込んで、いっぺんに火をつけて、最後まで燃え残ったろうそくの名前を子供の名前にする。昔のエジプト人にはそういう風習があったそうだ。
私が仲人をした夫婦から、名づけ親になってほしいと頼まれることがある。そんなときは、「私たち夫婦で2つの名前をつける。あなたがたも夫婦で2つの名をつけなさい。それから、お互いのおじいちゃん、おばあちゃんにもつけてもらいなさい。その8つの名前を紙に書いておいて、その上にろうそくを立てて、仏様にずっと手を合わせて拝みながら、最後までついていたろうそくの名前に決めてください」と言うことにしている。
それで子供が大きくなったときに、「お前の名前は仏様に選んでいただいたんだよ」と説明してあげてほしいと頼むと、たいてい喜ばれる。親が一所懸命に考えて決めた名前が気にいらないこともある。だから仏様に決めていただくのが一番いい。
だから、この人も、奥さんに相談するのがいい。だけどそれは、あくまでもサイコロを転がす前提にすぎない。意見が食い違ったときに、どちらかの意見にしようとすると、どちらにしても不満が残る。だからたとえば、こんなふうにルールを決める。
奥さんもあなたに近い意見だったとする。そうしたら、「お前も行ったほうがいいと思う。俺にも行きたい気持ちがある。だから、3分の2は行くとして、3分の1は行かないほうにとっておく。それで、出た目が3で割り切れたら残る。それ以外ならば行くことにしよう」と決めるとかね。
インドの昔話におもしろい話がある。
3人組の泥棒が捕まって、3人とも処刑されることになったのだけど、そこにある女性が呼ばれて、誰か1人だけ助けてやるといわれた。実は、1人はその女性の夫で、もう1人は息子、そして最後の1人は実の弟だった。
するとその女性は、「弟を助けてやってほしい」と頼む。「普通は夫か息子なのに、なぜ弟なんだ?」と問われていわく、「亭主というのはいくらでもみつかります。そうなれば、子供もまたつくることができる。しかし、両親はもう亡くなっているので、弟の代わりはつくれません。だから、弟を助けてください」と説明した。すると、「それはおもしろいな。それならば3人とも助けてやる」と言われて、めでたし、めでたし。
そうだろうか? 私はこの話を聞いたときに、大変に腹が立った。そうでしょう?
3人が釈放されたらどうなるか。夫には離婚されるでしょう。子供にも愛想をつかされる。弟はどうだろうか。離婚された姉が自分のところに転がり込んできたら、「姉さん、俺には姉さんを養う力なんかないよ」とでも言われるだろう。この女性は地獄に堕ちたと私は思ったものだ。
要するに、こんなときに自分で選ぶのがよくない。誰を選んでも、地獄に堕ちる。だから、「わかりました。ここにサイコロがあります。2つのサイコロを転がして、出た目が3で割り切れたら夫を釈放してください。3で割って1余れば息子を助けてください。3で割って2余れば、弟を助けてください」と言えばいい。そうすると、「お前、おもしろいな。それでは、3人とも助けてやろう」となるはずだ。つまり、「仏様に選んでもらったのよ」と言えばいいわけだ。
日本の社会は、もうすでに崩壊している。国民1人当たり650万円以上の借金を抱えている。これは、どんなに財政を切り詰めてみても、返せるわけがない。もうこれは、すごいインフレでも起こすしかないが、そうなれば、資本がすべて海外に逃げて、日本は世界銀行の管理下に入るしかなくなる。もう、いつそうなってもおかしくない経済情勢なのだ。つまり、経済的には日本はもう滅んでいる。政治的にはとっくに滅んでいる。そして社会的にも滅んでいる。教育現場は混乱し、犯罪も自殺者も増えている。
言葉を換えれば、これは資本主義の崩壊だ。突出した資本主義国家は、日本とシンガポールぐらいしかない。米国にしても、フランスやイギリスにしても立派な農業国だからだ。このところ、中国の食料自給率が落ちているそうだ。今は、米国から食料を買っている。だから中国は米国と戦争ができない。食料自給率が低い資本主義国家は、日本とシンガポールぐらいなのだ。それで国がもつわけがない。もう日本は、もっと家族を大事にする農業国家に生まれ変わるしか道はない。
今の日本のお家芸はなんだろうか? コンピュータ? 半導体? 情報通信? そうしたものは、世界の構造が変われば、すぐに意味をなくす。ビジネス社会は、もう崩壊したと見たほうがいい。少なくとも私は、そう思っている。
そうした状況の中で、それでも会社に、ビジネスに必死になってしがみつく必要があるだろうか?このままでは刑務所は会社だけじゃなくなってしまう。国家そのものが刑務所になったら、日本人として悲しいよね。
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